幸せは雪崩のようにやってくる
昨晩ぐちぐち悩んだが、俺は悩むことに白旗をあげた。
プリンが俺に壁を作ったら打ち破れ。
俺は軍師だったはずだろう?
方向が決まれば俺の脳みそも活動を止め、俺はほんの数時間だけだったが熟睡という安息を得た。
昨日一日に色々が起き過ぎたのだ。
いくら有能な男でも後手に回って混乱するのも仕方が無い。
さて、目覚めれば頭がすっきりしていたことで、俺は朝日のように物事がクリーンに見通せたと言っても良い。
イラスト 遥彼方様
今のところプリン以外抱きたいと思う相手は無く、この二十七年間ここまで結婚しても良いと思った相手も無いのだから、きっと彼女との結婚は一生上手く行くに違いないと確信できたのである。
しかし、そのことをさあ伝えるぞと考えたところで、神様は俺が正解に辿り着いた褒美をくれてやろうと考えたらしい。
警察から俺が探していた猫が保護されたとの知らせが届き、俺はこれで家族が揃ったという喜びに包まれたのだ。
家族が揃った?
そうだ。
俺はプリンを目にした時から連れて帰りたいと思ったじゃないか!
きっとこれこそ天啓だ!
俺はプリンと結婚すべきなのだ!
俺は幸せに包まれながら、俺の頭が浮かべる幸せな情景、プリンとミーアに見つめられるという俺の幸せをプリンに伝えたいと筆を取った。
これならば、俺と結婚を考えてくれるかもしれない。
カードは執事に託し、俺は急いで警察署に出向いたが、俺をまず出迎えたのは鼻が曲がる酸っぱい体臭だった。
何日も風呂にも入っていない浮浪者の匂いをさせた小さな女の子がいて、俺はそれだけで胸がかなり痛んだ。
「孤児院からこの子が猫を抱えて逃げてきました。その猫がお宅様のものとこの子が言っていまして、お宅様が出していた捜索願にも合致してましたのでご連絡させて頂きましたが。それで、その猫がこちらで、ええと、それで、その。」
俺は哀れな少女と木箱の中の現実を見て取ると、警官には何も答えずにそれぞれを腕に抱えた。
「侯爵様?」
「全部うちの子だから俺が貰うよ。この子がいた孤児院への色々を頼めるかな?」
警察官はにっこりと微笑んだ。
「誰かが幸せなれる、そういう仕事こそ大好きです。」
俺は彼に金貨一枚握らせ、その耳に囁いた。
「孤児院が阿漕だったら頼むな。」
「任せてください。」
右腕の木箱の中では俺を一年心配させたミーアが嬉しそうににゃあと鳴いたが、俺の左腕が抱える少女は死体のように硬直している
「お前の名前はなんだ?」
「……ジュネス・ベール。死んじゃったママはクリスティン。」
「うわお!まさに神様のプレゼントか!」
親父の愛人の娘ならば、俺が引き受けて養育しなければいけないか。
だがよい。
奴の間抜けのお陰で、俺はプリンに出会い、ミーアは俺の為に自分のクローンを六匹作り出していたのだから。
「……ごめんなさい。お葬式に出たくてお家の前に行ったの。でも近づけなくて、でも、この猫ちゃんが。」
「君に抱きついたんだね。そいつはミーア。寂しがりの奴の鞄に潜り込んで慰めてくれる俺の相棒なんだよ。これからも面倒を見てくれるかな?」
ジュネスは昨夜のプリンみたいな大声で泣きだし、俺はとりあえず木箱を置くと、彼女を父親のようにして抱きしめてあやした。
その温かい体を抱いて慰めながら、俺は初対面からもプリンを絶対に家に連れて帰ると決めていたと思い出していた。
ハハ、俺は一目で彼女を自分の家族にすると決めていたじゃないか、と。
イラストは遥彼方様からの頂き物です。




