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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
10/32

第10話 黒騎士、ギルドの仕事を受ける


どうしてこうなった。


「………」


いや、黒騎士の鎧を着て行けば間違いなく黒騎士と認めて貰えるんじゃないかな?と思って予備の鎧を引っ張り出して完全フル装備で来たのに!


……別にちょっと驚かそうとか思ってなかったよ?本当だよ?


そ、そんなことよりも!なんか凄い勢いで攻撃してくるんだけど!?


剣を合わせる度に相手の剣速が上がっていってるし、一撃が重い。


本当はすぐに兜を脱いで正体を明かすつもりだったんだけど……


「俺はこんなもんじゃねぇ!!」


壁まで吹き飛ばされた時に少しイラッと来た。


……なんか誤解されてるみたいだけど、問答無用で仕掛けてきたのはあっちだし…先にちょっと大人しくしてもらおうかしら。


「…『イビルスラッシュ』」


黒騎士時代から使っているこの技は本当に使い勝手が良い…離れた敵も黒い斬撃を飛ばして攻撃出来るし、空中にも飛ばせるから重宝する。


しかも!これが凄いのは敵に当たった時に爆発するんだよ!!


黒い斬撃がオルトに直撃して逆にオルトを修練場の壁に叩きつける。


うはは!私に攻撃を仕掛けたのをうらみ……って違ぁう!

そんなことをするために来たんじゃないでしょ私!


「よくもマスターを!!」


ってええええ!?今度はそっち?!


しかも凄い速い…確かエリーさんは元Sランクとかって言ってたっけ?昼間はそこまで強そうには見えなかったけど、今は間違いなく相応の強さを持っていると思う。


しかも支援魔術を重ね掛けしだした!?


地面を這うように駆け抜けるエリーさんには斬撃を飛ばしても当てるのは難しいね…かといってあれは当たると痛そう…では済まないかなぁ。


剣を構えて魔力を込める。


「………『イビル……スラッシュ』」


エリーが放った斬撃に合わせる様にイビルスラッシュを放ったフィリアはエリーの剣が砕けたのを確認して更に手に持った魔剣に魔力を注ぐ。


すると刀身が消え去り全く別の場所を切り裂き、エリーの首を通過した後、元の刀身が姿を現す。


「…………あ、あれ?生きてる?」


エリーは首を確認しているみたいだけど…首は斬れてないのよ?

この剣は幻想剣…『イマジンブレード』元々私が持っていた剣のひとつで魔力を込めると目に見える範囲に刀身を転移、任意の場所を斬り裂くっていう実は物凄く珍しい魔剣なんだよね。

見た目が凄く邪悪というか禍々しいのが欠点だけど…あと手に持っているだけで大量の魔力を吸いとられるとかも欠点かなぁ…私にはそこまで大した影響はないけど、人族が持つとすぐに魔力が尽きるらしい。


一応驚いているエリーに睡眠の魔術をかけとこ。ここから先はオルトとだけ話をしたいからね


魔術で眠ったエリーを受け止めてゆっくりと地面に寝かせてからオルトに向き直る。


「どういうことだ…俺を処刑しに来たんじゃないのか……?」


なるほど。私が処刑に来たって思ってるのか。

なら私に襲いかかって来たのもそういう事ね…でもだからっていきなりあの攻撃は駄目だと思います!

もし私じゃ無かったら死んでたよ。


首を振って兜を脱ぐと口を開く。


「…いや、あのね?いきなり攻撃するのはどうかと思う…私じゃなかったら死んでたよ……?」


まぁ私がフル装備で現れたのが悪いとは思うけどね。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…まさか黒騎士の正体が君だと?」


「そうですよ、と言っても色々事情がありまして…」


これまでの経緯を説明すると物凄く変な顔をされた……


「いや、だってなぁ…あの(・・)黒騎士だぞ?それがお前みたいな……しかしあの動きと雰囲気は……うーん」


「まぁ信じてくれなくてもいいよ。…あなたが何をして追われてるのかは知らないけど少なくとも黒騎士が処刑に来る事は無いって事だから安心しなよ。……私の正体をバラしたりしたらその限りじゃないけども」


魔族から追われてるならそれも無いだろうね。私が現状一番バレたくないのは魔王だけだし。


「大丈夫だ、俺はもう魔族領には戻ることは出来ないからな。君の事情は分かった…だがその上で頼みたい事がある」


やっぱりかぁ。まぁなんかそうだろうとは思っていたけど…追手から守って欲しいとかだったら断りたい。


「暫くの間でもいいからこのギルドで仕事を受けてくれないか?…恥ずかしい話だがこのギルドにはもう冒険者が残っていないんだ。今いる若手達が成長するまででいいから居て貰えると助かる」


おや?意外な話だったね。


「具体的には?」


「このギルドの助っ人…ようするにルーキー達に同行して危険から助けてやって欲しい。それ以外だと今まで消化出来なかった依頼を消化してくれるとなお助かる」


うーん…なんだか嫌な予感しかしないなぁ。


しかもさ……


「それって私に頼りすぎじゃない?危険から助けるって…自分たちで解決出来ないような事を私が解決しても本人の為にならないでしょ」


助けても何でそうなったか分からないままだったらまた同じような失敗をして死ぬのが目に見えると思う。


「…助けるかどうかは私の自由で、って事なら協力しないでもないよ?後、夜は仕事が決まったから夕方までしかギルドでは働かないし、その日で終わらない様な仕事はお断り。それなら受けてもいい」


ハベルさんの酒場で仕事があるのだ、そこは絶対に譲る訳にはいかない。


「…わかった、それでいい。黒騎士を味方にできるならそれくらいの条件なんて問題ないさ」


それからも色々と条件を話したりして帰る事になった。


「エリーさんは多分もう少ししたら目が覚めるとおもうから私の正体は内緒にしてね?…もしバラしたら……分かってるよね?」


兜を被ったフィリアが剣を抜く。


「…もちろん。絶対に秘密は守ると誓う」


「そう…ならいいよ……『ゲート』」


フィリアが剣で空を斬り裂くと裂け目が出来る。


「じゃあ、またね」


裂け目に入っていくフィリアを見送ったオルトはゆっくりと椅子に座り込む


「…行ったか………全く生きた心地がしなかったな。黒騎士…魔族最強の騎士…か」


彼女は何故わざわざ正体を明かしたのか…黒騎士だとバラさなければ面倒ごとは避けることが出来たはずなんだが。


「何か考えがあるのかもな…たしか姉を助けたいと言っていたからそれに関係あるとしたら…とにかく情報を集めてみるか」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「いやぁ、格好つけて『ゲート』使ったはいいけど短距離しか転移出来ないんだよねー」


ギルドから少し離れた家の上に降りたフィリアは指を鳴らして鎧を解除する。


しかも『ゲート』の中ってすごく変な風に空間が曲がってるから長距離転移なんてしたら酔うし…


剣を鞘に納めてからヒョイっと地面へと着地するとハベル亭へと歩き出す。


「明日から忙しくなるかなぁ…あ、ギルドでハベルさんの酒場を宣伝してみようかな?…でもギルドも酒場だったし駄目か」


「ハベルの店がどうしたって?」


考えながら歩いていたら不意に声をかけられた。


「え?」


「ハベルの店がどうたらって言ってたじゃねぇか…ってよく見りゃ姉ちゃんすげぇ美人だな?丁度いいや、俺も今からハベルんとこ行く予定だったし一緒に行こうぜ!」


ハベルさんと同じ歳位の…山賊?のお頭みたいな人がそこにいた。


また酔っぱらいに絡まれるのかぁ…でも酒場のお客みたいだし一緒に行こうかな。


「いいですよ、私もハベルさんのとこに帰る所でしたから」


「帰る?なんだ?ハベルはやっとまた女を作ったのか…めでてえなぁオイ!!がははははは!」


「いえ!そんなんじゃないですよ、私はハベルさんの酒場で雇われたんです」


「へぇ、そうかそうか!ならこれからは飲みに行けば姉ちゃんもいるのか…なら毎日行くぜ」


おぉ!こやつ…良い奴だ。毎日来る常連客は大切にしないと!


「俺はブレイドって言うんだが…姉ちゃんは?」


「フィリア=スカーレットです、よろしくお願いします」


「おぉ!フィリアちゃんか、良い名前じゃねぇか!まぁいいや、とにかくハベルんとこで飲むぜぇ!」


「おーー!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…ブレイド、お前が何でフィリアさんと一緒に来るんだ??」


「いやなに、近くで知り合ってな。しかしお前も水臭ぇじゃねえか!こんな美人を雇ったなら教えてくれてもいいだろーがよ」


いやぁ美人なんてそんな……


「…お前は毎日来てるだろうが。お前が来るまでにフィリアさんが帰ってきたら紹介するつもりだったさ。…で?いつものでいいか?」


あれ?ブレイドさんって毎日来てるのか。


「おう、ついでにフィリアちゃんにもな。俺の奢りだからいいだろ?歓迎会と行こうぜ!」


「そんないいですよ!私の事は気にしないで下さい、ちゃんと仕事をしないと…」


手を振って断るが私の前にグラスが置かれる。


「いいさ、今日は元々そのつもりだったんだからな」


ハベルさんは店の扉まで行くと札をひっくり返して『close』に変えた。


「そうそう、フィリアちゃんは気にしなくていいって!こいつがいいって言ってるんだからな」


「…じゃあお言葉に甘えて」


皆がグラスを持つとハベルさんが頷く


「それじゃ…新しい仲間に…『『『乾杯』』』」


登場人物紹介


オルト


ノックスの街にあるギルドのギルドマスターで元はSランクの冒険者パーティ『烈火』のメンバー。


とあるダンジョンに挑んだ際にパーティメンバーの半数を失い解散、実力も実績も申し分が無かったこともあってギルドマスターとなった。


主に使用するのは双剣『闇』でこの剣は魔力を注ぐ事で周囲を深い闇で覆ったり、影に潜ったり出来るのだが使う事なくフィリアに敗北してしまった。


因みに魔族の中では中の下位の実力である。


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