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地神宮だけが残っていた

 役所巡りが午前中で片付いたので、母の実家だった場所と私が生まれ育った土地を尋ねてみた。



 母の実家は谷筋から山の中腹に上がった場所にあった、はずだ。mapに住所を入れても出てこない。子どもの時の記憶を頼りに辿った道は、部分的に簡易舗装が残っているが荒れていた。車を入れるのが不安なので歩いて向かったが、人家の跡は全く見えない。行けるところまで歩いたが、記憶と違う道になっている。戻り道、「もしかしたらここかな」と笹藪を見上げてみたが、全く判らなかった。

 離農して数十年、電灯線も電話線も、電信柱も残っていない。田んぼと畑が残るだけの、人家が絶えた地区だった。

 中心市街地だった所に戻ると、郵便局と小学校が残っていた。子どもの時に連れられて通った商店もスーパーも、既に無い。車通りがあるところには、過疎地の命綱であるセイコーマートが建っていた。



 近郊の遊園地跡、今は規模の大きな公園になっている所を経て、生まれ育った土地へ向かう。


 途中の道はじゃり道がなく、全て舗装されている。が、バス停留所は全て無くなっている。民間バス会社が撤退し、町営バスも廃止になっていた。私が最初に通った小学校は建物は何もなく、資材置き場になっている。隣にあった神社さえ、鳥居も社殿も消え、道路を挟んだ場所に名前を刻んだ柱が残るだけだった。(「多分、最後のお祭りだった」Nコード:N7787IU を参照)


 私の生まれ育った家も、本家も、分家も、建物は既に無い。10年前はあったはずの家が無くなっていて、10軒から4軒に減っていた。


挿絵(By みてみん)


 唯一、バス停の角にあった碑の字が彫り直されて、数十年分の記憶とともに育った木々に囲まれている。


挿絵(By みてみん)


民間信仰だけは、まだ残っている。

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