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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第45話 特別な渡り鳥と冬の訪れ

秋風が白石牧場の木々を揺らす朝、近くの森での薬草採取を終えて戻ってきた悠真は、ふと空を見上げた。遠くから聞こえる不思議な鳴き声に、彼は手の作業を止める。


「あれは……鳥の声か?」


リーフィアが温かい飲み物の入った木製のマグカップを持って近づいてきた。


「お帰りなさい、悠真さん。外は寒かったでしょう?これを飲んで一休みなさってください」


彼女は優しく微笑みながらマグカップを差し出す。その中にはほんのりとハーブの香りが漂う。


「ありがとう。助かるよ」


悠真はリーフィアからカップを受け取り、一口飲んだ。優しい甘さと温かさが、冷えた体を内側から温める。


「外はだいぶ冷えてきたな。去年はそれが普通だったけど、最近は牧場の快適さに慣れてしまっていたからなぁ」


リーフィアは同意するように頷いた。


「えぇ。この牧場の気温調整機能はすごいです。動物たちもとても快適そうですから。さて、そろそろ朝食にしましょうか」


リーフィアの声に、悠真が振り返ろうとした時だった。頭上から今度は鋭い鳴き声が聞こえてきた。


「あれは……?」


空を見上げると、一羽の鳥が円を描きながら牧場の上空を飛んでいた。通常のツバメより少し大きく、その羽には不思議な紫色の光沢がある。


「見たことのない鳥だな」


悠真が言うと、リーフィアも興味深そうに空を見つめた。


「本来なら、この季節のツバメは南へ渡っているはずですが...」


鳥はさらに低く飛び、納屋の屋根に降り立った。近くで見ると、そのツバメは確かに特別な存在だった。紫色に輝く羽は、朝日を受けてさらに鮮やかに光り、小さな体からは微かな熱気が漂っている。


「暖かさに惹かれて来たのかもしれませんね」


リーフィアの言葉に悠真は頷いたが、ツバメはすぐに飛び立ち、牧場の奥へと飛んでいった。


――――――


朝食を終えた後、悠真はツバメの姿を探して牧場内を歩き回っていた。テラとアクアも好奇心からか、彼の後をついてきている。


「いったい、どこへ行ったんだろう」


悠真が首をかしげていると、アクアが突然「チチチ」と鳴き、木立の方向を指さした。


「見つけたのか?」


彼がアクアの指す方へ進むと、大きな樫の木の枝に、先ほどのツバメが羽を休めていた。近づくと、ツバメは警戒した様子も見せず、むしろ興味深そうに悠真を見つめている。


「おや、人懐こいんだな」


悠真が手を差し出すと、驚くことにツバメは少し首を傾げた後、その手に飛び移った。手のひらに乗ったツバメの体は、普通の鳥より温かく、まるで小さな炎が宿っているかのようだった。


「君は一体何者だい?」


ツバメは「チュイッ」と鳴き、悠真の指先をつついた。その瞬間、悠真の脳裏に不思議な映像が浮かんだ。雪に覆われた高い山々、そして赤い炎のような景色。


「今のは……」


映像はあっという間に消えたが、悠真の心に何かが残った。それは言葉にできない不思議な感覚だった。


「リーフィアに見せてみよう」


悠真がツバメを連れて家へ戻ろうとした時、突然の強風が吹き抜けた。ツバメは驚いて飛び立ち、牧場の外れにある小さな小屋の方へと飛んでいった。


「あっ!待って!」


悠真は慌ててツバメを追いかけた。アクアとテラも「チュッ」「ミュウ」と鳴きながら、一緒についてきた。


――――――


小屋に着くと、ドアが少し開いている。悠真は恐る恐るドアを押し開けた。


「ここに入ったのか?」


薄暗い小屋の中、隅の方に藁で作られた即席の小さな巣のようなものが見えた。近づいてみると、そこには先ほどのツバメと、もう一羽の同じ種類のツバメが寄り添っていた。しかし、もう一羽の方は明らかに元気がなく、羽の光沢も弱々しかった。


「怪我をしているのか?それとも……」


悠真が近づくと、元気なツバメが守るように弱ったツバメの前に立ちはだかった。その姿を見て、悠真は状況を理解した。


「なるほど、仲間を守るために、暖かい場所を探していたんだな」


悠真はゆっくりと手を引っ込め、少し下がった。


「大丈夫、害は与えないよ。むしろ、手伝いたいんだ」


彼はそっと小屋を出て、アクアとテラにも「静かに」と目配せした。


「リーフィアに相談しよう。彼女なら何か知っているかもしれない」


――――――


「炎のツバメですか?」


リーフィアは悠真の説明を聞いて、思案顔になった。


「そう、羽が紫色に輝いていて、体が異常に熱いんだ」


リーフィアは何かを思い出すように目を閉じた。


「もしかしたら……『フレイムスワロー』かもしれませんね」


「フレイムスワロー?」


「火山地帯に住む特殊なツバメで、体内に火の魔力を持っています。通常は群れで暮らすのですが、この季節に単独で見かけるのは珍しいですね」


リーフィアの説明に、悠真は納得した。


「もう一羽は弱っているようだった。何か助けられることはないだろうか」


「普段人里で見かけるようなことはありませんから……。でも、サクラの癒しの力なら助けになるかもしれません」


リーフィアの考えに、悠真は頷いた。


「そうだな。まずはサクラに見てもらおう」


――――――


サクラは桜色の毛並みを優しく震わせながら、小屋の中に入ってきた。弱ったフレイムスワローを見て、彼女は静かに近づいた。


「メェ……」


サクラの角が淡い光を放ち、その光が弱ったツバメを包み込むと、呼吸は安定したように見えた。しかし、その顔色にはまだ辛そうな様子が伺えた。


「マシにはなったみたいだけど……」


悠真が呟くと、リーフィアは眉を寄せた。


「そうですね。これは……」


彼女は少し考えてから、小屋の中の温度を感じ取るように手を広げた。


「悠真さん、この子たちは本来、もっと熱い環境に住んでいるはずです。この寒さが彼らにとって厳しすぎるのかもしれません」


悠真はリーフィアの言葉にハッと気づいたように目を見開いた。


「そうか。体温を維持できないから弱っているのか。よし、フレアとヘラクレスに手伝ってもらおう」


彼は急いで小屋を出ると、牧場の方へ向かった。アクアとテラは好奇心いっぱいの目で、彼の後を追いかけた。


――――――


しばらくして、悠真は火狐のフレアと角から炎を出す牛のヘラクレスを連れて戻ってきた。


「二人には、この小屋を暖めるのを手伝ってほしいんだ」


悠真の言葉に、フレアは尻尾を大きく振り、ヘラクレスもゆっくりと頷いた。


「それと、牧場の気温調整機能も使おう」


悠真が意識を集中すると、小屋内の温度が徐々に上昇し始める。


「うん、これでずっと暖かい環境を維持できるはずだ」


フレアは小屋の隅に座り、尻尾から柔らかな炎を放った。炎は小屋全体を温め、空気が乾燥しないよう、優しく揺らめいている。


一方、ヘラクレスは角から炎を小さく出し、小屋の中央に置かれた石に熱を伝えた。石は徐々に赤く光り始め、熱を蓄えていく。


「これで暖炉代わりになるな」


悠真の言葉に、リーフィアは微笑んだ。


「まるで小さな火山の中にいるようです」


健康なフレイムスワローは、状況の変化に気づき、「チュイッ」と嬉しそうに鳴いた。弱っていた方のツバメも、少しずつ羽の色が鮮やかさを取り戻し始めていた。


「サクラ、もう一度お願いできるかな?」


悠真の言葉に応え、サクラは再び弱ったツバメに近づいた。今度は、より明るい光が彼女の角から放たれ、フレイムスワローを包み込んだ。


「メェ……」


暖かさと癒しの力が相まって、弱っていたツバメの羽は次第に鮮やかな紫色に輝き始めた。


「効いてきたようだね」


悠真は安堵の表情を浮かべた。リーフィアも嬉しそうに頷いている。


二人が話している間、弱っていたフレイムスワローは少しずつ元気を取り戻し、ついに立ち上がった。


「チュイッ!」


元気になったツバメの鳴き声は、小屋中に響き渡った。


――――――


夕暮れ時、悠真とリーフィアは小屋の外でお茶を飲みながら、空を見上げていた。


「何とか助けられて良かった」


悠真が話すと、リーフィアは頷いた。


「そうですね。この地域では珍しい種類ですから、おそらく長い旅の途中で体調を崩してしまったのでしょう」


二人の会話に、テラが「ミュウ」と鳴き、空を指さした。見上げると、二羽のフレイムスワローが小屋から飛び立ち、悠真たちの頭上を旋回していた。


「元気になったようだな」


悠真の言葉に、フレイムスワローたちは「チュイッ」と鳴き、より低く飛んできた。


突然、二羽のツバメが悠真の前に舞い降り、彼の手の上に止まった。彼らの羽から、小さな炎のような光が放たれ、悠真の手のひらに落ちた。


「これは……」


光が消えると、そこには小さな赤い羽根が残っていた。羽根は微かに暖かく、触れると心地よい温もりが広がる。


「きっと、お礼の印ですね」


リーフィアが微笑むと、フレイムスワローたちは再び飛び立ち、夕焼けの空へと消えていった。


「チュイッ!」


彼らの鳴き声は、次第に遠ざかっていく。


「また会えるかな」


悠真がつぶやくと、リーフィアは優しく微笑んだ。


「きっと、暖かくなったらまた戻ってきますよ」


二人は、赤い羽根を大切に手に握りしめ、夕暮れの空を見つめ続けた。テラとアクアもそれぞれ「ミュウ」「チュッ」と鳴きながら、共に空を見上げていた。


「暖かい場所に無事に着けますように」


悠真の言葉が、夕暮れの風に乗って遠くへと運ばれていった。


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