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第六章 想いを胸に ―リーナ編―

リーナ達は、チェイニーの転移魔法で西の島へ渡る橋付近に来ていた。

決戦の時が近いことは解っている。だが問題は、綾子の持つクロスペンダントだ。このまま彼女をクロウと対面させて、いいはずがない。

「気にしているのは綾子のことか?」

リーナの胸中を察したように、友美が言った。

――いや、正確にはラファエルが、だった。

「…気づかないか?ペンダントの中心の宝玉から感じる、何か別の気に」

「え?」

何のことだろう。宝玉からはうっすらと魔力が感じられるが、それ以外に何かあるということなのか。

「解らないのならいい。とにかく、おまえが心配する必要はない」

いつになくムスリとした表情のラファエル。

「…?どうしたんですか?」

「気に入らないだけだ。少なくとも今までは『私』の意志で人格交代をしてきた。だが今回は違う」

言われてみれば、今まで『友美』から『ラファエル』に交代した時、必ず自分や味方が窮地に陥っていた。しかし、今はそういった状況ではない。

「…フン。だからアイツは信用出来ないと言うんだ」

彼は幸広を物凄い形相で睨んだ。けれどもそれも一瞬のことですぐにフイッと橋に向かった。

橋は長くて立派だった。辿り着く先が見えず、どこまであるのか全く解らないほどに。二列になって最前列と最後列の守りを固めながら進むことにする。

「頭は真由美とみゆり、尾は綾子と幸広だ。間接攻撃の出来る到と私は間に、天使二人は適当に隠れて陰から援護。いいな?」

ラファエルが指示を出す。そして到の魔石を借りて、警戒態勢は万全。

「では行くか」

一行が橋を渡り始めると、待ち伏せていたかのようにすぐに魔物に挟みうちされた。

今まで戦ったことのない強敵揃いだが、こちらも負けてはいない。真由美は確実に優との特訓の成果を出しているし、みゆりの持つ聖剣の威力と剣術には目を見張るものがある。幼いながらも巧の下で修行をしてきただけはある。

一人旅をして多くの魔物を相手にしてきた綾子は言うまでもないし、到は昨夜のうちに新しい銃を開発したらしく、今までのものよりかなり派手なエネルギー弾を発砲している。

最も驚いたのは幸広の攻撃法だった。ロッドで敵を殴る――のはまだいいのだが、何故かそのロッドが伸びるのだ。

「どうなってんだ!?」

隣で戦っている綾子も目を丸くする。

「ああ…。うまく念じれば伸縮自在なんだ。一応ちゃんとした理屈もあるんだが」

喋りながら、伸ばしたロッドを槍のように扱い攻撃していく。相当訓練したのだろう。突きが正確でしかも早い。

「説明が面倒でな」

「だろーな」

それだけ解れば充分だという綾子の後ろで、到が騒ぐ。

「理屈があるなら、面倒でもあとでちゃんと教えてくださいよ!?」

「そのうちな」

幸広は到の相手もそこそこに、次々と魔物を倒してゆく。ルシフェルも真由美の援護で敵に火球を放っている。自分も負けてられない。

綾子の後ろに隠れていたが、少し高めに空に浮く。そして綾子が相手をしている毒蜘蛛めがけてエルウインドを放った。と同時にルシフェルの声がする。

「危ねぇ!!」

「え?」

声に反応し振り向く。その時リーナの視界に入ってきたのは、フレアビーストの吐いた炎だった。

(ダメ、避けられない!)

「――っ!」

リーナは覚悟を決めた。けれども体に炎が触れようとした刹那、横から突出された手がリーナを救った。

ルシフェルだ。

「くっ」

彼は自分の代わりに炎を受け、体中に火傷を負った。

「ルシフェル!」

「大丈夫か!?」

戦い終わった味方が声をかける中、リーナは口が震えて言葉が出てこなかった。

「平気だよ。見た目ほど酷くないから。リーナ、おまえは?怪我ないか?」

なんで。なんで私の心配なんかするのよ。私の代わりにそんな火傷負ったのに。

「…バカじゃないの!?今のは私の不注意で…、あんたが怪我する必要なんかなかったのに!」

「オレは炎天使だから、炎には耐性あるからいいんだよ!それに、もう嫌なんだよ。誰も助けられないのは…。大事な奴が傷つくのは」

「なによ…。私だって…、あんたが怪我したの見て、びっくりしたんだからぁ…。怖かったんだからぁ…っ」

涙が止まらない。さっきの怖さを思い出したのか、ルシフェルが無事でほっとしたのか、それすら解らなくなってきた。

「泣くなよ…。あー、ちくしょう、困ったな…。…あのさ、リーナ。この戦いが終わったら…伝えたいことがあるんだ。だから、お互い絶対生き残ろう。約束だからな」



今までも幾度か彼に助けられたが、今日ほど彼をかっこよく思ったことはなかった。おろおろしながら自分をなだめてくれた彼を、すごく好きだと思った。

「うん…、うん…。絶対勝とうね。約束だからねっ」

泣きじゃくりながらルシフェルの顔を見る。すると突然、自分の体が光に包まれた。

「な、なに!?リーナ、どうしたの!?」

これは、話に聞く天使への昇格だ。

「他人を愛し、守りたいと思う気持ちと、その為の力を得るそれ相応の身体的成長を遂げていれば、正天使として認められ更なる力が与えられる」

ラファエルが混乱する真由美達にそう教えた。

その後光はすぐに消えたが、新たに目覚めた力は感じた。以前より力がみなぎってくる気がする。

「ルシフェルは準天使だが、おそらく体の問題だろう」

「ガキだって言いたいのか。ちぇっ」

ルシフェルは不機嫌な顔で言った。

「そんなことないよ。さっき、めちゃくちゃかっこよかったもん。助けてくれてありがとう」

口にした後で、照れくさくなって赤面した。勿論言われたルシフェルも。

「〜〜〜おまえなぁっ…」

「…取り込み中悪いが…、火傷の手当てはしなくていいのか?」

二人の横で、幸広が冷静に尋ねた。


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