第25話 元帥登場
春高本戦
帝調高校vs柿野原高校
満員となり、熱気に包まれた観客席。その観客たちのお目当ては、なんと言ってもインターハイの覇者、帝調高校である。
「頑張れよー!」「今回も頼むぞー!」
帝調高校が公式練習を始めると、歓声が巻き起こる。そんな中でも、帝調メンバーは落ち着いていた。慣れてますよと言わんばかりの表情や態度を示している。
「あれが帝調高校かぁ……」
それとは対照的に、柿野原メンバーは大変緊張していた。ただ2人を除いて。
その2人は、トイレにいた。試合前には必ずトイレに入るというルーティンを持っているのだ。
「本日も絶好調なのである!」
「……仕事だ。」
大南凰梨と渋川赤秋は、このチームをここまで引っ張ってきた2人であり、ワンマンチームならぬツーマンチームで、ここまで勝ち上がってきた。
トイレから出た2人はチームメイトの元へ行き、平常心である姿を見せる。もっとも、大南に平常心という言葉は適切ではないが。
帝調高校の公式練習が終わり、柿野原高校の公式練習が始まると、やはりこの男が騒ぎ出す。
「私はパイナポー元帥である!」
大南が唐突に叫び、会場がザワつく。
「ではゆくぞ!」
会場内では、呆れる者もいたり気にしない者もいたりと、反応は様々である。
ただ、帝調メンバーの間では、大南についての確認が行われていた。というのも、本当にあんなやつがエースなのかという疑いを持つ者が多数出たためである。
「気にするな」
帝調ベンチで声を発したのは、帝調高校のエース、竜頭万である。彼は2年生になると3年生を差し置いてキャプテンに就任。実力もリーダーシップもチーム内では頭一つ抜け出ており、3年生達からも快くキャプテン就任を認められた男である。
「やることは変わらない」
来年度のU-18日本代表の最有力候補でもある竜頭の一声で、帝調メンバーは気持ちが入る。
柿野原高校の公式練習も終わり、試合開始が近づく。
パイナポー元帥こと大南は、ベンチ内でも騒ぎ立てていた。
「雰囲気はできるんだよな」
誰にも聞こえない声で竜頭がつぶやく。ただ、ウチには必要ないという目で見ていたが。
ーーーー
ー試合開始ー
第1セット
帝調のサーブで試合が始まった。
「任せろお!」
エースであるはずの大南が自ら積極的にレシーブをする。
完璧なレシーブをし、そして助走に入る。
「とうっ!」
大南に向けて上げられたトスに、大南が応える。
「パイナポゥッ!」
謎の発声と共に放たれたスパイクは、ブロッカーの間を抜き、帝調コートに突き刺さる。
帝調0-1柿野原
会場内が再びザワつき始める。
「なんだ?あいつは」「なんか高かったな」「帝調が先制点を許すとは……」
そんな空気にお構いなく、大南はなにやら変な踊り?を始めた。
上半身は盆踊り、下半身はコサックダンスという、奇妙な舞なのか踊りなのかを始めたのである。
柿野原メンバーはいつものことだと笑っており、なにやら楽しそうである。
「ふざけやがって……」
またも竜頭の誰にも聞こえないつぶやき。
柿野原からサーブが打たれると、竜頭が動く。
「オッケイ!」
竜頭もまた自らレシーブをする。そのレシーブのなんと美しいことか。美しい放物線を描いて、セッターへとボールが送られる。
そして上げられたトスの先にいるのはもちろん竜頭。
放たれたスパイクは、先程の大南と全く同じようにブロッカーの間を抜き、柿野原コートに突き刺さる。
帝調1-1柿野原
その刹那、大南と竜頭の目が合い、火花が散りそうな程お互いを睨みつけたのである。
「やれやれ……」
それを見ていた渋川は、深いため息をつく。そして一言
「……仕事か」




