十四
「ほら、用は済んだだろ。さっさと帰れ。つーかそんな物小銭と一緒に金子入れに入れてんじゃねぇよ、“大将省第一隊将軍”殿」
「え?」
今度はハクビが目を見開いた。
「印の文字。そう彫られてる。つーか、もっとマシな官職にしとけよ。どう見てもあんた、大将省に見えねぇぞ」
「マシ……って?」
「偽物だろ? それ。よくできているみたいだけど、さすがに大将省は駄目だろ。すぐばれるぞ」
今度は少年がハクビの手を指さす。ハクビは少年と、自身が持つ印を交互に見比べていた。
「ま、んな大罪に巻き込まれでもしたら敵わねぇ。さっさとどっか行ってくれ」
少年はシッシッと手を振った。もうこの話は終いだと言うように。
そこで、ハクビはようやく少年がどうしてこんなにもあっさり印を返したかを理解した。確かに、ハクビが言ったようにこの印自体は換金できない。しかし、砕いて粉々にしてしまえば別だ。結構な金額になることだろう。これにはとても良い資材が使われているのだから。少年はこれが偽物だと思っているのだ。そして、その意味を知っている。“この印”の偽造は大罪だ。それこそ、即刻死罪となるような。