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二十四話:人の手には負えない者共

二十五番隊、残りの二人の設定も、ちゃんとあります。

 

「………協力?」

「うん。シオンくんたちが逃げられる筈がない事くらい、君も理解してるっしょ?」

「ま、まあ……それは……」


 俺は、紫苑たちを逃して一人捕まった。


 だが、考えてみれば、グラムと雪風は王都の構造を知らない。

 紫苑の性格上、二人を置いて一人で逃げる事はあまり考えられないし、きっと仲良く捕まるだろう。

 まぁあの時は、そこまで頭が回らなかったんだ。


「彼女たちはコウ連れて来るだろうな。そこで、お前にお願いしたい事があるんだよ」

「……団長、しれっと会話に入ってきますね」

「うるさいな! そうでもしないと俺の事みんな忘れるだろ!」

「「「???」」」


 こいつ何言ってんの、大丈夫?

 そんな感情が、俺、スーピル、カイヤの顔に浮かぶ。


「……コ、コホン。いいか、俺たちはシオンに用がある。だが、スーピルは雪風という子を一目見たいらしくてな」

「それじゃあ……雪風とグラムは、話が終わるまで気絶でもさせるんですか?」

「話が早くて助かる。つまり、そういう事だな」

「する事は簡単だね! 三人が恥ずかしくなるような事を言えば良いってこと! そしたら、その隙に私の精霊が気絶させるから。シンくんが心に傷を負うくらいだよ!」

「何が「くらい」だ! くそっ、他人事だと余って……」

「ま、結局は他人事だからな。シン、俺たちにはお前の羞恥心とかはどうでも良いんだよ」


 カイヤが、安楽椅子を漕ぎながら言った。

 すげえな、スーピルが居ると、こいつがまともに見えてくるぞ。


「多勢に無勢って言うしね、協力しか道はないぞ、少年!」


 元々、紫苑とデートの筈だったのに……どうしてこうなった?


♦︎♦︎♦︎


「それで、何の話だっけ」

「サンマが空を飛んだ話……」

「ああそうそう、私が見た中で最大のお尻のイボの話だったね」

「誰もしてねえよ! でも大きさは気になる!」

「いやぁ……シンくん、私のお尻の大きさを聞くなんてねぇ……」

「耳本当に大丈夫!? お尻じゃなくてお尻のイボの話だ! いやイボの話でもねえよ!」

「じゃあ何? シオンくんのスリーサイズとか?」

「……違う!」

「あ、今気になったでしょ。反応遅かったよ〜。シンくん、シオンちゃんの身体に興味津々なんだね〜。ヤーラシ〜」


 ウザい……。果てしなく面倒臭い。

 でも、だけど、否定できない……。だって男の子だもん。というか、そもそも反論する気力がない。


「ほら、早く言ってよ。大きな声で。幻の夢を語ってね。ね! ね! ねねねね!」


 訳すると、さっさと恥ずかしい事しろよオラ、と言っている。

 恥ずかしい事って、紫苑の身体に興味があるって言う事かよ……。


「…………分かりました。……俺だって男なんだし、興味はありますよ……これで良いですか?」

「え? ごめん、聞いてなかった。もう一度大きな声で言ってくれない? シオンくんの身体に興味津々ですって大きな声で。話は、それからさ……」

「くっ……!」


 耐えろ! 耐えるんだ! これも訳あっての事なんだ! 恥ずかしい事を言って、後ろでコソコソ聞いているであろう紫苑たちを隙だらけにするんだ!

 何かの試練と思えば、きっと大丈ぶ……駄目だ殴りたい。

 だから俺は、そのストレスを発散する意味も込めて、大きな声を出すことにした。


「俺は! 紫苑の身体に興味があります!」

「…………」

「そりゃそうだろ!? だってあんなに美少女なんだぜ!? 胸が少しだけ小さいのを気にしてるみたいだけど、俺から言わせれば大きさなんて関係ない!」

「そうだそうだぁ! 貧乳の何が悪い!」

「貧乳ではないけどな! 忍び装束、巫女服、改造和服、どれも似合っているし、俺的には普通にヤバくてヤバヤバ」

「う、うん?」

「それに、あの肌の美しさ! あの姿を見て、俺がどれほど自分を抑えるのに必死だったか! 正直獣化しそうだったね!」

「ごめんそろそろ何言ってるか分からん」

「抱き締めるとめっちゃ柔らかくて良い匂いするし、いっそ襲っても………………っは!」


 お、俺は何を口走って……


「シンくん……色々溜まってんだね……強制的にやらせたとは言え、お姉さんちょっと罪悪感、小匙半杯くらいの」


 やめて! その超微妙な量の優しい眼差しをやめて!

 あそこまで言うつもりじゃなかったのに……気が付いたら欲が止まらず……。

 くそっ……本当に溜まってんだろうなぁ……。昨日の一件なんか特にそう、そろそろ爆発しないかまじで心配。


「……そして果てしない悦楽感」

「って楽しんでんじゃねえか!」


 ……いや、だけど正直言って、今はこうして冗談を言ってくれる方がありがたい。

 うん……ちょっと自分で自分を嫌いになりそう……。なんだよ、獣化って……言いたいことは分かっても意味分からねえよ……。

 だから、うん。

 スーピルの、全く引いていない快活な言葉は、素直にありがたい。もしかしたら、この人は多分いい人なのかも。


「…………てことだけどシオンくん?」

「……………………やっぱりなぁ……」


 俺は、気乗りしなかったが、話が進まないので後ろを振り向く。


「せ、拙者は何も聞いていないでござる!」

「お、同じくにゃ」

「ゆ、雪風も同じdeath(デス)


 するとやはり、真っ赤になった三人が、机からひょっこりと顔を出していた。

 ……雪風の発音がやけに良かったのは気のせいだよな? 他意はないよな?


「別に大きさを気にしてはおりませぬが、聞いていないのでご安心を!」

「大丈夫にゃ、眠ったシオンをシンのベッドに置いておこうとか、少ししか考えてないにゃ」

「グラム殿!?」

「……death(デス)


 雪風さん!? やだ、もうまんまじゃないですかー。

 スーピルが、慰めるように孫の手で俺の肩を叩く。なんだ、この危険人物に触れるような触り方は、この扱いが一番傷つくなぁ……。


「オッケーシンくん、明日にでも傷を癒して」

「そもそも付けさせたのアンタだろ……。あと孫の手やめて」


 俺が孫の手を払い除けると、スーピルは孫の手で背中を掻き、楽しそうに鼻歌を歌い始めた。鼻に綿でも詰めたくなるな。

 そして彼女は何気ないように、それを言う。


「ファントム、やって」

「──了解したよ〜」


 スーピルの手の上に現れたのは、五つの尻尾を待つ灰色の猫。

 俺も実際に見るのは初めてだが、噂には聞いている。スーピルが契約している精霊のうち、一番の上位種で、大精霊に当たる存在だとか。


「ごめんね、お嬢さんたち。でも、これも君たちのためなんだよ」


 五つの尻尾、そのそれぞれの先についた鈴。

 そのうち三つがシャンッと綺麗な音を立て、次の瞬間、三人が眠るように気を失った。

 感覚に優れた獣人のグラムに、害意に対する感度が高い雪風、そしてクノイチの紫苑。三人とも、無抵抗で眠りについてしまった。


「あ、彼女もやっちゃった」

「やめろ、紫苑の頬を尻尾で叩くな」

「やだなー、これは起こしてるんだよ」


 尻尾をウネウネさせるファントム。

 いや分からんわ。多分、心外だと言いたいんだろうけど。

 だが、ファントムの言葉は本当だったようで、紫苑はゆっくりと目を開けた。


「……シン、殿……はっ、まさか拙者シン殿のベッドで!?」

「違う! 俺はそんな事まだしてない!」

「「「「まだ?」」」」

「言葉の綾だ! する気はない!」

「…………むぅ……」


 紫苑が、不満そうに口を尖らす。

 うーん……対応に困るなぁ……。

 俺はもう仕事モードに入ったから、あまり冗談とか言いたくないんだよ……スーピルの相手で疲れてテンション低いんだよ……。

 どうやって誤魔化そう……。

 俺はそう悩んでいたのだが、


「…………ふふ、冗談でござるよ。ちょっと、騙された仕返しでござる」

「…………紫苑、後で特訓な。不意打ちを防げなかった罰」

「…………はい…………」


 紫苑は、素直に頷いた。自分でも、平和ボケしている事には気が付いたんだろう。

 今ここには、キラとあと二人を除いた残り六人、俺、紫苑、団長、スーピル、カイヤ、コウが、集められている。

 そしてさらに……


「なんじゃ、急に呼び出して話とは…………ほう、これはつまり、そういうことじゃな?」


 キラも合流して、七人。

 ハンゲル王国第二十五番隊は、通称『自然災害』部隊と呼ばれる、非常時専用の最終部隊だ。

 その、ほとんどが集まったという事は……


「団長、王都で、今何が起きてるんだ?」


分かりにくいかも……要改稿ですね……。



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