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第五章 五大都市 ―みゆり編―

みゆりはリーナやルシフェルと共に、迫りくる魔物を倒していた。

突進してくる巨大な魔牛に、正面から相対する。剣を構え、刹那の速さで胴体を斬りつける。

その傷口を狙ってリーナとルシフェルが合体魔法を発動させる。

「エルファイアー」

「エルウインド!」

魔法は見事的中し、魔牛を死に至らしめた。

断末魔の叫び声を上げながら倒れゆく生命を見て、自らの持つ剣の力と運命の大きさを感じずにはいられなかった。

剣を鞘に収め、空を見上げる。血生臭い地と化したこの国で、何十年、何百年経っても変わらぬもの。果てなく続く青空。この空のおかげで、私達は救われているのかもしれない。

(さてと。いつまでもこうしていられませんわ。他にも魔物がいないか確認しなくては)

みゆりが視線を地上に戻すと、先ほど倒した魔物を挟んだ向こう側に見知らぬ男が立っていた。それは、色々な意味で有り得ない光景だった。

みゆりが空を見上げるまでそんな男はいなかった。ほんの数秒の間にみゆりの前に現れたのである。その上、彼の格好は奇怪極まりなかった。紺色のローブを身にまとい、頭にはフードを被っていて顔の判別が出来ないのだ。体格や、微かに見えるあごひげで男だとわかるくらいのもので。

(怪しい…っ。怪しすぎますわっ!なのに…こんなことって)

おかしな事に、みゆりは彼を知っているような気がするのだ。

顔もわからないのに。

男はどこを見るでもなく、ただ西を向いて立っていた。しかし突然くるりとみゆりの方を向くと言った。

「…そうか。君が呼んでくれたんだね」

「え?」

「久しいね、デイジー。どうだい、こっちは。私の方は全然だめさ。命の代償はやはり大きかったようだ」

何を言っているのかさっぱり解らない。だが、デイジーとは前世の自分ではないだろうか。

「あの…あなたは、誰なんですか?前世の私を、知っているんですか?」

「ああ、そうか。君は覚えていないんだったね。すまない、つい懐かしくてね」

残念そうに声を落とす。やはり彼は前世の自分を知っているらしい。

「私は覚えていないって…どういう事ですか?」

「君は聖戦士だ、それ以上でもそれ以下でもない。つまりそういうことだ」

「……?」

「ノエルに伝えてくれないか。これ以上おまえの好きにはさせない。そっちがその気なら私にも考えがある、と」

「え?あの、それって…」

みゆりの問いを遮るように、突風が起こった。思わず目をつぶり、そして再び開けた時には既に男の姿はなかった。

「ウソ…」

呆然と立ち尽くすみゆりを、少し遠くから到が呼び止めた。

「あ、いたいた。みゆりさん!」

走り寄った到は自分を捜し回ったせいか、息を切らせていた。

「大変なんですよ。博さんがもう西の島付近まで行っているらしくて。チェイニーさんの転移魔法で移動するんで、望月君ちに戻ってください。僕は黒崎さん連れてきますんで。ほら、ルシフェルとリーナさんも」

「はいはい、戻ればいーんでしょ」

「わかりましたわ」

みゆりは先ほどの男の事はすっかり忘れて、どうせなら望月君さんが来てくれれば良かったのに、などと思いながら、言われた通り望月家へと向かったのだった。


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