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大成とマルコシアス

マルコシアスと戦っていたマーケンス達を助けに入った大成。

【合宿2日目の朝・ナドムの森・奥・守り神の領域】


「大和…」

「し、師匠…」

「「大和君…」」

大成が助けに来てくれたことにより、安心したマーケンス達は緊張が解け、身体中の力が抜けてへたり込んだ。


「ありがとう、大和。ところで…なぜここにいるんだ?ここは立ち入り禁止の場所だぞ。いや、それより俺達を置いて逃げろ。マルコシアスは、化け物だ。流石の大和でも、魔力値2のお前じゃ勝てない。だから…。えっ!?その髪の毛の色は…。まさか…」

マーケンスは、大成が助けにきてくれたことに感謝したが、相手は格上のことを思い出して逃げるように指示する。


しかし、すぐに大成の髪の色が、マーケンス達が知っている青一色だけでなく黒も混ざっていたことで、大成が魔王修羅だと気付いたマーケンス達。


「師匠、いえ、修羅様!?」

「うそ!?大和君が、あの修羅様!?」

「信じられないけど…。だけど、納得できるわ」

マルチス達は、大成が魔王修羅と知り驚愕した。


「やはり、流石にバレるよな。もう、俺の正体わかったなら、安心できるだろう?あと、なぜここにいるのかは…」

マーケンス達の反応を見て、大成は苦笑いしながら濡れた髪の毛をかきあげて答える。




【過去・ナドムの森・中央】


少し前、大成達は、探索している途中で雨が降りだし木の下で雨宿りしていた。


「はぁ、早く止まないかな」

大成は、空を見上げ、ポツリと呟いた。


「「そうね」」

「そうですね」

ジャンヌ達は、小さい声で肯定し頷いた。


そんな時、森の奥から大成だけでなく、ジャンヌ達にも気付くほど、とてつもない威圧感、魔力、そして殺気を感じた。


大成は、またランドニーが何か問題をしでかしたと思い、溜め息をついた。

ジャンヌ達は、冷や汗をかきながらプレッシャーがする森の奥に視線を向けた。



そして、すぐに精神干渉魔法レゾナンスで大成に連絡がきた。


「修羅様、大変申し訳ありません。ターゲットのランドニーは、未だに見つかりません。ですが、このプレッシャーの原因がわかりました。ローケンス様の息子であるマーケンス様のパーティーが、森の守り神マルコシアスと交戦しています。戦局は、非常に不味い状態になってます。私も参戦しましょうか?」

ダビルドが、大成に報告をした。


朝、大成が保険としてレゾナンスで連絡をとっていた相手は、ダビルドだった。



「いえ、ダビルドさんもわかっているはずです。森の守り神マルコシアスの前だと、流石のダビルドさんでも手に負えないと…。ダビルドさんは、引き続きランドニーを探してください。おそらくですが、マルコシアスを前にして恐怖で逃げたはずなので近くにいると思います。マーケンスの方は、僕が今すぐ向かいますので」


「了解です。御武運を」

ダビルドがレゾナンスを解除した。



「何かあったのよね?大成」

「どうかされましたか?大成さん」

「ねぇ、大成君。まさか、マーケンスが何かやらかしたの?」

大成が厳しい表情に変わったので、すぐに気付いたジャンヌ達。



「あとで、説明をする。今は、一刻を争う事態だ。すまないが、俺は先に行く。全力を出すから腹に力を入れてくれ」

言いながら、大成は全力で身体強化をした。


ジャンヌ達は、大成の魔力のプレッシャーで息を詰まらせそうになり、重力が強まった感じがするほど体が重くなった。


大成は気にせず、近くの木を駆け登り、そこから上に高くジャンプをした。


「グリモア・ブック、エア・インパクト」

空中でグリモアを出して両手を前に出し、風魔法エア・インパクトを唱え発動した。


両手に空気を圧縮したサッカーボールぐらいの大きさの球体を2つ作りだし、体を回転させ左右の足で踏みつけた。


踏みつけた瞬間、球体は破裂し突風が発生した。

大成は突風を利用し、マルコシアスのプレッシャーがする方へと弾丸みたい飛んでいった。


「「きゃっ」」

突風の余波で、雨雲を払いのけ、下に生えている木は弓の弦みないに反り、下にいるジャンヌ達も吹っ飛ばされそうになるほどだった。




空を弾丸のように飛んでいる大成は、マーケンス達の前に立ちはだかるマルコシアスを見つけた。


「あそこか、このままだと届かないな。エア・インパクト」

届かないと判断し、再びエア・インパクトを唱え発動して、距離と方向を修正した。



なぜかマルコシアスは、すぐにマーケンス達を攻撃をしないで固まっていたが、とうと前足が動いた。


「間に合え~!」

大成は回転し、そのまま勢いのついた右足で、大成に気付き振り向こうとしたマルコシアスを蹴り飛ばした。


大成がマルコシアスを蹴り飛ばした時、ダンプトラックがぶつかる音がし、蹴り飛ばされたマルコシアスは、地面をえぐりながら木を薙ぎ倒し約20mぐらいのところまで飛ばされた。

そのあと、ワンテンポ遅れて砂埃が舞ったのだ。




【ナドムの森・奥・守り神の領域】


マーケンス達に説明を粗方した大成は、マーケンス達の斜め後ろにロープで捕獲されている血塗れのマルコシアスの子供に気付いた。


「ところで、これをしたのはお前らか?」

大成は、言葉使いが変わり目を見開き、威圧感を増してマーケンス達に尋ねた。


「「~っ!」」

マーケンス達は、身体中から冷や汗をかき震えた。

大成は近づいてくる。

必死に何か言葉を出そうとしたが、大成の圧倒的なプレッシャーを受けて上手く声すらでなかった。


大成は、マーケンス達を無視して横を通りすぎ、マルコシアスの子供のところに向かい、ロープを外して抱き抱えながら脈をみた。



「良かった。まだ、生きているな。これなら、どうにか助かる。ヒーリング・オール」

息があることに気付いた大成はホッとし、光魔法ヒーリング・オールを唱え発動した。

マルコシアスの子供が緑色の光に包まれていく。


呼吸があっても、かなりの重症だったので回復魔法の最上級ヒーリング・オールを選択したのだ。


ヒーリング・オールは、ただ膨大な魔力消費だけでなく、緻密な魔力コントロールも必要なので、完全に治るまでは間近で診ていないといけない。



そんな時だった。

「ガァァ!」

マルコシアスの親は、いつの間にかに大成の背後におり、右前足で大成を攻撃した。


「待て!マルコシアス」

大成は気付いていたので、体を横に反らして回避した。


「落ち着け!」

しかし、マルコシアスは止まりそうになかったので、仕方なく左足で蹴りを入れた。


大成は、蹴った感触でわかった。

分厚いタイヤを蹴った感触がして、ダメージを与えていないことに気付いた。


最初の一撃は、不意打ちで、しかも勢いがついていたからダメージを与えれたのだ。



(どうする?治療を中断するか?いや、中断したら死ぬかもしれない…。その前に、ここで争うとマーケンス達にも被害が出てしまう)

大成は、いろいろ考えて森の奥に向かった。



大成の異常な強さを感じたマルコシアスは、逆に我が子に何かされていると思い魔法を阻止しようとして、大成を追いかけながら左右の前足で連撃をする。


「くっ」

大成の両手には、マルコシアスの子供を抱えており、使えなかった。

なので、後ろに下がったり、しゃがんだり、左右に体を反らし、回避する大成。

しかし、次第に追い込まれていく。


如何に魔力全開で身体強化をしても、相手も同じぐらいの相手なので、不利なのは変わらない。

しかも、常にマルコシアスの子供に緻密な魔力コントロールを維持しないといけなかった。


唯一、大成の方が身体強化の魔力コントロールで勝っていたので、辛うじて凌げていたに過ぎなかった。


「ガァァ!」

「チッ」

舌打ちしながら後ろにジャンプし、後ろにある木を蹴り方向を変えて避けた。

マルコシアスの前足が木に当たり、触れた木勿論、離れていた木々もプリンのように何の抵抗もなく伐られる。



「ガァァ!!」

マルコシアスは、雄叫びをあげ、周囲に風が集中して荒れまくり、あっという間に巨大な竜巻を8つ発生させた。


「おいおい、マジかよ…」

「ガァァ!」

これは、流石にヤバイと大成は思った瞬間、マルコシアスの雄叫びと共に8つの竜巻が生き物ように動いて大成を襲う。



大成は、木から木に飛び移りながら回避する。

竜巻は木や大地をえぐり、それでも勢いは止まらず、次々と大成に襲いかかる。


「手加減しろよ。如何にマルコシアスが風への絶対耐性があっても、まだ子供だぞ!」

ヤケクソに叫ぶ大成は、必死に回避しながら本の内容を思い出していた。


合宿前にマルコシアスの特質も調べていたのだ。

マルコシアスは、指定ランク5の魔物の中で数少ない神獣の部類で、風の絶対耐性を持っている。


神獣とは、下手したらヘルレウスより強く、手に負えないレベルの魔物のことだ。

要するにディザスター(天災)なのだ。


あと、絶対耐性とは、その属性の魔法ならダメージを受けないことや状態異常にかからないというチート能力だ。


そして、大成が本気で討伐しようとしない理由は、本に挟まれていたメモ紙に手書きでこう書かれていた。


マルコシアスは我が親友でもあり、血が繋がってなくても家族なのだ。

もし、森で何かあれば、マルコシアスを助け欲しい。


魔王より




メモ紙を見た大成は、魔王を引き継いだ自分が引き継ぐと決意していたのだ。

そして、目の前には荒れ狂うマルコシアスがいる。


大成は動きを読まれ始め、次第に掠り傷が増えていく。


(このままじゃ、長く持たないな。下手したら俺が死にそうだ…。仕方ない賭けに出るか。すまないが、我慢してくれよ)

大成は、マルコシアスの子供を心配し、今度は木から木に飛び移らず、地面に降り、ヒーリング・オール分の魔力を残し、残りの魔力を片足に集中させ地面を蹴り飛ばした。


地面には大成の足跡が深く、くっきりと残るほどだ。


マルコシアスは、大成の速さを目の当たりにして目を見開いた。

竜巻は、大成の速さについていけず、大成が通りすぎた場所に次々と激突として地面をえぐった。



一瞬でマルコシアスの前まで移動した大成は、そのままの勢いで右足で蹴り飛ばした。


「ガァ…」

マルコシアスは部分強化をして防いだが、威力に押され後ろにズリ下がりダメージを受けた。


大成は止まらず、ズリ下がったマルコシアスの背後に回り、左足で背中を蹴った。

だが、今度は加速力が足らず、ダメージを与えることができなかった。


「これなら、どうだ?魔力発勁」

いつも大成は手で発勁をしていたが、今は両手が使えないので左足で発勁をした。


「なっ!?」

「ガァァ」

大成は、驚愕した。

左足が触れているマルコシアスの背中から魔力が放出して、お互いの魔力が衝突し爆発した。



爆発で踏ん張ることができたマルコシアスは少しズリ下がっただけで終わったが、大成は足で発勁したことが災いし、片足だけでは踏ん張ることができず、地面を転がりながら吹っ飛んだ。


「くっそ」

大成は、マルコシアスの子供を落とさないように体を丸め、抱き締めたまま、受け身を取れず転がった。


「くっ」

起き上がった大成の目の前には、マルコシアスが立っていた。


(ここまでか…)

大成は覚悟し動かず、マルコシアスをただ見つめた。

だが、マルコシアスからは、先ほどまで迸っていたプレッシャーが完全に消えていた。


「お前は何者だ?」

突如、精神干渉魔法レゾナンスで、マルコシアスから声をかけられ、驚いた大成だったが、すぐに落ち着き冷静になった。


「俺は神崎大成。人間だけどラーバスの魔王になった。今は、魔王修羅と呼ばれている」


「ほう。噂で聞いていたが、本当に人間の年端も行かぬ小僧だな。だが…。しかし、恐ろしいほどの強さを秘めており、優しさも備わっておるようだな」

マルコシアスは、瞳を細めて大成に抱かれている我が子に目を向けた。


攻撃をやめて話しかけたのは、転がりながらでも我が子を大切に庇っていた姿を見たからだった。


「ああ、心配しなくっていい。ちゃんと、この子は、あんたに返すよ。もう少ししたら、元気になる。今まで、ヒーリング・オールをかけ続けていたからな」

「ギャ~!」

大成は説明していたら、マルコシアスの子供が目を開き、元気に鳴き声をあげた。

大成は笑顔で、マルコシアスの子供を地面にそっと下ろした。


マルコシアスの子供は、鳴き声をあげながら目を細めて親に擦り寄り、親のマルコシアスも嬉しそうに顔で子供の体を撫でた。

次回、ランドニーにキレる大成です。

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