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カナリーダとヘルレウスの新たな戦力

マミューラを勧誘した大成達は、ナドムの森へ行き、森の守り神、マルコシアスに会いに行く。

【ナドムの森】


大成、ジャンヌ、ウルミラ、ローケンス、マミューラの5人は、ナドムの森の入り口に着いた。


学園の合宿中の時に、ゴブリン・ロードとの戦いで傷付いた森は、大成の指示の下、騎士団や職人達が、へし折れていた木々を全て撤去し、代わりに小さな苗を植え、氾濫した川を整備などを施した。


「ハァハァ、や、やっと…着きましたね」

「そ、そうね、ウルミラ…ハァハァ…でも、マルコシアスは、いったい何処にいるのかしら?」

学園から休まず走って来たので、ジャンヌとウルミラの2人は息が上がっていた。


「まぁ、進んで行けば、そのうち、あいつの方から来るさ」

「そうだな。とりあえず、進みましょう修羅様、ジャンヌ様」

ジャンヌの疑問にマミューラが答え、ローケンスは頷いて肯定した。


大成達が、森に踏み込もうとした時…。

「上だ」

魔力を感知した大成は、魔力を感じた空を見上げ叫んだ。


「「えっ!?」」

「「何だ?」」

ジャンヌ達は、大成の言葉で空を見上げたが、大成の言葉と同時に、空から物凄いスピードでお婆さんがジャンヌ達の前に急降下して来た。


そして、お婆さんは地面すれすれで、背中から翼を出して急停止し、フワッと着地したことで、風圧が生まれ砂煙を巻き起きた。


「「きゃ」」

ジャンヌとウルミラは、慌てて左手を目元の前に出し、右手でミニスカートを押さえた。


「ぬぅ」

「くっ、ファイア・ボール」

先頭にいたローケンスとマミューラは、横向きになり左手を目元の前に出した。


ローケンスは右手を背中に掛けている大剣に手を伸ばし、マミューラは右腕を上に挙げて、炎魔法ファイア・ボールを唱え発動し、掌に直径1mぐらいの大きさの火球を出した。


2人は、いつでも反撃ができる体勢をとる。


一方、大成は魔力を感知して、知っている人物だと認識できたので特に警戒せず、そのまま砂埃に飲み込まれた。



「お前は、誰だ?」

殺気は出さず、警戒心と威圧感を高めたマミューラは、目を細めながら尋ねた。


「フハハハ…」

「「……」」

マミューラのプレッシャーの中、お婆さんは笑い、さらに警戒を強めるマミューラ達。


後ろにいた大成は、スタスタと歩き、マミューラ達の前で止まり、右手を横に出してマミューラとローケンスを止めた。


「もう、少し周りに気を配って欲しいよ、マルコシアス」

大成は、服を叩き埃を払いながら苦笑いの表情を浮かべて、お婆さんの姿をしたマルコシアスに注意を促した。


「「えっ!?」」

「「はあ!?」」

ジャンヌ達は、あまりのことに驚愕し、少しの間呆然とした。


「すまない、娘に見本を見せていたからな」

大成に注意されたので、マルコシアスは頭を下げ、素直に謝った。


「う、嘘…大成。このお婆さんが、マルコシアスって本当なの?だって…」

「背中の翼を見たら、わかるよ」

大成は説明し、マルコシアスは笑みを浮かべながら後ろに振り向き翼を見せた。


その翼は、大きく闇を思わせるほど漆黒の翼で見覚えがあった。

「「あっ!」」

ジャンヌ達が、気付いた時だった。


再び空から魔力感知した大成は、空を見上げた。

(あっ、そう言えば…)

大成は、マルコシアスの会話を思い出した瞬間、今度は少女が上空から急降下してきて、第2波が襲いかかったのだった。



「「えっ!?きゃ」」

「くっ」

「チィ」

驚いたジャンヌとウルミラは、さっきと同じ体勢をとり、ローケンスとマミューラはマルコシアスの娘だとわかったので、今度は右腕を口元に当てた。


「おいおい…」

再び、大成は何もせず呟き、砂埃に飲まれた。



「お母さん!私もできたよ!」

砂埃が舞っている中、まだ幼い少女の嬉しそうな声が響いた。


「ウィンド」

右手を手を伸ばしたウルミラは、風魔法ウィンドを唱え、自身を中心に少し強めの風を渦状に発生させて、砂埃を吹き飛ばした。


お婆さんの姿をしたマルコシアスの隣に、7才ぐらいの幼い少女がいた。

少女は、髪色は茶色、髪型がポニーテール、目はつり目で、少しお転婆な感じの明るい雰囲気を出していた。


「フフフ…。よしよし、完璧だったぞ。流石、私の娘だ。だが、私も過ちを起こしたが、今度からは人が居るかを確認し、居た場合はゆっくりと舞い降りるのだぞ」

「はい、わかりました」

母親に頭を撫でられ、マルコシアスの娘は笑顔で返事をした。



「ふっ、ところで大成よ。魔王主任、おめでとう。それに、久しぶりだな。ローケンス坊やにマミューラ嬢ちゃん。それで、私に用があって来たのだろう?」

懐かしい眼差しでマルコシアスは、大成とローケンス、マミューラを見つめた。


「「お久しぶりです」」

ローケンスとマミューラの2人は、その場で片膝を地面につき、マルコシアスに敬礼をする。


「ありがとう」

最後にマルコシアスから祝を言われ、大成は苦笑いしながら頭を掻いた。


「あっ、修羅様だ!こんにちわ!」

マルコシアスの娘は、笑顔で大成に駆けつけて飛びき抱きついた。


「ぐぉ、こ、こんにちわ」

マルコシアスの娘は、特に身体強化はしていないが、子供とはいえ神獣なので体を纏っている魔力が高かったため、大成は「く」の字になった。


「あっ、ごめんなさい。修羅様…私、嬉しかったから…」

笑顔から一転、マルコシアスの娘は泣きそうになる。


「い、いや、自分も油断していたから、気にしないで。ところで、えっと…今更で失礼だけど、お名前は?」

泣かれるのは苦手な大成は、どうしようと思った瞬間、名前を聞いてなかったので尋ねた。


「まだ、ないの」

「え!?」

「我ら神獣は、他とは関係を持たぬ。だから、周囲からはマルコシアスと呼ばれるだけだ。それに、親子関係は母と娘で済むからな。名前は必要ない。だが、良い機会だ、大成よ。お前が、我が娘に名前をつけてくれぬか?」

驚いている大成に、マルコシアスは頼んだ。


「ああ、なるほど…。って、僕が!?こんな大切なことを…」

大成は頷きながら納得していだが、思いもよらないことに動揺した。


「そうだ」

「お願いします、修羅様」

「はぁ、わかったよ…。気に入らなかったら、気軽に言って欲しい」

嬉しそうな表情のマルコシアスの娘に頼まれ、大成は断ることができずに渋々承諾した。


「ああ。良かったな娘よ」

「うん!」


(こういうのは、普通は親が決めるのだが…。断れない雰囲気で引き受けてしまったし、仕方ないか…)

「ぅ~ん…。サリアとかは、どうかな?」

「「サリア…」」

「どうだ?娘よ」

「ありがとう。修羅様」

「感謝する」

笑顔でサリアは感謝し、娘の笑顔を見てマルコシアスも感謝した。


「気に入ってくれて良かった。それで、サリア。僕は、サリアのお母さんと大事なお話があるから、話が終わるまで後ろにいるお姉ちゃん達と、一緒に遊んでいて欲しいのだけど」

大成は、優しくサリアの頭を撫でて頼んだ。


「うん!その代わり、あとで修羅様も遊ぼうね」

「わかった」

サリアは、ジャンヌとウルミラの元へ走った。


「はぁ、仕方ないわね」

ジャンヌは溜め息していたが、その表情は穏やかに笑っていた。


「はい、わかりました。サリアちゃん、何して遊びます?」

「おままごと!!お姉ちゃん達、こっち、こっちだよ」

サリアは、ジャンヌとウルミラの手をとり、森の奥へと走って行く。


大成達は、3人が森の中へ入って行くのを見送った。




「で、話しとは何だ?」

表情を変え、真剣な表情でマルコシアスは、大成に尋ねた。


「近日中に、人間達が攻めてくる」

「それは、誠か?」

マルコシアスは、鋭い眼光で大成を見抜いた。


「ああ…。わかりやすく、初めから話そう」

大成も真面目な表情に変わり、今までの経緯を説明をした。



「なるほどな。で、私にも、その戦に参加して欲しいと?」

なぜ、大成達が何の用件で訪れたがを、マルコシアスは聞く前にわかったので尋ねた。


「そうだ」

「「どうか、お願いします」」

大成は堂々と頷き、ローケンスのマミューラは深々とお辞儀をした。


「……。すまぬ。娘を助けて貰った恩を返したいが無理だ。まだ、娘の教育が終わっていない…」

申し訳なさそうに謝るマルコシアス。


「断られるのは承知の上だったから、気にしないでくれ。ただの予想だが、これから起こる可能性を話す。マルコシアスにも聞いて貰いたい。それが、ここを訪れた理由だ」

大成は、予想したこと話した。



「おいおい、そんなことがあるのか!?大和」

「流石に、それはないと思います。修羅様」

「フム…。だが、エヴィンの時を考えれば、可能性はあるな…」

マミューラとローケンスは信じられないと思い、マルコシアスだけは可能性がある思い考え込んだ。


「まぁ、可能性があるというだけで、本当なのかは別だ。このことは、ジャンヌとウルミラには内緒だ。ローケンスは帰宅後、このことをシリーダとニールに伝えてくれ」

「了解!」

ローケンスは、敬礼をした。

こうして、大成達は屋敷に戻ることにした。




【人間の国・バルビスタ国・バルビスタ城】


人間の国はというと…。

流星とメルサが、魔人の国から帰国した後、王様に報告しに向かった。




【国王室】


国王室に入室すると、国王とその妃が椅子に座っていた。


「お父様、お母様。ただいま戻りました」

メルサと流星は、国王の前で敬礼をした。


「お帰りなさい、メルサ。無事で良かったわ」

「おお、メルサよ。心配しておったぞ。それで、魔王は誰に決まったのだ?やはり、先代の魔王と互角に渡り合ったエヴィンか?」

妃は笑顔で、国王は髭を触りながら尋ねた。


「それが、ラーバス代表の魔王修羅という名前で出場した人間の子供が、魔王になりました」

「それは、誠なのか!?勇者よ」

「誠です、国王様。魔王修羅は、俺以外の他の者では、太刀打ちできないかもしれません」

「それほどの者なのか!?」

流星の話を聞いた国王は、驚愕する。


「はい」

「お父様、私もそう思ったほどです」

流星は頷き、メルサも肯定した。


「わかった。では、早速…」

「お待ち頂きたい!」

国王は流星に依頼しようとした時、ドアが勢いよく開いた。

部屋にいる皆は、開いたドアに注目した。


開いたドアの前に、杖を持った緑色のロングヘアーの30代女性、魔法部隊隊長カナリーダがいた。


「おっ!カナリーダ。戻っておったか」

「ハッ。つい先程、帰国致しました。申し訳ありません。話を行為に立ち聞きした訳ではなく。たまたま近くを通っていましたら、聞こえてきましたので。そして、その件、もし宜しければ、私の隊に任せて頂けないでしょうか?」

カナリーダは部屋に入り、流星の隣で片膝をつき敬礼をした。


「だが…」

「私の隊の戦力は、決して勇者に引けを取りません。その自負があります。どうか、この私の隊に任せて頂けないでしょうか」

言い淀む国王に、カナリーダは説得を試みる。


「うむ…」

悩んだ国王は、困った表情でチラッと流星を見た。


「俺は構わないが、条件が2つある」

表情変えず、流星は提案した。


「何だ?」

カナリーダは、訝しげな表情で流星を睨み付ける。


「そう身構えるな。大したことのない条件だ。1つは、俺が言った日に出陣すること。もう1つは、俺と俺の弟子ツカサを同伴させて欲しい。無論、そちらがピンチに陥った場合だけ、手を出させて貰う。第一、俺が行かなければ魔王修羅は誰なのか知らないだろ?」


(まぁ、魔人の国には、俺が手配したスパイを潜り込ませているから、そいつらから教えて貰えば解決するがな。まぁ、今回の標的は大成だから。あいつは、俺の予想を超える可能性が高い。俺が直接、出向いた方が良いな)

流星は、条件を出し説明した。


「……。1つ聞く、なぜお前が指示した日に出陣せねば駄目なのだ?」

カナリーダは、一番気になったことを流星に尋ねた。


「魔王修羅は、3年前、俺が魔王の妃と幹部ヘルレウスのナンバー2のウルシアの2人を封印した。その封印を、1ヶ月以内に解除するはずだ。封印を解除すれば、俺は感知することができる。そして、解除した魔王修羅は、魔力がほぼ消費するだろう。その時を教えてやるから狙え」


「おい!馬鹿にしているのか!そんなことをせずとも、現在ヘルレウスがほぼ壊滅状態。しかも、先代の魔王がいない魔人の国など恐れるに足らぬ。私の隊だけでも、十分支配できる。私の隊の強さを信用してないのか?それに、第一なぜ封印を解除するとわかる?」

カナリーダは、ギロリっと隣に敬礼している流星を睨み付けた。


「先に言ってとくが、お前など信用も期待もしてないし、興味もない。はっきり言って、死のうがどうなろうが知らん。だが、自国が負けるのだけは我慢ならん。だから、少しでも勝利の可能性を上げるのは当たり前だろ。それとだ、封印解除の件は約1ヶ月以内に封印解除せねば、2人の命が尽きるからだ。それで、どうする?カナリーダ」

流星は、顔だけカナリーダに向け、顔を見て淡々と説明した。


「貴様!言ってくれるじゃないか。……フン。お前の思惑通りに動くのは嫌だが、今回は仕方がない。腹立つが、その条件を呑もう」

殺気と威圧感を出したカナリーダは、国王の前ということを思い出し、すぐに抑えた。


「そ、そうか…。では、今回の件はカナリーダに任せる。それで、良いか?勇者よ」

ホッと胸を撫で下ろした国王。


流星は殺気も威圧感も出してはいなかったが、カナリーダは興奮し、殺気と威圧感を出していた間は、一般人と大して変わらない国王と妃には、心身共にキツかった。

だが、無事に話が纏まったことで、カナリーダのプレッシャーが消えてホッとしたのだった。


「構いません」

「ふむ、ではカナリーダよ。お主の活躍を期待するぞ」

「ハッ」

流星とカナリーダは敬礼したまま頭を下げ、部屋から退出した。


「私も行くわ」

メルサは、駆け足で流星の後を追った。


こうして、流星とメルサは、ツカサに説明をしに、ツカサの部屋へと向かった。




【バルビスタ城・廊下】


「ねぇ、流星。1つ聞きたいのだけど。なぜ、すぐに攻めないの?おそらく、今なら大成君は衰弱しているわよ。やはり、可愛い弟だから?」

メルサは流星の腕を組み、流星の顔を覗き見るように見た。


「いや、関係ない。ただ、この世界では予想外なことが簡単に起きる。例えばムーン・ハーブやエリクなどがあるだろう?」

「あっ!」

流星が例えを出したことでメルサは気付き、空いている片方の手を口元に当てた。


「気付いたみたいだな。それなどを使用すれば、一瞬で万全な状態になることが可能だ。宣戦布告され、持っていたとしたら普通は使用するだろう。可能性は低いが、2つ以上所持をしていた場合は仕方ない。だが、どれも稀少な品だ。そんなにホイホイあるものではない」


「そうね」

納得したメルサは頷く。


「それとだ、メルサ。わかっているとは思うが…」

「ええ、わかっているわ。奈々子には、大成君のことは秘密にしてくれでしょう?」

「フッ。流石、メルサ。俺の女だな」

「褒めてくれて、嬉しいわ」

メルサは、笑顔で流星の腕に体を密着させた。




【ツカサの部屋】


2人はツカサの部屋を訪れたのだが、部屋には奈々子もいたので、2人に説明をした。


「それで、私だけカナリーダさんの隊と一緒に魔人の国を攻めるのですね…」

「ツカサちゃん…」

奈々子は、恐怖で怯えているツカサの手を、両手で優しく包むように重ね、ツカサを心配をした。


「正確に言えば、ツカサはカナリーダ達がピンチに陥った場合のみ、戦いに参加することになっている。だが、心配することない。戦いに参加することになった場合は、ツカサは遠くからアレを使用して貰うだけだ。相手に近付くことはない。それに、俺も同行するから心配するな」

流星は、楽しそうな表情で話した。


「流星さんも来てくれるのですか!?」

「ああ、魔王修羅は、誰なのかを教えないといけないからな」

「なら、私も同行するわ」

「あっ、では私も同行しても良いですか?」

メルサと奈々子の2人は、手を挙げた。


「すまない。メルサは良いが、今回、奈々子は駄目だ。奈々子が動けば、あいつらも来てしまうからな」

「そうですね…。わかりました…」

流星に断れた奈々子は、落ち込み、溜め息をした。


あいつらとは、マルイ達のことだった。

グランベルク達を討伐し、帰国した日にマルイ達が奈々子親衛隊を作り、慈愛の女神と称えている。


その日から、奈々子が行くところ親衛隊ありと言われるほど付きまとっていた。


嫌がらせではなく、好意による行動とわかっているので、奈々子は年上のマルイ達に断ることができなかった。



「ツカサちゃん、ごめんね」

「気持ちだけでも嬉しいよ。ありがとう奈々子。そういえば、流星さん。アレって…まさか…」

「ああ。そうだ、ツカサ。その、まさかさ。試すには、ちょうど良い機会だろ?」

悪巧みな表情になった流星は、口元をつり上げ笑みを浮かべた。




【魔人の国・ラーバス国・屋敷・集いの間】


大成は、作戦会議するために、極秘にヘルレウスメンバーと信頼しているマキネなどを集いの間に呼び集めた。


「あなたが、あのデビル・ソレイユの頭主マミューラですの?」

「ああ、そうだが」

「先に、お礼を言うわ。参加してくれて、ありがとうですわ」

「私も感謝します。あなた様が居れば鬼に金棒です」

シリーダとニールは、マミューラに誠意を込めてお辞儀をする。


「フン、気にするな。私用もあるからな。ついでだ」

手を振りながら、雑に答えるマミューラだったが、照れて少し顔が赤くなっていた。


「それより、修羅様。どんな作戦を実行しますか?」

各隊が考えた作戦をニールが、紙にまとめて記載し、大成に渡していた。


「そうだな…」

大成は、作戦を記載されている紙を眺め、その紙を机に置いて立ち上がる。


「大成?」

「大成さん?」

「ダーリン?」

何となく疑問に思ったジャンヌ、ウルミラ、マキネは、声をかけた。

他の皆も大成の行動を注目した。


大成は、壁沿いを歩き立ち止まった。

「ジャンヌ、すまない」

突然、大成は謝罪しながら両手で壁を貫通させ、部屋に轟音が響く。


「ちょっ、大成!?」

ジャンヌは両手を口元に当て驚愕し、他の皆も唖然とした。


「やはりな」

「ぐぁ」

「いてぇ」

大成は、呟きながら両手を引いた瞬間、男達の悲鳴が聞こえた。


無理やり大成から、首元を捕まれ引っ張られた騎士団の2人は、倒れながら部屋に押し込まれた。


「ワキルにタキス!?どうして、お前達が?」

驚きながらローケンスは、2人の名前を言った。


「この2人は、裏切り者だ」

「「!!」」

平然と答えた大成に、皆は驚愕すると共に2人を警戒をする。


「私達が、裏切る訳がありません」

「そうです。皆様、私達が裏切り者だという証拠がないです。私達は、たまたまここを通り掛かっただけです。信じて下さい」

ワキルとタキスは、慌てながら必死に説得するが、ジャンヌ達は一向に警戒を緩めなかった。


なぜなら、集いの間の場所は屋敷の奥にあり、集いの間に繋がっている通路は、幹部や魔王が認めた者以外は、立ち入り禁止になっているのだった。


「お前達、ここの通路は立ち入り禁止だ。それに、魔王を決める大会の時、皆で勇者を包囲していたが、俺が戦っている最中、お前達2人は勇者と何かを話して、逃がしていたよな」

ワキルとタキスは、大成の説明を歯を食い縛りながら聞いた。


「「糞~っ!!」」

覚悟を決めたワキルとタキスは、腰に掛けていた剣を抜刀し、大成に襲い掛かる。


「させないよ」

シリーダの隣にいたマキネは、腰に掛けているポシェットから、手裏剣を取り出し、左右手に手裏剣を4本ずつ指に挟み投擲した。


手裏剣は、ワキルとタキスの両手首、両太股に刺さり、バチバチと電流が迸った。


「流石、マキネ」

「エヘヘ…」

大成に褒められてマキネは笑顔を浮かべた。


「「ぐっ」」

2人は感電して剣を落とし、身体は痺れ上手く動かせなくなったが、意地で大成に飛び掛かる。


「ふん」

大成は無表情のまま、飛び掛かってきた2人の首を鷲掴みした。


「ぐっ、だが、」

「こ、これで、終わりだ。魔王修羅!」

ワキルとタキスは、首を絞められている大成の手を両手で握った。


「ん?」

大成は、異変に気付いた。


ワキルとタキスの2人は、大成の手を外すためではなく、動きを封じるためだった。


「に、逃がすなよ!アース・ロック」

「む、勿論だ!アイス・ロック」

ワキルは土魔法アース・ロックを、タキスは氷魔法アイス・ロックを唱え発動した。


大成の左右の手は、肘から手先まで土と氷に覆われていき、動かせなくなった。


「何がしたいんだ?お前達も身動き出来ないだろ?」

訝しげな表情で大成は2人に尋ねる。


「た、確かにな…うっ…」

「だが、しゅ、修羅…。お前は確実に死ぬ…。くっ…」

「「セアー・フェロー・トラベラー」」

ワキルとタキスは、歯を食い縛りながら、呪文を叫ぶように唱えた瞬間、2人の体に紅い魔法陣が浮かび上がった。


「あ、あれは!?ま、まさか!」

「自爆魔法陣だ!修羅様!その2人から、早く離れて下さい。皆も離れろ!」

ニールは驚き、ローケンスが退避するよう叫ぶ。


自爆魔法陣とは、死んでも発動するが、生きていた状態で発動しても確実に死ぬ魔法陣なのだ。

魔法陣の発動を防ぐには、光魔法で解除するか、もしくは身体を跡形もなく消したり、複数に斬り捨てるかだ。



「大成、逃げて!」

「大成さん、離れて!」

「ダーリン!」

「「修羅様!」」

皆は大きな声を出した。


今の大成は、2人に両手を握られ、土と氷の拘束もされ塞がれており、逃げることも村雨で斬り捨てることも出来ない状態だった。


浮かび上がった魔法陣は、外側から紅く光輝いていく。

「み、道連れだ。魔王修羅」

「流石のお前も、の、逃れることはできまい」

苦しい表情でワキルとタキスは笑った。


「残念だったが、死ぬのはお前達だけだ」

「つ、強がっても無駄だ…。俺達を殺しても、は、発動するのだぞ…」

「そ、そうだ。それに…こ、この状態で村雨を使っても…魔法陣は止められないぞ…」

大成の言葉を聞いた2人は信じられなかったが、大成ならできるかもと思い、自分達に言い聞かせるように説明をした。


「じゃ、あの世で確認しろ、魔力発勁」

魔法陣が紅く光輝く寸前に、大成は両手で掴まえている2人に魔力を流した。


「な、何だ!?か、体が…ぐぉぉ」

「ふ、膨らむ…く、苦しい…」

2人は、大成の魔力に耐えきれず、体がボコボコと膨れ上がり、そして破裂した。

破裂したことにより、肉体は粉々になり魔法陣が不発になり消滅した。



「ま、まるで、あの時の勇者と同じぐらいの威力だわ…」

「そうですね…」

「だね」

魔王大会の後に、町中で流星が使った魔力発勁と比べたジャンヌが呟き、ウルミラとマキネは肯定した。


「流石、修羅様だ」

「そうね」

「はい」

「おいおい、何だ今のは…」

ローケンスは褒め、シリーダとニールは肯定したが、マミューラは初めて見る技に驚いていた。


「すまないが、そのまま会議を続ける。皆が気になっている作戦だが、俺も先陣を切る予定だ」

大成は返り血を浴びたまま、作戦を皆に説明する。

作戦を聞いたジャンヌ達は驚愕した。


「ちょ、ちょっと、大成…」

「俺が隠れていた場合、相手は捜すだろう。それにより、相手の戦力が拡散もでき、撃退がしやすくなる。だが、拡散するということは、民にも被害が出る可能性が高まるということだ。俺は、民あっての国だと思っている。だから、民の被害を減らすため、俺も戦うことにした。作戦変更についての異論は認めない。そして、封印解除は明日の明朝だ」

大成は手を前に出し、話をしようとしたジャンヌの掛け声に話を被せ中断して、強引に決定した。


「あと最後に、マキネをヘルレウスに加える。異論ある者はいるか?」

「「え!?」」

「へ!?私がヘルレウスに…」

ジャンヌとウルミラは驚き、マキネ本人も予想外なことで戸惑い呟いた。


だが、ローケンス達は、いつかこうなることは想像していた。


「いえ、特にありません。俺は、屋敷で練習を見ていましたので、前から実力を認めており、いつヘルレウスに加わっても問題ないと思ってました」

「私も、良いと思います」

「マキネ殿なら、ヘルレウスとして、やっていけると思います」

ローケンスは頷きながら話し、シリーダとニールは笑顔で賛同した。


「誰も異論はないな?では、マキネをヘルレウスとして迎え入れる。ナンバーは、ウルミラの下のナンバー5だ」

「おめでとうマキネ」

「おめでとうございますマキネさん」

我に返ったジャンヌとウルミラは祝って拍手をし、ローケンス達も拍手を始めた。


「ありがとう。ダーリンじゃあなく、ありがとうございます。修羅様」

拍手が響く中、歓喜極まったマキネは、涙を流しながら大成に抱きついた。


「いや、いつも通りで構わない」

「ダーリン、大好き!」

マキネは、唇を大成の唇に重ねた。


「ちょっ、マキネ。何、どさくさに紛れて、キスしているの!大成も大成で、何顔を赤く染めているのよ」

「あっ、マキネさん。羨ま…いえ、抜け駆けは、ダメです!大成さんも大成さんです!」

ジャンヌとウルミラは、魔力と威圧感を出し、武器を取り出して、大成とマキネに攻撃した。


「な、何でこうなるんだ~」

攻撃されると感じた大成は、無意識にマキネをお姫様抱っこして、破壊した壁から逃げた。


今さっきまで大成達がいた場所は、大成が避けたことで、ジャンヌの双剣の片方と、ウルミラの矛が地面に当たり凹んだ。


「あの、ジャンヌ様、ウルミラ様落ちつ…」

「「あっ!!」」

大成がマキネをお姫様抱っこしたので、さらに激怒して殺気だった。


「何か、危険な気配がする…」

嫌な予感がした大成は、マキネを抱いたまま逃げた。


「た・い・せ・い!!」

「大成さん!!」

魔力が高まったジャンヌとウルミラ。


「ファイア・アロー」

「アイス・ミサイル」

2人の周囲には、メラメラと魔力が陽炎のように揺らいだ。

ジャンヌは炎の矢、ウルミラは氷の矢を放った。


「うぉ、2人とも落ち着いて、ほ、本当に死ぬって…」

魔力を感じた大成は、2人を説得するために振り向いた瞬間、炎の矢と氷の矢が頬を掠めた。


「……。」

大成は、恐る恐る後ろを振り返った。


大成達に当たらなかった矢は、後ろの壁に当たり、轟音が響いた。

炎の矢は壁を溶かし穴をあけ、氷の矢は壁に穴をあけた後、周りが凍りついた。


「~っ!」

我に返った大成は、すぐに走って逃げる。


「何だか、駆け落ちみたいだね。ダーリン!」

「ちょっと、ねぇ、マキネさん。この状況を楽しんでいませんか!?下手したら僕達、ここで命を落としますよ」

危機的な状況に立たされている大成とマキネ。


マキネは嬉しそうに笑顔で大成を力強く抱きしめ、大成は必死な形相で逃げた。


「大成!待ちなさい!」

「お仕置きです!大成さん」

ジャンヌとウルミラは、大成達を追いかける。

こうして、ヘルレウスに新たな戦力が加わったのだ。

次回、やっと封印解除と、出来れば戦闘が始まるところまで書きたいです。


投稿が遅れ申し訳ありません。

寝込んでいた分、仕事が遅れており、残業の日々を送っています。


御覧下さった皆様に、ご迷惑をお掛けし、大変、申し訳ありません。

次回も、もし宜しければ、御覧下さい。


それでは、失礼します。

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