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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白
第二巻

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52/59

第52話

「みなさん、慌てないでください! 慌てないで! ポチのバッテリーはまだまだ余裕ありますから! ちゃんと、会いたい人と会えますからねー!」


 私は片っ端から、通話申請を飛ばしていく。


 よかった……今日は予備バッテリーを大量に持ってきてる!


 これなら同時に何十件ビデオ通話を繋いでも問題ない!


「……ええと、こちらの幽霊さんの遺言は『ブラウザ履歴の削除』ですね? はい、ちゃんと記録しておきます……報酬は『お盆に会いに行って感謝を伝える』?? え、えっと……報酬とかは大丈夫です、ありがとうございます……」


「……こちらの方の遺言は? 『今年のお供えはPS5で、中に最新ゲームを全部入れてほしい』……分かりました。ちゃんと伝えておきますね」


「中村さん、警察の方から“三日前の夜に何があったのか聞いてほしい”って言われてるんですけど……えっ!? 犯人、まさか『正義冒険団』って名乗ってるA級冒険者なんですか!? うわっ、これ配信に乗せちゃダメなやつでは!? 放送事故ですよねこれ!?」


「S18ダンジョンのボスって、HPが52%切ると急に発狂するんですか? 情報ありがとうございます! ……あっ、頭が落ちましたよ!? だ、大丈夫ですか!? はい、そうです、その辺です! もうちょっと右! あっ、よかった! ちゃんと拾えましたね! 歩く時は気をつけてください!」


「あなたの願いは……復活、ですか……。それは……ごめんなさい。私にも、どうしたらいいのか分からなくて……」


「みなさん、順番にお願いしますー! ひとりずつ遺言を話してください! できる限り、ちゃんと届けますからー!」


 ◇


 冒険者協会。


 『未知ダンジョン開拓・研究対策室』


 鎧警察の真司は、机の前で映像を見つめながら、徐々に表情を引きつらせていた。


 画面の向こうは、もはや夏祭りの屋台通りみたいな騒がしさになっている。


「……これ、教えたほうがいいんじゃないか? 三キロ先に、別の転送出口あるって。出たければ普通に歩いて出られるって……」


「転送門が壊れた直後に言うべきだったな。今さらもう遅い。状況が完全に初期想定を超えてる」


 眼鏡の研究員が、険しい顔で眉間を押さえた。


「まさか本当に、現実世界の死者と一致する幽霊が現れるとは思わなかった……しかも、それを全世界に生配信されるなんて」


「お前が『退路を失ったと思わせたほうが、もっと奥まで探索する』とか言ったからだろ」


 真司は呆れたように口を尖らせる。


「だから、あの時わざと黙ってたんじゃねえか」


「今となってはもう止められない。


 あの配信は、現世と冥界を繋ぐ唯一の窓口になってしまった。


 死んだ家族にもう一度会いたい人間が、今も世界中から押し寄せている。


 同時に、最後の願いを叶えたい幽霊たちまで殺到している」


 研究員は低い声で続けた。


「この状況で、冒険者協会の権限を使って配信を強制停止したら……最悪、暴動が起きる」


「人間の抗議活動ならまだいいけどな……」


 真司がぼそりと呟く。


「幽霊のデモとか、どうすんだよ」


「……百鬼夜行か」


 室内の全員が、ぞわりと背筋を震わせた。


 その時。


 カチャリ、とドアが開く。


 最初に部屋へ入ってきたのは、毛並みのいい金色の盲導犬だった。


 その後ろから、老人がゆっくりと入室してくる。


 室内の全員が、慌てて立ち上がった。


「会長!」


「会長!」


「……うむ」


 老人は静かに頷き、席へ腰を下ろした。


「小金から聞いたよ。どうやら、君たちは判断に困っているらしいな」


「会長……探索中の少女が転送陣を破壊した後、本当に幽霊が出現しました。しかも現実の死者情報と一致しています」


「幻覚魔法の可能性は?」


「まだ完全には否定できません。


 ですが……あの子が、これほど大量の死者を知っているはずがない」


 研究員は唇を噛み締める。


「もし『記憶を読み取って幻覚を見せるタイプの魔法』だとしたら……術者は、配信越しに視聴者側の記憶まで読み取っていることになります。


 そんなの、あまりにも危険すぎる……!」


「……なるほど」


 老人はゆっくり頷いた。


「確かに、それは厄介だ。


 だが……逆に考えてみよう」


 静かな声が、室内に落ちる。


「もし――


 あそこが、本当に死後の世界だったなら?」


「……」


 誰も言葉を返せなかった。


 “冥界”の実在。


 そんなものが証明されてしまえば、人類の生死観そのものがひっくり返る。


 自分たちですら、まだ“死後の世界”という概念を受け入れる準備ができていない。


 むしろ、幻覚魔法だったと言われたほうが、まだ安心できる。


「ダンジョンは、無限の可能性を世界にもたらした」


 老人は穏やかな口調で続ける。


「魔法。


 AI。


 魔物。


 巨竜。


 勇者と魔王。


 一瞬で星間移動すら可能にする技術。


 ……これだけの“奇跡”を見せられたあとでは、“冥界が存在する”と言われても、私はそこまで驚かんよ」


「ですが……」


 研究員は苦しげに声を絞り出した。


「このまま全世界へ配信して、本当にいいんでしょうか……? せめて、情報統制を――」


 老人は小さく笑って、首を横に振る。


「いつかは誰かが向き合わなければならない。


 人は、遅かれ早かれ“生”と“死”について考えることになる。


 もしダンジョンが、本当に生死を繋ぐ道を作ってしまったのなら――


 人類は、その道とどう向き合うかを学ばなければならない。


 隠し通せるものではないよ」


「……早すぎませんか」


「……もし冥界の存在が、人々にほんの少しでも立ち止まる理由を与えるのなら。


 この狂った時代に、少しでも心の慰めを残せるのなら」


 老人は静かに目を閉じた。


「力ばかり追い求めて、自分を壊してしまう人間も……少しは減るかもしれない。


 “無限の可能性を持った未来と、人類がどう共存するかを学ぶ”――


 それこそが、冒険者協会の存在意義なのではないかね」


 ◇


「みなさん落ち着いてくださいねー! 順番順番! ……えっと、さっき“お腹いっぱい食べてから三途の川を渡りたい”って人が多かったので、とりあえず三途の川で魚釣りしてみようと思います!」


「えっ、中村さん釣りできるんですか!? 助かります!」


「井上さん、お料理得意なんですか? じゃあ、この彼岸花を料理にできたりします? 衣つけて揚げるとか……おひたしとかでもいけそう! 私、調理器具持ってきてます!」


「みんなお腹空いてるんですか? じゃあ、今すぐ遺言残したい人は、そのままポチに直接話してください! それ以外のみなさん、一緒にご飯作りましょう!」


「焚き火で焼肉!? いいですね! あっちに木材っぽいのありますよ!


 ……でも、他の死者を焼いて食べるのはダメですからね!? 失礼すぎます!」


 ……なんだか、急にとんでもなく忙しくなってきた。


 私は額の汗をぬぐう。


 ポチのホログラムの光が周囲を照らしていて、冥界の黄昏ですら少し明るく見えた。


 ……あれ?


 そもそも私、何しに来たんだっけ。


 あっ、そうだ。


 ご飯食べに来たんだった。


 ……まあ、いいか!


 どうせ食べるのが目的なんだし、一人で食べても、みんなで食べても同じだよね!


 幽霊のみんなもお腹空いてるって言ってるし、どうせ渡るなら、お腹いっぱいの状態で渡ったほうが幸せそうだし!


 ただ、周囲の食材がちょっと足りない気がする。


 三途の川の魚、多いといいなぁ。


「……うわあああっ!? どこから来たのこのモルモット!?」


 突然、遠くから大量のモルモットが突撃してきた。


 しかも、なんかめちゃくちゃ怒ってる!?


 モルモットたちは私の服やズボンに噛みつきながら、キーキー鳴き声を上げて暴れ回る。


 まるで鬱憤でも晴らすみたいに、ガジガジ噛みまくっている。


 言葉は分からない。


 でも――


 たぶん、とんでもなく口汚く罵倒されてる気がする……!

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― 新着の感想 ―
食べたいですよね、よもつへ
三年前にダンジョンが出来た世界なのに配信環境整ってたり職業制度整ってたり冒険者制度整ってたりSSSランク冒険者がいたり邪教集団がいたり既に引退済みの超強い会長がいたりするのは何故?
逝っても戻らないのかw
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