四十二
コウの話を要約すると、こういう事だ。
先日、コウの旧知の人の娘が成人の儀をしたらしい。その知り合いはもう既に亡くなっているが、娘は嘗てここの団子が大好物だったことから、コウは祝いに団子をその娘に届けたい、とのことらしい。
「――けどよ、なんでオレがわざわざ、しかも貴族の屋敷なんぞに行かなきゃならねぇんだよ!!」
「うちにはそこまで遠出できるような人手がありゃしないんだよ」
主都名並種の貴族街。それは、今二人がいるこの大店通りからは随分と離れた位置に存在していた。
さすが首都と言うべきか、名並種の町はとてつもなく大きい。名並種の外を四角くぐるりと取り囲んだ塀を端から端まで歩いたら、軽く一日は潰れるだろう。それほどの大きさの、どでかい町。
雨水から貴族街までは、さすがに一日は掛らないが、これから行くとしたら確実に日が暮れる。まだ日は高いが、今は冬だ、すぐに辺りが暗くなるだろう。
「面倒くせぇよ……」
クゼはぽつりと本音を零す。
そんなことをしたら、今日一日丸々をコウの頼みに使うことになる。さすがにそれは、いくらいつも世話になっているコウの頼みであっても、面倒だ。
「何だいクゼ。お前ならすぐ行って来ることができるだろう? それとも、あれか? あのハクビって奴を待つことで精一杯ってかい?」
「なっ!? は、はぁ!?」
何を突然言い出すのか。クゼはバッとコウの方を振り返る。ニヤニヤとした意地の悪い笑みを浮かべたコウの顔が見えた。




