さあ、お若い二人は話し合いなさいな!
翌朝、シャンタルとオフェーリアは私が与えられている部屋にずかずかと入り込むと、勝手にクローゼットを開けて朝食用のドレスを選び始めた。
朝食用のドレス!
私にそんなドレスができたとは!
バスティアンは昨日のマダムパニシエに、私のサイズで用意できるドレスは全部買うと言い出し、本当に全部買ってクローゼットに納めてくれたのである。
シャンタルが昨夜に言った通り、彼と結婚すれば私は幸せになるだろう。
それが分かっているのに私が結婚に二の足を踏むのは、彼に本当に愛する人ができたらという未来を想像して勝手に脅えているからだ。
「さあ、今日はこれを着ましょう。そしてね、話し合いなさいな。結婚相手として、二人で散々に、嫌になるぐらいに話し合うのよ。お互いをもっと知ったら結婚したくなくなるかもしれないし、もっと結婚したくなったりもするでしょう?」
私は本当に同じ年なのかしらと思いながら、いつだって最高の道を見つけ出せるシャンタルに微笑んでいた。
「あなたの言う通りだわ。いつまでもうじうじと度胸の無い事をしていられないわね。ええ、話し合う。私はバスティアンが好き。彼と私が最高に幸せになれるように話し合うべきなのよね。」
「うん。それもあるけど、適当に止めを刺すのもお薦めよ。私はそうしたもの。ルーファスとって私との結婚が失敗だったとしてもね、私が彼を幸せにしてやれば、この結婚は成功だったという事じゃない?」
「もう!この子は。あの子はあなたのお陰で人間ぽくなったじゃないの。」
「まあ、伯母様ったら。」
私はのそのそとドレスに着替えながら、シャンタルがいつも幸せなのは彼女こそ誰かを幸せにしようとしているからだと思い出していた。
いや、彼女こそ自分自身を幸せにしようとしていなかったか?
「あなたの言う通りだわ。シャンタル。人を幸せにするには自分が幸せじゃ無きゃいけないし、自分の不幸を他人に思い知らせることなんてしてはいけないのよね。そして、自分が最高だと思えば、そんな自分を手に入れた人は絶対に幸せになれるはずだと信じられるものね。」
シャンタルはにやっと笑った。
「プリン。私があなたを好きなのは私の考えを理解して応援してくれるからよ。あなたがいなければ私は異端者で、自分自身に自信なんて持てなかった。私が最高の女というならば、それはあなたがいてこそなのよ。」
私は親友を抱きしめていた。
「私も腹を括るわ。私もあなたみたいになりたいもの。」
「私みたいになったら、あのバスティアンに私は殺されそうだけどね。」
私達は笑いあい、そして、私はシャンタルとオフェーリアの監督の元、普通の朝食の席には力を入れ過ぎぐらいに完璧な姿に仕立てられた。
白い地に青い小花模様のドレスはハイウェストの可愛いもので、裾や襟元に袖口には模様の小花と同じ色のパイピングと真っ白な綿レースが施されている。
髪の毛は少し無造作に結い上げられ、頭には温室から摘んで来た白と青の小花が飾られた。
このなんだか絵画から自分が抜け出てしまったような、そんな気持ちにもさせた姿は、自分のなかの力を奮い立たせた。
さあ、やるぞって、気持ちだ。
これならばと朝食室に向かい、けれど、目指した当の本人ががその場にいなかった。




