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友人はいざという時には相槌と追従をしないもの

 ヒューとシャンタルはウキウキしながら私の結婚式の計画を立て始めた。

 いや、結婚したら何が起きるのかを下世話な二人は嬉々として話はじめ、私はこんな悪魔たちの会話を聞いてやるものかと両手で耳を塞いでいる。


「聞こえません。聞こえません。あなた方の艶話なんてもう結構よ!」


「まああ!そうね、バージンには早すぎるかもしれなくてね。でもね、事前に知識は与えられる方が良いのよ。私は結婚前夜に母にそのことを教えられて、結婚式を逃げ出そうと考えたもの。」


「あら、意に沿わない結婚から逃げるための覚悟を私にくださるって事ね。」


「あら、おほほ。オフェーリアに本当のことを教えてもらって、私は期待満々で初夜のベッドに飛び込んだのよ。さあ、お聞きなさいな。」


「そうだよ。最初は痛いけれどね、それが快感になってくるものだから、さ。」


 私とシャンタルは同時にヒューを見返し、最近恋人が出来たばかりの彼は嬉しそうにうふふと笑顔を作った。


「どんな人?」


「いい男なの?」


 ヒューは内緒だよと言いながら、恋バナが出来る幸せ感で一杯だという風に、でも、召使に聞かれない囁き声で、私達に恋人の名前と外見を教えてくれた。

 私とシャンタルは同時に咽せた。

 学園の近くにある教会に天使が降臨したと話題なのだが、その見目麗しい牧師様をヒューが堕天させてしまっていたとは。


「彼は子爵家の三男坊だからね、結婚もしなくていいからってさ。僕と永遠の愛を誓ってくれたんだよ。」


 私達は手を握り合い、きゃああと、幸せの悲鳴を上げるしかない。

 私の部屋でヒューが何度綺麗な顔をぐしゃぐしゃにして泣いたのだろうと思い出せば、これはヒューがようやく幸せになったという報告そのものなのだ。


「僕達は男同士だからね、一般の夫婦みたいに公にする事も、一緒にお出掛けなんても出来ないけれどね。」


「あら、我が家とお出掛けしましょうよ。ピクニックでも、雪のコテージでも、そのアレンさんといらっしゃいな。大歓迎よ。それに、プリンがバスティアンと結婚すればここの家だって無礼講だもの。一緒にお出掛けなさいな。」


 流石に、シャンタル。

 十数分前に絶対にバスティアンと結婚しないと言い張った私への攻撃だ。

 私が結婚すればヒューの幸せがさらに増す、そんなジャブを私に打ってきたのである。


「いいんだよ、プリン。僕は幸せ。君も自分の幸せを一番に考えようか。」


「そうよ、プリン。最高の幸せはあのバスティアン様が与えて下さる。あなたこそわかっているでしょう。彼はあなたに心を砕いてくれる人だって。」


 シャンタルの攻撃は私の心をクリティカルヒットだ。

 心が砕けてしまったのは、私こそ完全に彼に恋をしていると思い知らされたからだけでなく、私は彼の思いやりも気遣いもいらないという自分の気持ちを知ったからである。


「でもね、シャンタル。私は彼の心こそ欲しいの。そうでしょう。責任感も同情も、それに、思いやりだって、あればあるほど、愛が貰えないなら拷問道具そのものじゃないの。私が手紙を書けば侯爵は迎えに来てくれたかもしれない。でも、そこで義務だけしかないって思い知るのが嫌だったの。忘れ去られていた方が、私への愛が一欠けらもないって、私には家族がいないって、思い知るよりも良かったの。」


 私は引き寄せられて抱きしめられた。

 いつもは私の方が抱きしめていたが、今日はヒューが私を抱き締めてくれた。

 ドレスを着ていない彼は男性そのものだったが、彼自身がつけている香水が柔らかいミュゲの香りで、私はやはり「お姉さま」に抱きしめられているような気がした。


「かわいい子。僕の妻の座は一生空いているよ。僕と君は姉妹のように暮らせるだろう。辛かったら何時でも僕のところにいらっしゃい。」


 私はヒューに抱きつき、子供のように声をあげて泣いた。

 私はこんなにも友人達には愛されているじゃないか。

 彼らだって家族じゃないか!

 泣いて泣いて、初めて知った恋心など涙で流してしまおう。

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