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同盟とユピア

ラゴゥバルサを滅ぼした大成。

【ラゴゥバルサ城】


大成達が朝日を眺めていた。


「修羅様!何処に居られますか?」

騎士団長ギランの声と大勢が階段を駆け上る足音が城中に響いた。

徐々に足音が近づき、大きくなる。


「ハァ~。良い雰囲気が台無しだな」

大成は、ヤレヤレと思いながら扉の方へ視線を向けた。


「そうですね。ギランさんは、空気が読めない人ですから仕方ないです」

「そうね。仕方ないわよ。ギランだから」

苦笑いしながらウルミラとジャンヌは肯定した。

マキネとイシリアは苦笑いした。



「こ、ここに居られましたか修羅様!ご無事で何よりです」

「「修羅様!」」

噂していた本人ギランと騎士団が、続々と入ってきて敬礼をした。


「挨拶はいい。それよりも、大きな墓標を作り死体を片付けろ。話はそれからだ」

「「了解!」」

溜め息をつきながら大成は騎士団に命令をした。

ギラン達は、嵐のように立ち去った。



「で、ローケンスさん達は、いつまでそこに隠れているおつもりですか?」

大成は、部屋の隅に視線を送った。


ローケンス達は、ギラン達が来る少し前に到着しており、大成達を気使って気配を薄めていたローケンス、シリーダ、ニールの3人。


「流石、修羅様。お気付きになられていたとは。俺達は、何を致しましょうか?」

ローケンス達は敬礼した。


「ふっ。流石、ローケンスさん達だ。それじゃ、この付近の国へ行って貰い、ラゴゥバルサの兵士の残党狩りを頼むよ。生死は各自で任せる。騎士団が必要なら連れて行くことを許可する。そして、もう1つ大事な任務をして貰う。その任務は、助けた後でいい、同盟の話を持ち掛けてくれ、組む気があるならラーバスに来るようにと。これは、重要なことだ頼んだぞ!」

「「了解!」」

大成は右手を前に出し命令を出し、ローケンス達は了承して、その場から出て行った。



「う~。っと。それにしても、アイツら心配し過ぎだな」

腕を上げ、大成は背の伸びをした。


「心配もするわよ、大成君」

イシリアは、大成の口元に人差し指を立てて当てた。


「そうよ」

「そうです」

「流石の私も心配したよ」

ジャンヌ、ウルミラ、マキネが賛同し、大成に振り向き歩み寄る。


「ん…?」

4人の威圧感に大成はたじろぎ、後ろに1歩下がった。


「ダーリンは、殆ど魔力を使用しないし、気配消したままだし、兵士達が一斉に魔力を高めるし、ダーリンがフリーズで城を凍らせ解除した時、終ったかなっと思ったら、2人がベランダから逃げたでしょう。てっきりダーリンが重症を負って、維持できなくなったと思って、心配してここまで来たんだよ」

「「そうよ」」

「そうですよ」

後ろに下がる大成に、マキネが説明し、ジャンヌ、イシリア、ウルミラの3人はマキネに賛同した。


4人は、怒った表情で大成に歩み寄り問い詰める。


「ご、ごめん。ふ、フリーズを解除したのは、アイツらが、自力で脱出しきれなかったわけで…。に、逃がした理由は、禁術を派手に目立たせるためだったんだ…。心配させて、大変申し訳ありませんでした」

壁に追い詰められ、大成は頭を下げ謝った。


4人は、心配して怒っているが、心の中では何事もなく無事で本当に良かったと思っている。




【過去・ラゴゥバルサ国付近】


大成がラゴゥバルサの城に忍び込んだ時、ジャンヌはラーバスの秘宝・魔針盤という道具を持ってきていた。


魔針盤は、魔力を込めると魔針盤を中心に範囲内に、ある程度の魔力を発生している場所を映像で示す道具だ。

範囲は込めた魔力の大きさで決まる。



ジャンヌは、魔針盤で大成の安否を確認するために持ってきたのだが、大成は気配と魔力を消していたので映らなかった。


だが、代わりに敵の魔力が消失していったので、大体のことが知ることができた。



ジャンヌ達は、魔針盤に釘付けになっていた。


「巧く、城まで辿り着いたみたいね」

「そうですね」

魔針盤で、兵士達の魔力が次々に消失していることがわかり、城の中の状況を拡大することで、兵士達の魔力が一気に上がったことが把握できた。


「見つかったみたいわね」

「大丈夫ですかね」

「大成が、あんな兵士達に負けるはずがないわ」

「ダーリンなら大丈夫」

イシリアとウルミラは不安になったが、ジャンヌとマキネは大丈夫だと思った。



そして、魔針盤が一気に真っ白くなったので訳がわからず、ジャンヌ達は慌ててラゴゥバルサの城を肉眼で見た。


城は一瞬で氷漬けになり、少し時間が経ったら氷漬けが解除された。


「終わったみたいですわね」

「そうだな」

「そのようですな」

シリーダに肯定するローケンスとニール。

3人は、口元が笑っていた。


ジャンヌ達も騎士団も皆一斉に喜ぼうとした時、城のベランダから2人が出てきて、風魔法、エア・ブロウを使い逃げている姿が見えた。


「う、嘘…。大成…」

「大成さん!」

「ダーリン!」

「大成君!」

ジャンヌ達4人は大成が負傷した思い、心配して身体強化をして全力で大成のいる城へと向かった。




【過去・ラゴゥバルサ国・入口門付近】


4人は、大成が負けたと信じられなかったが、もし負傷していたら早く助けないとという感情に支配されていた。


向かっている途中、4人は恐怖で足が止まるほど、城から膨大な魔力を感じた。

そして、轟音とともに、巨大な白き龍が城を破壊しながら現れた。


4人は、魔王を決める大会で見たことのある白き龍を見て、安堵するとともに、心配させられ怒りが混み上がり大成の元に向かったというわけだ。




【ラゴゥバルサ城】


「まぁ、良いわ。それより大成。これから、私達はどうするの?」

「僕達はニラミスに行き、ラゴゥバルサが滅んだことを知らせるつもりだけど?ついてくる?」

ジャンヌに聞かれたので、大成は答えた。


「ふーん。ニラミスで、また女の子を誑かしていないでしょうね?」

ジャンヌは、怪しむような視線で大成を見た。


「そんなこと、するわけないだろう。しかも、またって何?」

大きな声で大成は否定した。


「「えっ!?」」

ジャンヌ達は驚いた。


「ダーリン、自覚してないんだ。天然って怖い」

「「そ、そうね」」

「そ、そうですね」

マキネに肯定するジャンヌ達は呆れた。


「何で、皆一致しているんだ!?ってか、目の前でコソコソ話すのやめて貰いたいんだけど」

ジャンヌ達は、コソコソ話をしていたので、大成は注意をする。


結局、ジャンヌ達はついていくということで、大成達はニラミスへと向かった。




【ニラミス国付近】


ニラミスへと向かっていた大成達は、途中でジェミラ達と合流した。


「ん?どうしたのですか?」

大成達は立ち止まり、大成は首を傾げながらジェミラに尋ねた。


「修羅様が、私らを救って頂いた時にラゴゥバルサに立ち向かうとお聞きましたので、微弱ながら助太刀に参りました」

戦うことが怖いのに、助太刀に来たジェミラは震えながら説明する。


「大丈夫ですよ。終わりました。わざわざ、ありがとうございます」

苦笑いながら大成は感謝した。



ジェミラは、大成の雰囲気が先程と全く違ったので、戸惑っていた。


助けて貰った時は、子供なのに凄い威圧感があり、本能で魔王と認識できた。

しかし、今、目の前の大成を見たら、普通の子供しか見えなかった。

他のニラミス国民も、そうとしか思えなかった。



戸惑っていたジェミラの後ろから、誰かが人混みを分けて近づいてくる。


「ね、言ったでしょうジェミラおじいちゃん。あの大きな白い龍は、修羅様の魔法だって」

ジェミラの後ろから現れたのは、大成が助けたユピアだった。

ユピアはジェミラの前に出てた。


「そうだな。ユピアの言う通りだったな」

ジェミラは苦笑いしながら頷き、孫・ユピアの頭を優しく撫でた。


「修羅様!ありがとう。えっとね、お礼がしたいの…」

頬を赤く染めるユピアはそわそわした。



((やはり、女の子を誑かしていたのね))

ジャンヌ達は、ジト目で大成を見る。


(あれ~!?何でこうなったんだろう?)

その視線に気付いた大成は動揺した。


「お礼はいらないよ。僕自信も、ラゴゥバルサに恨みがあったから気にしないで」

大成は必死に、これ以上問題が起きないようにしたつもりだったが…。


「ううん、助けてくれて、本当にありがとう。あの…その…」

「ん!?」

ユピアは大成に近づき、背伸びをしてキスをした。


「「あっ!」」

ユピア以外、皆は時が止まった。



ユピアは、すぐに大成から離れ、真っ赤だった顔をさらに真っ赤にした。


「ごめんなさい。お父さんがこの前、男は色を好むと言っていたから、ユピアでは迷惑?」

ユピアは、謝り悲しい表情になる。


「う、ううん。う、嬉しいよ。ありがとうユピアちゃん」

大成は慌ててお礼を言い、ジャンヌ達に視線を送ったが、ジャンヌ達は呆れた表情をしていた。


ニラミスの皆を見ると、何てことを教えているんだ!この糞親父は!という視線でユピアの父親に訴えていた。


「ハハハ…。ぐぉ…」

ユピアの父親は苦笑いをして笑っていたが、妻に横腹を肘打ちされ苦悶の表情に変わった。



「ゴホン。こんなところで立ち話もなんですから、一度ニラミスでお話をしませんか?」

「それも、そうですね。僕も話したいことがあるので」

ジェミラが提案し、大成は賛同した。


そういうことで、大成達はニラミスに向かう。




【ニラミス国】


大成達はニラミスに到着し、ジェミラの屋敷の客間に案内された。

屋敷といっても、150坪ぐらいの大きさだ。


「ん?あれは確か…」

大成は見覚えがある人物の掛け軸を指さした。

ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアは掛け軸を見て驚いた。


「お父様…」

「魔王様です」

客間に飾っていた掛け軸には、ジャンヌの父・先代の魔王が描かれていた。


その掛け軸を見て、ジャンヌとウルミラは、自分達の国だけでなく、まだ他国にも飾られていることに感動した。



「飲み物をどうぞ。ところで、修羅様のお話とは何でしょうか?」

飲み物を配り終えると、緊張した表情をするジェミラ。

ジェミラは、報酬を請求されると思っていた。


「そうでしたね。では、突然ですみませんがラーバスと同盟を組みませんか?勿論、平等に」

「えっ!?」

大成の予想外の提案に、一瞬、言葉の意味が理解できなかったジェミラ。


「駄目ですか?」

「い、いいえ!それは、此方からお願いしたいことでした。ですが、あの…その…平等で良いのですか?」

ジェミラは、慌てて返事をし疑問を伝えた。


「え?当たり前のことをなぜ聞くのですか?僕の目標は、ラーバスを…いえ、魔人の国を先代の魔王の時より、活気に溢れた国にすることですから」

大成は笑顔で答えたが、瞳には力強い意志が込められていたことにジェミラが気付き信頼することにした。


「修羅様を信じましょう」

「ありがとうございます」

大成とジェミラは、お互い両手でがっしりと握手した。



そして、これからのことをいろいろ話し、相談し合った。

大きな問題、滅んだラゴゥバルサ国の件は、大成に任すことになった。


「だいたいのことは、決まりましたね」

「はい。それにしても、修羅様の考え下さったアイディアの数々は、本当に素晴らしいものばかりです。これで、私達は随分と発展すると思います。本当にありがとうございます」

ジェミラは、大成から教えて貰ったことを手元のノートにぎっしりと書き込んでいた。


「では、何かありましたらラーバスにお越しください」

話が終わり、大成達が出て行こうとした時、ユピアが大成の傍に駆け寄る。


「じゃあね。ユピアちゃん」

大成は、やさしく頭を撫でた。


「ううん。ユピアも修羅様についていくことになったよ」

「「えっ!?」」

大成達はユピアの発言に驚き、ジェミラに振り向いた。


ジェミラは、顔の前で合掌し頭を下げていた。


「えっと…」

どうすれば良いか悩んだ大成はユピアを見た。


「ユピアを修羅様の専属メイドにして下さい。今は何も出来ないけど。頑張って覚えるから、お願いします。修羅様。」

ユピアは、必死に大成に訴えた。


必死なユピアの姿を見た大成達は困った。

「ユピアのお父さんとお母さん、それにおじいちゃんやニラミスの皆とは、ラーバスにいる間は殆ど会えないけど。それでも良いとユピアが思うなら良いよ」

大成は笑顔で条件をつけた。


大成は、ジャンヌ達に視線を向けたが、ジャンヌ達は仕方ないという感じだった。



「ありがとう。修羅様、大好き!」

ユピアは、大成に抱きつきキスをした。

「えっ!?」

「「あっ!」」

大成達は驚いた。


「えへへ、誓いのキスだよ」

「あ、ありがとう…」

無邪気に笑うユピア見て、大成は苦笑いするしかなかった。


「へ~。何の誓いのキスなのかしらねぇ~。ねぇ、教えてよ大成」

ジャンヌの低い声がした。


「大成さん!」

「大成君!」

「ダーリン!」

「「浮気者~!」」

ジャンヌ達は一斉に魔力を高めた。


(ああ、やっぱり…)

大成は、恐る恐る振り向き息を呑んで、慌ててユピアを抱き抱え、その場から逃げた。


こうして、ユピアが大成の専属メイドになった。





別話

【ラゴゥバルサ城】


ラゴゥバルサ国の件。


次の日、ローケンス達が戻り、墓標作りの任務をこなした騎士団も、大成のところに集まっていた。


「……ということで、ニラミスと同盟を組んだ。もしかしたら他国とも同盟を組むかもしれない。反対するものはいるか?」

「「いいえ!」」

皆は、大成の質問に即答した。


「あと、ラゴゥバルサ国のことだが。ローケンス、王様になってみないか?」

「大変、光栄なことですが…。俺は、ずっと修羅様の傍でお仕えしたいので、ご遠慮します」

ローケンスは、大成の質問に答えた。



そのあとヘルレウスに話しを持ち掛けていく大成。

結局、ヘルレウスメンバー全員に聞いたが、全員に断れた。



大成は周りを見渡した。

先から、ただ1人だけ目を輝かしている者が、ずっと大成に目線で訴えていた。


(仕方ないか…。心配だけど…)

「ギランお前はどうだ?」

トランプゲームのババ抜きで、最後にババが残った感じがした大成だったが、仕方ないのでギランに尋ねた。


ギランは待ってましたと言わんばかりの表情が顔に出ていた。

「大変、光栄なお話とは存じますが、ご遠慮したいと存じます」

ギランは頭を下げた。


(お、考えすぎだったか)

大成は心の中で、ギランに謝ろうとした。

皆も予想外なことに驚いた表情をしていた。

だが、続きがあった。


「ですが、期待されたのなら期待に応えるのが我が家訓です。お引き受けいたします」

ギランは、胸を張って答えた。


「あ、うん。任せるよ。期待している…」

不安そうに言う大成であったが、仕方ないと思いながら任命した。

皆も不安そうにギランを見詰めた。

次回、学園生活に戻ります。

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