貴族が親よりも頼りにするのはいつも執事
俺はろくでもない状況を自分で作っていたらしい。
俺はプリンに何もしていないが、独身男性の部屋に乙女を連れ込んだ時点で乙女は傷物になるというルールを忘れていた。
俺はプリンと邪魔なしで話がしたかっただけなのに!
しかし、俺が覆いかぶさったままのプリンは温かく、俺自身が侯爵という責務の為に結婚しなければいけないのだとしたらと思い当たったそこで、俺自身こそ彼女の肌を感じて硬くなっている場所もあったと気付かざる得なかった。
俺は再びフォルマンたちを見返した。
「三か月後に結婚式を挙げる。花嫁ともう少し話したい。部屋を出て行ってくれないかな?って。うわあ!」
俺の腕の下にいたプリンは俺をグイっと押しのけ、そして、本気で怒った猫みたいにして弾丸のようにして俺の腕の中から飛び出した。
「プリン!」
「あなたとは絶対に結婚しないわ!」
彼女は振り向きもせずに叫び、そのまま俺の部屋を駆け出て行ってしまった。
ヒューとシャンタルは直ぐに彼女を追いかけ、俺こそ追いかけたいのに、俺の身体はルーファスに押さえつけられたのだ。
ルーファスに抱きしめられた格好の俺は、彼の肩越しに執事に助けを求める視線を向けたが、俺の執事は主人の俺に対して片眉をあげて見せただけだった。
「フォルマン、何が言いたい?」
「旦那様、前の旦那様は旦那様よりも数倍外見が劣っていらっしゃいましたが、女あしらいについては数倍お上手でございましたよ。」
「悪かったな!だが、いいだろ!俺は結婚相手には誠実を貫くぞ!」
「そうだな。それを聞いて俺は安心だ。妻に殺されなくて済む。本当にプリンと結婚したいなら俺は手を貸すが、愛情もなく責任感だけだったら手を引いてくれ。俺とシャンタルがちゃんと彼女を守る。」
「君は恋愛結婚の幸せ者だものな。よくもまあ、あんな怖い女を口説いたよ。」
ルーファスはハハハと気さくな笑い声をあげながら俺から離れた。
それから俺の肩を親友のように叩くと、俺の耳に自分の結婚事情を囁いた。
「俺が口説かれて銛で突かれたんだ。」
「それは本当に羨ましい話だな。」
愛する女性に恋い焦がれられて心を奪われる。
俺はその相手をプリンにして想像して、俺の腕に縋って上目遣いで俺を見上げる彼女の姿さえも想像したのである。
「ああ、ルーファス。本当に君は羨ましいな。俺は女に逃げられてばっかりだ。」
俺の肩は再び叩かれたが、その叩き方は優しくもあった。
「協力するよ。結婚式は本当に三か月後でいいのか?俺は一か月も我慢できなくて苦労したからね。」
「結婚できるなら君に任せる。ただし、プリンの気持ちが最優先で。」
「かしこまりました。わたくしめが何とかしましょう。」
答えてくれたのはルーファスでなく有能過ぎる執事様で、本気で俺は一か月後の結婚式から逃げられないと覚悟を決めるしか無かった。
嫌な気持ちも、後悔もない、清々しいまでの覚悟で心が浮き立ってもいたが。
俺の背中は友人となった男の手で、ばしんと大きく叩かれた。




