↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/111

57 崩壊

 ダニエレはほとんど眠れないまま夜を明かし、学園へと向かった。

 だが、「タイミングが掴めない」と自分に言い訳しながら、ずるずると三日過ごした。

 授業は全く頭に入らず、それどころか他人の声も耳に入って来ない。

 

 しかし祖父の身を思うとやらねばならない。

 放課後を待った。

 

 

 

 重い身体を動かし、隣の上位クラスへ足を運ぶ。

 ドアの向こうに並ぶ机の波の中に、彼女はいた。

 

『医療』バストン侯爵令嬢 フリア・ロペス。

 だが、彼女の周りには三人のクラスメイトがいた。

 クリス、マイヤ、そしてペール。

 

「ロ、ロペス嬢。サークルの事で話が⋯⋯」

 ダニエレは意を決して話しかけた。

 

 フリアは首を傾げ

「何でしょう?」

 と、ダニエレに顔を向けた。

 

「ちょっと、いいかな」

 ダニエレはフリアの腕を掴み、ぐいと引っ張った。

 

「っやっ。あのっ、フォンターナさまっ」

 フリアが体勢を崩してよろけた瞬間、ペールが走り寄った。

 ダニエレは咄嗟に横なぎに腕をペールに叩きつけた。

 

 

 

「ダニエレ! 何をしている! フリアから手を離せ!」

 エミリオの声がした。

 

 エミリオとペールがダニエレを取り押さえようと三人で揉み合う。

「コトン」

 何かが転げ落ちた。

 ペールがそれに手を伸ばす。

 

「あっ! それは!」

 気付いたダニエレが、それをもぎ取ろうとする。

 

「えーと、もしかして?」

 ペールは言うなり、靴の踵で踏み砕いた。

 

 ネクタイピンの台座から鉱石が外れた。

 

 

 

「何があったんだい?」

 

 エミリオとペールに両手を掴まれ、生徒会室に連れてこられたダニエレ。

 真っ先に口を開いたのは、生徒会長であるアルドーだった。

 

「あ、あのっ。先代様が⋯⋯」

 一瞬にして生徒会室に緊張が走る。

 エミリオがその手に力を込めると、「いっ」とダニエレが呻いた。

 

「二人とも離しておやり」

 アルドーはゆったりと話しかける。

 ダニエレを睨みつつ、エミリオは手を離した。

 

「これを」

 ダニエレはポケットの中の紙片をアルドーに差し出した。

 

 横から護衛の黒い男が音もなく現れ、それを手に取った。

 ただの紙である事を確認してアルドーの机の上に置く。

 

「これは、地図?」

「先代様が、ロペス嬢を連れてこいと。⋯⋯『医療』が王家におもねったからって」

「ん? 最初から話してごらん?」

 

 

 

 ジュゼッペがリカルドの行方に『医療』を疑っている。

 最近王家におもねり、大神殿と繋がった事に危機感を覚えている。

 何をするのかわからないが、フリアをその地図の場所に連れてこいと命令された。

 ダニエレは順を追って話した。

 

「やらなければ、祖父の身に危険があるかも知れないんです」

「なるほどね」

 

 アルドーは黒い男を手招きし小声で話す。

 地図を指差し頷いた。

 男は紙片を手に生徒会室から立ち去り、部屋は静寂に包まれた。

 

 

 

「殿下ー、こんなの持ってましたー。壊しちゃいましたけど」

 ペールがネクタイピンと外れた鉱石を机に置いた。

 

「これは?」

 アルドーは台座の中央を食い入るように見る。

 エミリオまでそれに加わり、二人で頷きあっている。

 

「先代様から渡されました。⋯⋯俺の声が聴こえるそうです」

「へえ」

 

 アルドーの顔に笑みが広がる。

 いつもとは違う冷たく暗い微笑。

 

 アルドーは立ち上がり、ダニエレのタイを外した。

 ネクタイピンをタイで包む。

 

 それを見たクリスが引き出しから封筒を取り出し、アルドーに手渡す。

 封筒を手にアルドーは資料室に入り、しばらく戻らなかった。

 

 

 

「ネクタイピンは国王陛下にお渡しする。いいね?」

 アルドーは戻るなり、ダニエレに言い渡した。

 

 それと、と言ってアルドーは続けた。

「君の処遇も考えなければならない。下手に帰すと君こそ命の危険がある。だが、私の一存で決められない。じき王城から人が来るだろう」

 

 半刻後、王城からの使者が生徒会室へ到着した。

 使者の報告によれば、地図の場所はもぬけの殻であり、現在は残留物を調べている最中だという。

 ラマート子爵は無事であり、邸の周りには兵士が配置された。


 そして、使者は伝える。


「ジュゼッペ氏は、マールム公爵邸から姿を消しました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。