小さな国ニラミスと少女ユピア
エターヌの村を奪還した大成達。
そして、ラゴゥバルサを潰しに向かった。
【ラゴゥバルサ国付近】
ニールが、大成達をラゴゥバルサ国に案内し、大成達は離れた崖の上からラゴゥバルサを見下ろしていた。
「あれが、ラゴゥバルサか…。思っていたより大きい国だな」
大成は額に手を当て、ラゴゥバルサの地形を確認した。
「はい」
頷きながら、ニールは肯定する。
「「やはり、我々も手伝います」」
騎士団が、一斉に片膝を地面につき敬礼した。
その瞬間、大成は騎士団に振り向いた。
「俺は1人で十分だと言ったはずだ。俺を信用できないのか?」
「「ひっ、も、申し訳ありません」」
騎士団は、怯え謝罪をした。
大成は魔力、威圧感、殺気は出てないが、その瞳や纏う雰囲気は、騎士団に有無を言わせないほど恐怖を与えた。
「た、大成。騎士団は、あなたの心配しているだけなの」
怯みながらジャンヌは騎士団を庇った。
「すまない、気が立っていた」
大成は素直に謝罪をし、再びラゴゥバルサを見下ろした。
大成が気が立ってているのは、自分達より先に他国の兵士達が500人ほど近くに待機している。
だが、いつまで経ったても一向に誰一人、動く気配がない。
気配の消し方が下手なのを考えると、大したことのない連中だとわかるが何故攻めない?
いつまで、そこでボーとしている?
勝てないと悟り、ボーとしているなら他の国と組もうと思わないのか?などと大成は思い、逆にイライラしていた。
他にも2~4人組が4ヶ所ぐらい散らばっている。
こちらは、偵察だろうと考えられた。
そして、ここに来る途中の事件のこともあった。
【過去・ニラミス国付近】
ラゴゥバルサに来る途中、町ぐらいの大きさの国があった。
「ニール、あれは町か?」
「あれは、ニラミスという国です。修羅様」
大成に聞かれ、案内で先頭を進行していたニールは、振り向き敬礼して説明した。
「ニラミスか…。あんなに小さな国もあるんだな」
「そうです」
大成は少し興味を持ち、ニラミスを眺めながら進んでいたが、何だか胸騒ぎがした。
「ニール待て。お前達はここで、1度待機して休憩をとっていてくれ。俺1人で、ニラミスの様子を見てくる」
大成は、軍隊を止めて振り返りながら指示をする。
「畏まりました」
「わかったわ」
「わかりました」
「わかりましたわ」
おそらくニラミス国で何か事件が起きており、大成が気付いたのかと思ったニール、ジャンヌ、ウルミラ、シリーダは心配した表情で了承した。
「「了解」」
一方、騎士団は、誰もがただの休憩だと思っていた。
大成は、急いでニラミスへ向かった。
【過去・ニラミス国・北口門】
大成は、木の影から様子を窺い、疑問に思った。
(何で、ここにラゴゥバルサの兵士達がいるんだ?)
門番の2人は、ニラミスの鎧ではなく、ラゴゥバルサの鎧を着ていたのだ。
(大した奴は居ないみたいだな。事情も聞くため、今回はどうどうと入るか)
大成は、普通の旅人を演じて北口門に近づく。
「この国に何か用か?」
門番2人は、大成に気付き尋ねた。
「ん?あれ?ここは、ニラミス国だったと思いますけど?」
大成は首を傾げながら尋ねる。
笑いながら門番は抜刀した。
「一昨日から我々の国。ラゴゥバルサの国になったのさ。それと、可愛そうだが秘密事項を知ったお前を生かして帰すことはできない。だが、そうだな選択肢を与えてやる。ここで死ぬか、一生この国で奴隷として生きるかだ。ナハハハ…」
「今日はこれで何人目か?まぁ、奴隷は増えるのは良いが、俺は遊べる女の方が良いな。ワハハハ…」
「ちげぇーねな。ナハハハ…」
門番2人は盛大に笑った。
「なるほど。では、もう1つ選択肢を作って良いですか?」
「ん?先に言っとくが、持ち金を全部出すから見逃して下さいは駄目だぞ。ワハハハ…」
「いえ、違います」
「では、何だ?他にどんな選択肢があるんだ?ナハハハ…」
「それはですね。ここで…お前達を殺すという選択肢だ。死ね」
笑顔を浮かべた大成の表情が一変した。
「「ぐぁっ…」」
大成は、右手に村雨を発動して、門番2人に何もさせないまま斬り捨てた。
門番2人を殺した大成は、急いで中に入った。
【過去・ニラミス国・北側付近】
ニラミスの国民がラゴゥバルサの兵士達に囲まれ、食糧など荷台に積み込みをしていた時、1人の少女がラゴゥバルサの兵士に襲われていた。
「い、嫌~!離して!お父さん、お母さん助けてぇ~!」
少女ユピアは、強引に兵士達に服を脱がされそうになり、必死に抵抗し助けを求めていた。
「た、頼む、娘には何もしないでくれ!」
「だ、誰か娘を助けて下さい!」
少女の両親は必死に助けようとしたが、ラゴゥバルサ兵士達に地面に倒され押し付けられ、ニラミス国の人達は怖じ気づいて誰も動かなかった。
「糞!離せ!娘に手を出すな!」
父親は一生懸命にもがく。
「チッ、こいつはウザイな。見せしめに殺すとするか」
兵士の1人が腰にかけていた剣を抜き、父親へと近づいた。
「ゆ、ユピアは、何でも言うこと聞くから、お父さんとお母さんを殺さないで!お願い!お願いします!」
泣きながら娘・ユピアは懇願した。
「良い心がけだ。しかし、残念だが、お前の父親は見せしめになってもらおう」
そして、兵士は笑いながら剣を両手で持ち、頭上に掲げ振り下ろそうとした。
「嫌~!」
目を瞑り叫ぶユピア。
ニラミス国の人達も目を瞑った。
「「うぁ」」
「「ぎゃ」」
「ぐぁっ」
男達の悲鳴が聞こえた。
「うっ、うぐっ、お父さん…」
恐る恐るユピアは目を開いた。
「えっ!?」
ユピアは驚いた。
目を開いて見た光景は、父親に剣を振り下ろそうとしたラゴゥバルサの兵士の背後に、黒いローブを羽織った大成がおり、大成の手が兵士の胸を貫通していた。
大成は手を抜き、刺された兵士はその場に倒れた。
大成は腕を振り、手についた血を飛ばした。
周りは、両親を押さえつけていたラゴゥバルサ兵士も、血を流しながら倒れていた。
両親も周りの皆も呆然としており、場は静まり返っていた。
「修羅様…?」
ユピアは、魔力を纏う大成の顔に見覚えがあった。
家族で、隣国のラーバスの祭に行った時、そこでラーバスの魔王を決める大会もあると知り、ついでに見に行った。
自分より少し年上の少年なのに、大人達を次々に倒していく。
その姿を見た時、この世界を変えてくれる人かもしれないとユピアは感じていた。
「お前達は大人しく、あの世に帰れ。グリモア・ブック」
大成は冷徹な瞳になり、右手には村雨を発動したまま、グリモアを出した。
「なっ、何だ?このガキは、アイス・ミ…」
兵士1人が大成の不気味さを感じとり接近戦を止め、大成に向かって魔法を唱えようとした。
「遅い」
だが、大成は一瞬で間合いを詰め、兵士の首を切断した。
「アース・ウェイブ・ニードル」
大成は地面に手をつき、続けて土魔法アース・ウェイブ・ニードルを唱え発動した。
その瞬間、地面から針が出現しながらラゴゥバルサの兵士達に向かった。
「「うぉっ!」」
「「ぎゃーっ」」
兵士の何人かは横に跳び回避したが、回避できなかった兵士は串刺しになり息絶えた。
兵士の1人が、笛を鳴らした。
沢山の建物から、兵士達があちらこちらと出てきて続々と集まった。
「ガ、ガキを殺せぇ~!」
笛を鳴らした兵士は、指示を出した。
「ウォォ~!」
次々に大成に襲いかかるラゴゥバルサの兵士達。
大成は後ろを振り向き、建物に向かってジャンプし三角飛びで、ユピアの元へ一気に駆けつけた。
「な、何だと!?」
「くっ」
「「ぐぁ」」
ユピアの服を脱がそうとしたラゴゥバルサの兵士達は、腰に掛けてある剣を抜こうとしたが、その前に大成から斬られた。
「あ、あの、あ、ありがとう」
ユピアは、両手で大成の手を握り頬を赤く染め感謝した。
「気にするな。それより、ここから早くはなれろ」
「う、うん」
大成に言われて、ユピアは慌てて離れた。
大成は、人の気配がない場所へと向かう。
「逃げたぞ!」
「追え~!」
ラゴゥバルサ兵士達は、逃げる大成を追いかけた。
【過去・ニラミス国・東側付近】
大成は、ラゴゥバルサの兵士達がついてこられる速さで暫く走り、角を曲がった所で立ち止まった。
「「待ちやがれ!」」
「や、やっと追い詰めたぜ」
ラゴゥバルサの兵士達は息を切らし、肩を上下に動かしていた。
「わざわざ、追って来てくれて助かる。ここには、俺とお前達しか居ない」
「それがどうした?」
「いや、フッと思いついたことがあってな。周りにニラミスの人達がいたら巻き込む恐れがあった。ここでなら、安心して試すことができる」
大成は、教えながら再び右手に村雨を発動した。
だが、大成は更に魔力を込めると、村雨がスーと伸びていき8メートルの長さになった。
「う、うそだろ…」
「「に、逃げろ~!」」
ラゴゥバルサの兵士達は、一斉に後ろに振り向いて逃げようとした。
「逃がさん。死ね」
大成は、巨大化した村雨を横に振った。
「「ひっ…」」
「「ぐぁっ…」」
大成の村雨の前では、ラゴゥバルサの兵士達の剣も鎧も意味をなさず兵士達を一網打尽した。
その後、ニラミスの人達は、少し怯えながら大成の傍に集まり感謝をした。
「この度は、国を救って頂き、誠にありがとうございます。私は、この国、ニラミス国の王ジェミラと申します。あ、あなた様は、近日ラーバスの魔王にお成りになった。魔王修羅様ですか?」
国王と名乗ったじいさん、ジェミラ。
「そうだが。それより、説明してくれ?」
大成は説明を促した。
「はい。わかりました」
ゆっくりと頷いたジェミラは、深刻な表情に変わり話し出した。
ジェミラの話を聞くと、一昨日にラゴゥバルサ国の兵士達に襲われ、食糧やお金などの物資を奪われた。
そして、国内の強い男達は、自らラゴゥバルサの仲間になり、女性は襲われた。
そして、定期的に物資を渡さないと滅ぼすと言われ、他国に助けを求めようとしても見張りが居り、この国の者ではなくとも外出が出来なくなったとのことだった。
「なるほどな。すまないが、俺は急用があるから、これで…」
「何処か行かれるのですか?」
ジェミラは、大成に少しでも滞在して貰い、この国を守って欲しかった。
「今から、ラゴゥバルサを滅ぼしに行く予定だ。だから、今は時間が惜しい。そろそろ行く」
大成はバルダー達、ラゴゥバルサを憎み立ち去る。
ジェミラ達は、驚きを通り越して時が止まっていた。
【ラゴゥバルサ国付近】
大成は、ラゴゥバルサに来る途中に、そんなこともあったので、他国も被害にあっていると思ったら、気が立った。
「やはり、あいつらは動く気配がないか…。そろそろ行くか」
他国の兵士達は動く気配が全くなかった。
(アイツら何のために、来ているんだ?)
大成は、ウォーミングアップしながら思った。
「大成。油断は禁物よ。気をつけなさい」
ジャンヌと皆は、大成を心配した。
「ああ、大丈夫だ。だから、心配するな。よっと…」
大成は、気配を完全に消して崖から飛び降りた。
「グリモア・ブック。エア・クッション」
大成は、地面が近づいた瞬間、風魔法エア・クッションを唱え発動した。
足元に圧縮した空気の層を作り出し、落下スピードを殺して着地した。
「ほ、本当に大丈夫なのでしょうか?」
1人の騎士が、ローケンスに尋ねた。
「今日は月は雲に覆われ、奇襲をするには良い。それに、お前達も修羅様と少しだけだが、ナイディカの森の近くで戦ってみただろう」
騎士団に思い出させたローケンス。
「は、はい。確かに…。修羅様には、我々が何人、いえ何百人束になっても勝てそうにありませんでした」
あの時、騎士団は大成の殺気だけで死を実感させられ、気絶する者、腰が抜ける者、体が震え動けない者しか居らず、まともに動けた者は皆無だった。
殺されるのを、ただ待つことしかできずにいた。
あの時の絶望的な恐怖を再び思い出し、背筋がゾッとし体が震えた。
「そういうことだ」
頷きながら、ローケンス肯定した。
ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアの4人は、瞳を閉じて胸元の前で両手を握り締め、大成の無事を祈った。
大成を信用しているが、それでも心配だった。
あまり、話が進みませんでした。
大変申し訳ありません。
次回、ラゴゥバルサが滅びます。
アイディアが思い浮かんでますので、時間あれば、今日中に、もう一話投稿させて頂きます。




