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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第32話 魔王城にて


「…陛下、俺はアイツを動かすのは反対なんですがね」


魔王城ルストベルグの会議室で急遽幹部を集めた会議が行われていた。


黒騎士は勇者との戦いから重症を負い、さらにエレノアの裏切りという信じられない様な出来事が立て続けに発生しているのが原因だ。


「仕方あるまい。第2軍団長であるエレノアが裏切り第2軍団の一部が脱走、黒騎士も暫くは使い物にならぬ上に各地での人間どもの攻勢…」


エレノア率いる第二軍団は戦闘力で言えば昔リーニアが率いていた頃に比べれば幾らか劣るのだがその代わり後方支援、兵士の練度、エレノア自身の戦闘能力も合わさって第二軍団は魔王軍の戦力の決して少なくない割合を占めていた。


だがエレノアが脱走すると同時に主要な兵士…彼女に長年率いられてきた精鋭は全て魔王軍から逃走したのだ。


ルシウスの言葉を継ぐように魔王軍の暗部"影"の長であるヤヌスが口を開く。


「…さらには各地に潜んでいたあの忌まわしい傭兵達も動き始め、各軍団長は人間共の対処で動けない、我々影も全力で対処しますが…エレノア軍団長…いや、エレノアを相手にするには手練れを全て差し向ける覚悟でなければ厳しい」


「…しかし、あの男…『ガルフレイズ』はこっちの言う事を大人しく聞くような奴では…」


「ふむ…。断罪に差し向けた黒騎士と互角以上に戦ったあやつはその後軍を相手に暴れたのを我が捕らえたからな。ならばレオよ、貴様が代わりにエレノアとその仲間を討ちに行くか?出来るのならば余はそれで構わん」


第三軍団長レオハルトはそう言われて口をつぐむ。


彼は種族柄、戦闘に関して言えばエレノアを凌ぐと言われているが実際に二人がぶつかった場合必ず勝てるかと言われたらそれは『否』だ。


彼の種族は狼人族…身体能力に秀でた種族であり高い魔法耐性と強靭な生命力を持つ。

狼人族は並の魔族では歯が立たない程に強い個体が多い上にそれらの頂点であるレオハルトを力業で倒せるのは魔王と黒騎士位だといえるだろう。


では何故レオハルトがエレノアに勝てないのか?


それは………"経験の差"である。


エレノアはすでにレオハルトよりも長い時を生きている魔族だ。


戦闘で勝敗を分けるのは単純な力のみではない、彼女が長い時を生き抜いてきて、彼女が積み上げた経験をレオハルトも分かっているのでエレノアには簡単に勝てないと言ったのだ。


しかし…


「ガルフレイズは生粋の戦闘狂ですよ、また暴れ出したら…」


「ゴチャゴチャうるせぇのは相変わらずだなぁ!犬コロのボウズよぉ?」


ドアが乱暴に開かれたと同時に筋骨隆々の大男が姿を現す。


乱雑に伸びた群青色の髪に魔王軍でも初期の仕様の軍服を着崩した男はレオハルトの言葉を遮り空いていた椅子にドカッと腰を下ろすと挑発するようにレオハルトを睨み付けていた。


「…貴様!陛下の御前で…」


「よい。…貴様の顔を再び見ることになるとはな…ガルフ」


「はん!オメェと黒騎士にやられた恨みは忘れちゃいねぇぜ?だがよ……あの胸糞わりぃ黒騎士がいねえな?どこに居やがる?」


全身から迸る殺気にルシウス以外の面々が冷や汗を垂らす。


「…奴は今治療中だ」


「なに?あいつがヤられる様な骨のある奴なんざ居なかっただろうが!………さてはそれで俺を解放しやがったのか?」


「…そうだ、我もそう国を離れる訳にはいかんのでな。貴様は強者との戦いを望んでいただろう?その機会を与えようと思ってな。…無論断れば我直々に元の牢獄へと叩き込んでやるが?」


「やれるならやってみろよ?俺はそもそもお前を魔王だと認めちゃいねぇからなぁ!」


ガルフレイズが何も無い空中からズルリと威圧感を放つ片手斧を引き抜くと同時にレオハルトやヤヌス、部屋に配備されていた近衛騎士が抜刀する。


「貴様!陛下に向かって「うるせぇんだよ!俺に手も足も出せねぇ雑魚どもが!ピーピー囀ずってんじゃねぇ!!!」


ガルフレイズが斧を叩きつけると爆発が起きたかの様な衝撃が巻き起こり周囲全てを吹き飛ばす。


「…俺は俺のやりたいようにやる。本当は黒騎士とやりてぇが…黒騎士を倒せる奴ってのは興味がある」


獰猛な笑みを浮かべたガルフレイズにルシウスは口を開く。


「貴様の興味を引くのも当然だろうな、黒騎士を打倒したのは今代の勇者…名をキョウスケといったか?そやつと我が魔族軍第二軍団長エレノア・ナイグラート、『ドレイク傭兵団』副団長ゲイル、エマの四人だ」


「勇者やエレノアはまぁいいがよ、ゲイルにエマか……こりゃあ久しぶりに暴れ甲斐がありそうだな!!そうか生きてやがったか!」


「それと…赤髪の女がそやつらと行動しておるやもしれんが…勝てぬなら逃げる事だな」


ルシウスの言葉にピクッと反応したガルフレイズだったがルシウスはこれ以上語るつもりは無いという気配を漂わせていた。


「…チッ。まぁいい、ゲイル達とまた殺し合えるってぇだけでもクソみてえな牢獄から出た意味もあるからよ」


ガルフレイズは立ち上がると背後にゲートを出現させ、その中に入る直前…


「…言っておくが、俺の邪魔をしたら誰だろうとぶっ殺すからな」


と残して消えていった……


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