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Prolog
それは突然だった。
今思えば、あの子は最後の力を振り絞っているようだった。
必死に、もう少しだけ走ろうとしていたのかもしれない。
私はその時、
あの子が死に直面している事に気づいていなかった。
私は走行距離が伸びるにつれ、
あの子のことが大切になっていた。
あの子は私に、たくさんの知見をくれた。
いろいろな場所へ連れて行ってくれた。
いろいろな思い出を乗せて走ってきた。
他人にとっては、この時点でもう
ただの機械で、
やがて鉄屑になるものなのだろう。
けれど誰にでも、
他人から見ればゴミのようでも
自分にとっては大切なものがある。
これはtapeの閑話。
物語をくれた機械の、
最後のtape。




