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第六章 想いを胸に ―到編―

到はラファエルに言われて、幸広と天界の東に位置する魔導の洞窟に来ていた。そこに前世の自分の残した魔術書なるものが存在するらしい。

洞窟の中は意外にも魔物の姿が見当たらなかった。幸広に聞いたところ、天界の結界の上から更にこの洞窟自体にノエルの結界が張られているせいだという。だが何故クロウは結界の張られている天界で行動出来るのか。

「身体が天使のものだからな。とはいえ、ここには入って来れないから安心しろ」

二重結界が張られた場所は、術者であるノエルにしか立ち入ることが出来ない。この魔導の洞窟も二重結界が張られてはいるが、目的が魔術書封印のため、それを受け継ぐ到が入れるように配慮してある、と幸広は言った。

到は黙って彼の話を聞いていたが、そうするとまた新たな疑問が浮かんできた。

彼の口振りだと二重結界が張られている場所は他にもあるようだが、それがどこで何のための場所なのか。また、魔術書を受け継ぐ自分はともかく、何故幸広まで中に入れるのか。

「…何か変じゃないか?」

周囲を見渡し幸広が言う。確かに入った時から違和感があった。到は急いで眼鏡のコンピューターで分析を始め、結果を出す。それによると、どうやらここには至る所に時空転移フィールドが使われているらしく、下手に進むとループし続けて一生出られなくなる恐れがある。

「魔導らしく知恵の勝負というわけですか。ま、どこに転移するかさえ記録しておけば問題ないでしょう。それで、魔術書について詳しくお聞きしたいんですけど…」

本当は他にも聞きたいことは山ほどあるのだが、今関係することを聞くのが先決だ。

「地球は八つの力で成り立っているといわれている。うち四つはおまえも知っている四大元素だ」

コンピューターに転移場所の記録をしながら二人は進み始めた。幸広はぽつぽつと話し出す。

「ああ…。古代に錬金術師の唱えた[地水火風]ですね」

「そうだ。後の四つは宇宙の秩序を保つ月、太陽、星、時空。神ラファエルが初めに作ったのもこの八天使だとされている」

――ちょっと待てよ。消された歴史の中で存在した天使は[地水火風雷光闇]だったはずだが。

「天使から聞いたり、古文書に書かれている事実は他の歴史同様上辺だけのものが多い。それが全てだと思わないことだ」

彼曰わく、宇宙を守る四天使――宇宙(そら)天使の力は絶大で、特に時空を操る時天使の力は、使いようによって世界をどんな風に変えることも出来るものだった。故に宇宙天使は、各々の属性の秩序を保つ以外は力を使うことを制限されていた。 彼らは創造主である神からさえ孤立していた。天界の奥地に住み、千年前の戦いにも一切干渉しなかったという。

[雷、光、闇]天使は、人々が地上で暮らしやすいようにと、後から創られた存在だ、と彼は言った。そしてそれがあの戦乱を引き起こしたのだと。

「八つの力は天使にだけではなく、我々人間にも少なからず関わっている。この世に生を受けた時、いずれかの属性の守護を受ける。そしてその守護属性の力を、精神力や魂の力で魔石を介して解放するのが守護魔法。天使の魔法は呪文での行使だが、守護魔法の場合は紋章を刻むのが特徴だ。とはいえ人間なら誰でもと言うわけではないがな。得て不得手はある。その意味では守護魔法は前世の私と到の肌に合っていたんだろう」

人間は、天使のように生まれながらに自然の力を操れるわけではない。自らの受けている守護の力を、そしてその理論構築式を学ばなければならない。

千年前の学術都市にはそのための魔導学校があり、到の前世であるマリクは太陽魔法、幸広の前世スルーフは月魔法専任教師としてそこに勤めていたという。

「あれ?でもスルーフさんは神に仕える司祭だったんじゃ?」

「彼だけじゃない。マリクもだ。多少事実の歪曲もあるが、それはまた後の話だ。――とにかく、マリクはおまえに戦力となる武器を残したかった。しかし神の意向で当時の戦乱、歴史を思い起こさせるような事物は地上から抹消させられることになった。魔石や、魔導学校もだ」

魔石の入手はチェイニーから出来るだろうが、魔導学校がなければ理論構築式を覚えるのは難しい。もっと手っ取り早く魔法を使う方法はないだろうか。

「そうして考えついたのが魔術書だ」

地上天使に、特殊な本へ呪文を書き魔法を封じ込めてもらう。精神力と魔石を使い唱えれば、理論を知らずとも魔法を使えるし、守護魔法と違い色々な属性魔法が使えるから、弱点を突いた攻撃も出来る。欠点といえば、一度唱えるとその部分の呪文が白紙になり、全て使ってしまえば魔術書自体が消えてしまうこと。

「なるべく今まで通り銃を使って戦った方がいい」

「わかりました。…あの、望月君の回復魔法も守護魔法なんですか?」

「いや…。これは聖石の力だ。聖石は魔石同様光玉から創られた物だが、主に攻撃エネルギーを引き出す魔石と異なり、聖石には回復や補助のエネルギーが備わっている。それを上手く操って使う魔法だ。ちなみに光玉は両方の性質を持ち合わせていて、魔石、聖石、光玉の順に扱いが難しくなる」

到は感心した。やはり幸広は自分よりも遥かに歴史について知っているようだ。そしてそれを十分に理解している。おそらく史書を何度も読み直したに違いない。到自身もだんだんと魔法に対する理解が深まってきて、少しずつではあるが、知りたい謎に触れられていくことが嬉しい。

「えーと、じゃあ、真由美さんが使えるという光魔法はどういうものなんですか?八つの属性の中に光はないから、守護魔法ではないんですよね?」

「……彼女は、そうあるために産み落とされた。私達とは…存在そのものが違う」

急に幸広は歯切れ悪く答える。そしてさっさと次の転移フィールドに立った。慌てて追いかけると、転移した部屋にローブを着た男が二人立っていた。

「待ちくたびれましたよ」


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