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三話:準備(女子)

 

「用意って言われても、何を用意すれば良いんですかね?」

「アニルレイは獣人の街ではありますが、全ての獣人がアニルレイに住んでいる訳ではありません。なので宿屋もありますし、道具屋もあります。基本的には何も持っていかなくて大丈夫ですよ?」

「…………あの、それは?」

「狐のお面です。せっかくなので遊んでます」


 私たちはまず、シオンちゃんと雪風ちゃんの要望で、色んな服が並ぶお店に来ていた。

 だけど……なんか、私の知っているお店と違う。

 売られている服が、変わったものばかりなの。

 一番隊の制服である騎士服、有名な魔術師がよく着ていたというローブと帽子、お医者さんが着ている白衣に、黄金の鎧とか。 

 エルフになれる衣装とか、天使になれる衣装とか、つまり変装用だと思う衣装もあった。

 あ、もちろんちゃんとした服もあったけどね。


「どうですか、似合ってますかね?」

「似合ってはいますけど……なんなんでしょう、それ」

「確か、天照国の方ではよく着られている服だそうですが……」


 ……ううん……よく分からない。

 あ、でもシンとかシオンちゃんなら分かるかも! 


「シオンちゃん、この服って何かな?」

「どれでござる? ……なるほど、それは浴衣でござるよ。東国では夏に祭をするのでござるが、皆その衣装をきて出店を覗くのでござる」

「なるほど……これが噂に聞く浴衣というものですか……これはいいですね」


 レイ先輩が、軽くクルリと回った。短いスカートが、フワリと少しだけ揺れる。

 それを見たシオンちゃんは満足そうに頷いて、


「そうでござろう。暗器を仕込みやすく、レイ殿のように丈を短くすれば動きやすい。利便性の高い服でござる」

「暗器って……これ、お祭り用なんだよね? 戦うための服じゃないよね?」


 突然物騒なことを言い出した。

 いや、でも冒険者とか護衛の人の感覚ってそういうものなのかな……?

 私は……スカートの丈が心配だなぁ……とか思っちゃうけど……。

 と、そこで雪風ちゃんも戻ってきたんだけど……


「何かな……その服?」

「雪風も、よく分からないのです。ですが、店員に勧められたので着てみたのです」


 私たちの声が聞こえたのか、奥で店員のレインさんがサムズアップしているのが見えた。


「青を基調とした服。少し動きにくいですが、腰周りに銃器や刀を下げるには中々適した服です。この手錠を見るに警察です?」

「あ、やっぱりそういう考えなんだ…………」


 私がその服を見て思うのは、なんでそんなにスカートがピチッとした形なんだろうとか、そもそもこれはなんの服なんだろうとか、そういう感想なんだけど……。

 タグを見てみると……『ミニスカポリス』って書いてある? なんだろう、それ……。


「では、拙者も着替えてくるでござる」


 とその時、そう言ってシオンちゃんが更衣室に入って行った。

 少しの間待っていると、シオンちゃんが恥ずかしそうに顔だけ出して……


「あの……拙者には、変かも知れませぬが……」

「えい、なのです」

「「あ」」


 雪風ちゃんが問題無用で開けちゃった!

 シオンちゃんは、咄嗟にその場でしゃがみこんで服を隠す。


「ちょ、ちょっと雪風ちゃん!?」

「大丈夫なのですエミリア。紫苑が恥ずかしがるということは普通の服です」

「…………なるほど、確かにそうかも知れません」

「酷いでござる!?」

「あ、あはは……」


 抗議の声を上げるシオンちゃんだけど、確かに分かる気もする。

 いつも忍び装束とか巫女服とかを着ているシオンちゃんは、逆に普通の服を着ているのを見たことがない。


「う、うう……ど、どうでござる……?」


 そう言って、恥ずかしそうに見せてきた服は、やっぱり普通の服だった。

 ただ、ちょっとだけ男の子っぽい服。


「カジュアル? というやつですか、案外似合いますね」

「シオンちゃん、肌が綺麗だからこういう方が良いのかもね?」


 ショートパンツとタンクトップ姿。帽子の後ろからサラリと流れる艶やかな黒髪が、男の子っぽい姿と矛盾して見え、それが不思議な魅力を引き出している。

 ただ、どちらかと言えば部屋着に近いかも。お店の奥で誰も見ていないからまだ良いけど、この格好で外を歩くのは少しだけ無防備なのかな……?

 多分、私がやったらシンに怒られる。……似たような格好で朝ご飯を作ったことはあるけど……。


「どうです? 気に入ったです?」

「う、うう……」


 だけどシオンちゃんは、


「や、やっぱりいつもの服じゃないと落ち着かないでござる!」

「ならこれを着ますか? 私とお揃いです」

「こ、この際それで!」


 スッと横から浴衣を渡したレイ先輩。こうなることを見越していたのか、渡すのがやけに早かった。

 シオンちゃんがパッとそれを手に取り、更衣室に逃げ込んだ。

 そして、やっぱりシオンちゃんは着替えるのが早い。

 十秒くらいで、更衣室から出てきた。


「ふ、はぅ……やっぱりこういう服の方が落ち着きまする……」

「「「…………」」」


 シオンちゃんの基準って分からないなぁ……。


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