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四十八
「急に攻撃して、ごめんなさい」
「あ、大丈夫! わかってくれたなら良いんだ」
頭を下げる少女に、クゼは慌てて首を横に振る。考えれば、こんな年頃の少女と話した経験なんてクゼには皆無で、どうしたらいいのかよくわからなかった。しかも、貴族の、上品そうなお姫様。雨水の女共に、こんなに清廉そうな人は居やしない。皆、逞しい女たちだったのだ。未だに顔は御簾に隠れ見えないが、その容姿は美しいだろう。クゼは知らずの内に体に力が入っていることに気が付いた。珍しくクゼが緊張している。
「お詫びと言っては何だけど、今日は泊まって行って。もう直日が暮れる」
「……え?」
少女の申出に、クゼは目を見開いた。
夜中に歩くことなど、雨水育ちのクゼにとっては造作もないことだ。いざとなった時は、【真名】で走ればいい。
「オレは、別に大丈……」
「今日は兄様がご不在なの。福屋の、コウさんたちの話を、聞かせて」
(え、なに? 何気に命令口調?)
そこまで言われてはクゼに断る理由も度胸もない。今日はお言葉に甘えてこの貴族の邸宅に泊まることにした。夜は冷え込むことだし。クゼは、女性に弱かったようだ。睦月の終わり、夜が明けたら如月に変わる、そんな、春が待ち遠しい肌寒い日の夜の事だった。




