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二十話:フラッシュバック

やっぱり、二千文字程度が読みやすいんですかね……。

分割しようかいつも迷います、

 

「……つまり、何者かが我々を攻撃していると?」

「ああ、目的が分からないが、犠牲者が出たことは確かだ」

「そうか…………考えられるのは無差別、それによって学院の評価を下げること、くらいだな」


 顎に手を当て考え込むアーサー。

 やっぱり、そこで止まってしまうか……。そもそも、金髪くんについて何も知らないもんなぁ……。俺たちが全く無関係って可能性も高い。

 なんだろ、あまり首を突っ込まない方が良いのかも知れない。


「妾は昨日の通り、アーサーと同じじゃ。ああ、あと一つ、神薬を誰の手にも渡したくない人間とかな。……学院長とか」

「学院長」


 教師として首が危うくなる発言ですね。

 でも、学院長が犯人という線はないだろうな。何故なら、景品を神薬にしたのも学院長。渡すのが嫌なら、そもそも景品として出すなという話だ


「わざわざ注目度の高い試合で行動を起こす理由は?」


 武闘会を中止にして神薬を誰の手にも渡したくないのなら、別に俺たちの試合じゃなくても良いはずだ。

 犯人は観客の目が多いのは嫌うだろうし、注目度の高い試合を狙わなければいけない理由が必ずあったはずだ。

 そこまで考えついたから、俺は首を突っ込んでいる訳だ。俺と雪風ペアの試合で事件が起こった。自分に理由があると考えるのは自然だろ?


「……全員、スペックプレートを見せてくれるか?」

「スペックプレート……?」


 だがキラ先生はそれには答えず、スペックプレートを見たいと言ってきた。

 何故だ。俺たちの個人情報でも売り捌く気か。

 売り捌くと言っても、俺と紫苑とエミリアとアーサー…………あれ? 案外可能性あるな。

 というか、かなり高額で売れないか?


 エミリアとアーサーはともかく、紫苑と俺は軍事的に価値が高くないか……? 

 特に、俺の情報のためなら金に糸目をつけなそうな奴が何人か思いつく。

 だからきっと、アーサーと紫苑も渡さず……


「分かったでござる」

「分かりました」

「渡しちゃうんだ!?」

「……ほれ、早く出さんか。何、お前たちの情報を売ったりはせん。……妾も命が惜しいからな」


 ハンゲル王国王女に、キラドラコ帝国王太子、情報を売った瞬間、表の世界で生きる事は不可能だろうな。

 俺の情報も同様だな、売る相手なんて反王家側の人間しかいない。二十五番隊の副長がそんな事をすれば、すぐに反逆罪で捕まる。


「仕方ない。渡すしかないか……」


 渋々といった演技で、〈ストレージ〉を開こうとする俺。

 だが、亜空間に突っ込もうとした手を掴む者がいた。


「……本当に、渡しちゃうの?」


 エミリアだ。

 プルプルと子犬のような不安げな瞳で、ジッ……と俺を見上げてくる。

 俺の右手を胸の中に抱えて、しっかりムニムニっとホールドする。

 完全に天然で全く気が付いていないのか、俺が答えないとさらにムニムニ……ムニムニ……。

 助けを求めようと三人を見るも、キラ先生とアーサーは視線を逸らし、紫苑は……おい待て対抗心を燃やすなチラチラと俺の左腕を見るな!


「ちょっ、エミリア!?」

「渡すって事は、あれを見せるって事でしょ……?」

「あ、あれ?」


 ステータス……じゃない、スペックを見せるって事か?

 でも、それの何が嫌なんだ……。

 そりゃ、自分の実力を見せるのは確かに嫌かもしれないけど……。

 担任教師が生徒の成績を見るのは、俺からしたら当然という気もするんだよな……。


「大丈夫だって、キラ先生はそんな奴じゃないよ」

「い、いやそういう事じゃなくて……」


 右手の感覚に意識を決して向けず、左手で〈ストレージ〉からスペックプレートを二枚取り出す。

 その瞬間、ふとある記憶が蘇った。

 それは、レイ先輩にスペックプレートを見せた時の記憶で……


「何をしているのでござる!?」


 手をソワソワさせていた紫苑が、その瞬間バンッとテーブルを叩いて立ち上がった。

 何事かとこっちを見たキラ先生とアーサーも、目を見開いて、すぐに苦笑する。


「だ、だから嫌だって言ったのにぃ……」


 驚いたのか、紫苑が立ち上がった瞬間に俺の腕を離していたエミリアが、赤くなった頰を隠すように両手で顔を覆った。

 そ、そうだよな……完全に忘れていたけど、スペックプレートを他人が持つのは、あり得ないんだよな……。


「ご、ごめんエミリア!」

「むぅ…………」


 俺が両手を合わせて謝るも、エミリアにはツーンとそっぽを向かれてしまう。

 そりゃそうだ。奴隷でさえしない事をしている、それが他人にバレて喜ぶ訳がないよな……。

 しかも、エミリアのスペックプレートを俺が持っておくと言ったのも、俺自身だ。

 エミリアが反対しなかったとは言え、俺が発案し自爆した。つまり、俺にしか非がない状況って訳で……。


「う、うぅ〜〜〜〜!!」


 若干涙目で、下唇を噛んで俺を睨みつけるエミリア。

 詫びを入れようにも、見せてしまったものは見せてしまった訳だし……。

 顔が真っ赤なのは、羞恥と怒り。


「そ、その……」


 ヤバイ、本当に収拾のつけ方が思いつかねえ!

 エミリアが俺のことを好き……かも知れないと知ってしまったから、中途半端な対応は俺の小さな良心が痛む。

 誰もが納得し、後腐れない解決方法があれば良いんだけど……。俺にできることなんか、ひたすら謝ることしか思いつかん。


「デリケートな問題そうだしね。私は部屋を出ているよ。終わったら呼んでくれ」

「あ、ああ、すまないなアーサー……」


 アーサーが、フッと笑って部屋を出て行く。俺が後ろから礼を言うと、アーサーは何も言わず手を振って応えた。

 今日は一日、アーサーには迷惑をかけてばかり。

 だけど……アーサーのおかげで、俺も少しは落ち着いた。紫苑もキラ先生も、話せばきっと分かってくれるはずだ。

 王女の情報の大切さを、この二人が知らない訳がない。


「これは、別にそういう意味じゃないんだ。〈ストレージ〉に入れた方が安全だと思ったからで……何もやましい事はない」

「………………揶揄うつもりでおったが……そんな顔をされては揶揄えんではないか……」

「そ、それじゃあ!」

「……驚いただけでござるよ。考えれば、すぐに分かりまする」

「「…………」」


 エミリアと二人で、顔を見合わせる。

 あまりに呆気ない収束で、少し拍子抜けだ。

 と、そこで、ふと気になる事が思い浮かんだ。


「エミリアはさ、俺にスペックプレートの中身を見られてもいいの?」

「…………へ?」


 エミリアの目が点になる。

 突然で、よく分からなかったのだろう。紫苑とキラ先生は、分かったみたいだけど。

 だけど、これを言っていいものか……。俺は一瞬躊躇して、しかしやはり切り出した。


「エミリアの使える技が分かるっていう事はね」

「うん」

「言い方は悪いけど……エミリアの抵抗を無力化できるって事なんだよ」

「……? でも、私は元々シンには勝てないけど……」

「でも、俺に襲われたら、抵抗して周囲に知らせる事はできるだろ?」


 自分の居場所を知らせる魔法、ピンチだと伝える魔法。直接戦闘に使えない魔法を使う事により、仲間の救助を待つ方法だ。


「だけど、なんの魔法が使えるかさえ分かれば、全部無力化できるんだよ」

「う、うん…………」


 だから、俺たち護衛は自分の力をひた隠しにする。漏洩すれば、それだけ主人が危ないからな。


「つまりじゃな。この前のように、お主が風呂に入っている時こやつが入ってきても、お主は何もできんという事じゃ」

「なっ…………!?」


 エミリアは目を見開き、その顔がどんどん赤く染まって行く。


「…………襲うってのは、殺そうっていう話だけじゃない。無理矢理キスしたり、寝ているエミリアの服を脱がせたり、色々ある」

「…………」


 絶句するエミリア。

 襲う具体例はかなりボカし、エミリアにも伝わるように言ったが、あまりに具体的すぎてエミリアが僅かに俺から離れ……なかった。

 むしろ椅子をこちらに近づけて、俺の真横に、くっつくように座り直した。


「…………それなら、私のはシンが持ってていいよ」

「…………?」


 一瞬、混乱する。

 いや、だって普通怖がるだろ?

 同居している男に、俺はお前を襲うかも知れないと言われたんだぞ? 

 呉服店の店長キャサリン(男)に投げキッスされた時に俺が感じた以上の恐怖を、今のエミリアは感じているはずだ。


「だって……私、シンを信用しているから」

「…………ッ!」


 ────信用しているから。

 罪悪感、というか恥ずかしい……。


「じ、実を言うとな。俺、昨日二人にキスしたくなったんだよ。それでもか?」


 少し話を盛ったが、キラ先生が来るのがあと少し遅かったら普通にあり得た未来だ。


「ふぇ、? えぁ? ぁ、あぅ?」

「シ、シン殿!? そ、それは……その……」


 途端、二人が恥ずかしいそうに身を捩り、キラ先生の目が細められる。

 エミリアは、「あー……うー……むー……」と唸っていたが、やがて決心したのか口を開いた。

 

「わ、私はそれでも────」


 だが、その時だった。


「にゃっはー! シン・ゼロワン! ついてくるにゃ!」

「あ、おい、グラムくん!」


 扉を突き破り、堂々とした不法侵入者(グラム)と、申し訳なさそうなアーサーが入ってきた。


感想評価お願いします!


猫さんお久しぶりの登場。

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