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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第八章

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95 暁と宵の大地

「大丈夫。私がいるから」

 

 アルドーに震える手を引かれ、クリスは式典会場に入る。

 一斉に視線が集まり、身が竦んだ。

 

 二人は会場の前方の端に移動し、アルドーに用意された位置についた。

 それを見計らい、王太子とセーレナの来場が告げられた。

 会場の視線はそちらへと移り、クリスは胸をなでおろす。

 

 クレプスクルムとセーレナはゆったりと中央を歩み、階の前まで来ると振り返り並んだ。

 クレプスクルムは手を振り、会場を見渡した。

 

 

 

 

「待っている間に兄から何か言われた?」

 アルドーが心配げにクリスを覗き込んだ。

 

「⋯⋯いいえ」

 瞳の色の事はきっと気のせいだ、とクリスは飲み込んだ。

 

 国王が祝辞を贈り、大人たちが杯を掲げ祝い合った。

 三々五々歓談し、アルドーのもとには婚約者候補の決定の祝いの言葉が寄せられた。

 噂のおかげもあって、全てが順調に進んだ。

  

 

 

 閉会後、アルドーに導かれてテラスへ出た。

 冬の初めの冷たい風が上気した頬を刺した。

 仰ぎ見ると澄んだ空気に星が瞬いている。

 

「ねえ、クリス。知っている? 我々マグノリア王国の全ては、あの星空の向こうからやって来たのだよ。建国縁起の『黒き海』はあの星空、古代機械はその当時の技術なんだ」

 

「そうなのですか? 知りませんでした」

 初めて知る事実にクリスは驚く。

 

「私は王族なので知っているが、何故こんなにも忘れられているのだろうね。そんな技術力があったのに、今では馬車でしか移動出来ないなんて不思議でならない」

 

 アルドーは停車場の混雑が解消されるまで待つつもりだ。

 何処からともなくチェルニーが進み出て二人に厚手のマントを羽織らせ、再び闇に消えた。

 

 

 

「お疲れ様。素晴らしい淑女ぶりだったよ。実は母上から、少しずつ慣れさせろと言われていてね。いや、私もなんだが。あまり社交が得意でなくて⋯⋯」

 

「そんな風には見えないのですけれど⋯⋯?」

 女性のドレスコードは知らないようだが、アルドーは場に溶け込んでいるような振る舞いだった。

 

「だとしたら、上手く誤魔化せているって事だね。⋯⋯それにしても、とうとう学園を卒業してしまった。春になり成年式を迎えれば、王族の公務に参加しなければならない。苦手などと言ってもいられなくなってしまう」

 ふう、とアルドーは溜息をつく。

 

 

 

「君とも毎日会えなくなる。とても悲しい。⋯⋯けれど、君の努力に見合うだけ、私も努力せねばね。セーレナのブレスレット、君が作ったのだろう? 光を纏って揺れる姿が美しかったよ」

 

「お気づきでしたか? 嬉しいです。でも、まだ未熟なようです」

 クリスは眉根に少ししわを寄せた。

 

「お互いまだまだのようだね」

 クリスの頭に手を乗せ、撫でる。

 

 そのまま抱き寄せ、耳元に唇を寄せた。

「手紙を待っているよ。君の美しい字が大好きなんだ。きっと見ているだけで幸せになれそうな気がする」

 

「アルドー様も書いてくださいますか? きっと貴方を近くに感じられて幸せになるでしょう」

 クリスはゆっくり体を離し、アルドーを見上げた。

 

「もちろん。約束するよ。冬の間も、そしてその後もずっと」

 

 再びアルドーはクリスの耳に唇を寄せて囁く。

 

「愛してる」

 

 クリスは目を伏せた。

 

 

 

 マグノリア王国第二王子、アルドー・ルカ・マグノリアは学園を卒業し、成年王族への道を歩みだした。

 卒業式典のパーティでエスコートされたクローステール男爵令嬢、クリス・アンバーブロウは暗黙の了解で婚約者と認識された。

 

 五年後、クレプスクルム戴冠。

 その二年後にアルドーはサピエンティア公爵となり、妻を娶った。

 妻の名はクリス・テルース・マグノリア。

 

 

 

 テルース──それは、大地。

 王族の伴侶として、共に歩む女性に贈られる名。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

伏して感謝を。


26年後に降りかかる、王国の根幹を揺るがす事態の顛末。

アルドー、セーレナが登場。

『偽りの始まりはどこからなのか』


初代国王の生と死を綴った物語

『Paint the Sky』


全ての流れの中で派生した物語

『マグノリア王国サイドストーリー』


マグノリア王国シリーズ。

まだまだ続きます。


どうぞよろしくお願いいたします。

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