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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白
第一巻

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32/59

第32話

 そういえば、これまでに摂取してきた毒は、だいたい一回で致死量に達していた。だから一度しっかり消化しきらないと、次の反転は発動しなかった。


 でも――アルコールは、ああいう毒とは違う。


 飲めば飲むほど、効果は積み上がっていく。


 ドンッ!


 また一杯、飲み干した。


「はっ! 空いたグラスの数は見てたぞ? さっきお前が飲んだ分、これでちょうど帳尻は合ったよな? ――じゃあ、次はお前の番だろ?」


 私は大男の魔法使いを睨みつける。


「ふん……誰が相手でも結果は同じだ」


 男は嘲るように笑い、グラスを持ち上げ――


 一気に飲み干した。


 ――勝負、再開。


 場の空気が一瞬で沸騰する。


 ……いいね。


 欲しかったのは、この熱量。


 この流れなら――私の提案を、あいつは断れない。


「こんなチマチマした飲み方じゃつまらない! マスター! 店で一番強い酒を持ってきて!! 一口で沈むようなやつを!!」


 酒のランクを、一気に引き上げる。


 対面の男の表情が、ほんの一瞬だけ揺れた。


 こいつは水系魔法で、酒の中の水分と一部のアルコールをこっそり体外へ排出している。


 低アルコールの酒、例えばビールみたいな勝負では――それは圧倒的に有利なイカサマだ。


 けど。


 度数が高くなればなるほど、その優位は通用しなくなる。


 むしろ水分が減ることで代謝が追いつかず、酔いが加速する。


「お前……」


「なに? まさかビビった?」


 私は即座に言葉を被せて、逃げ道を塞ぐ。


 周囲のコールが一気に膨れ上がる。


「ウォッカ!! ウォッカ!! ウォッカ!!」


 男は奥歯をギリッと噛み締めた。


「ウォッカでいいだろ! ガキ相手にビビるかよ!!」


 体格も体重も、あっちはほぼ倍以上。


 常識的に考えれば、自分が負けるなんて思うはずがない。


「じゃあ決まり。マスター、アルコール度数96%のスピリタスをお願い」


「い、いくつだって……?」


 男の目が見開かれる。


「スピリタスだと!?」


 バーテンダーは戸惑いながら背後の棚を見る。


「お客様……本気ですか? スピリタスは……ほぼ純アルコールですよ」


「勝負なんだから、一発で決めないとね?」


「ですが……」


 バーテンダーは躊躇しつつも、棚から瓶を取り出す。


「これは通常、カクテル用です。飲む場合も、一度火をつけてアルコールを飛ばしてから……」


「大丈夫大丈夫。冒険者なら、一番強い酒くらい飲めないとね?」


 やがて。


 96度のスピリタスが、私と男の前に置かれた。


 男は唾を飲み込みながら、瓶を凝視する。


「お前……狂ってる……! こんなの飲めるわけないだろ!? 触ることすら――」


「もちろん。飲むに決まってるでしょ?」


 私はそのまま瓶を掴み、


 グラスすら使わず――


 喉へと直接、流し込んだ。


 ごく、ごく、ごく。


 まるで液体の炎が食道を駆け下りる。


 喉が、焼ける。


「はぁぁぁあああ!?!?」


「WTF――!!」


「やめろ!! 本当に飲んでるぞ!? 止めろって!!」


 野次を飛ばしていた連中ですら、顔色を変えた。


 せいぜい小さなグラスで競うと思っていたのだろう。


 それでも危険だというのに――


 この飲み方は。


 完全に自殺行為だ。


 ごく――ごく――ごく――


 私は一息で、一本丸ごと空にした。


 最後に瓶底に残った数滴を灰皿へ垂らし、


 ボッ、と火をつける。


 これが、本物のスピリタスだという証明だ。


 そしてそのまま、テーブルの上に飛び乗り、


 もう一本の瓶を掴んで――


 男の目の前へ突きつけた。


「――次は、あんたの番」


 男の目が、恐怖で見開かれる。


 その手は、いつまで経っても伸びてこない。


「どうしたの? 怖い?」


 震えながら、男が手を上げる。


 店内は、水を打ったように静まり返る。


 すべての視線が、彼に突き刺さる。


 重圧で、手がガタガタと震えている。


 ――その瞬間。


 張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。


 バシッ!!


 男は酒瓶を叩き飛ばした。


「ふざけんな!! 狂ってる!! こんな勝負!! たかがBランク任務だろ!? 命張る必要あるかよ!!」


 そのまま背を向けて逃げ出そうとする。


 ――けど。


 私はその襟首を、がっちり掴んだ。


 背後から、低く囁く。


「逃げちゃダメだよ?」


 声は、氷みたいに冷たい。


「さっきのイカサマ……全部、正直に話して。じゃないと――」


 私は耳元で、くすっと笑った。


「私が死んで幽霊になったら、一緒に地獄まで連れていくから」


 身長二メートル超の巨体が、


 今にも泣き出しそうに震えた。


「わ、わかった!! 認める!! 水系魔法を使った!! 酒の水分を抜いてたんだ!! それでいいだろ!? もう関わるな!!」


 男はそのまま、転がるように店を飛び出していった。


「おーい……負けたなら、酒代くらい払ってけ……」


 神代が酔っぱらった声でぼそっと言う。


 直後。


 袋いっぱいの銀貨が、外から投げ込まれた。


 酒場が一斉に笑いに包まれる。


「大丈夫?」


 私は慌てて神代を支えた。


 まだ知り合って間もないけど――


 一応、同じダンジョンに潜った仲間だし。


 それに、前に私が攫われたとき、助けを呼んでくれたのも彼女だ。


「とりあえず、部屋に運ぼう」


 私と錬金術師の青野で、左右から神代の腕を担ぐ。


 そのまま部屋まで連れていって、


 ベッドに寝かせようとした、その瞬間――


 ぎゅっ。


 彼女の両腕が、突然強く締まった。


 私と青野の首を――


 がっちりと締め上げた。

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― 新着の感想 ―
大量の銀貨を飲み屋の支払いって
銀貨????
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