表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
65/235

逃げた理由

 今までペラペラ話していたエミリアが急に言葉を詰まらせた。

 里奈の予想通り、心に響いたようだ。

 

「あなたは、五年前までは国家魔法使いだったと聞いています。でも、あの事件の少し前その職務を放棄し国外に逃げた……違いますか?」


 強気で質問を投げつけると、静かな声で「ああ……そうじゃ」と呟いた。


「国家魔法使いは皆この国のために戦ったのに、なぜあなたは職務を放棄したんですか? 何か理由があったんですよね?」


 この情報は、少しでも何かエミリアに対抗できるものがないかと思い、リチェに教えてもらったものだ。

 ある意味、里奈の唯一の切り札だった。


「確かに国を去ったが、職務を放棄したわけではない。しかし、そう思われても仕方のないことじゃ」

「どういうことですか?」


 せっかくの切り札を無駄にしないよう里奈はエミリアに話を促す。

 そして、ティーカップをゆっくり口に運びながら、


「あなたは、この国の、そして世界の情勢を知っておるのかね?」


と逆に里奈に質問する。


(これはまたもや試されているのだろうか……?)


 ちょっと考えて、

「少しは……五年前のこととか、デュエロのこととか……魔法使いがいなくなってしまったこととか……」

と、うやむやな返事をしてみる。

 絶対鼻で笑われると思ったが、さっきまでの勢いは彼にはなく、遠い目をしながら一人語りだした。


「国家魔法使いがいなくなったのは、我らナイトレイ家に力がなかったからじゃよ。何度もデュエロで負けてしまった。その当時、我々ナイトレイ家は、もてはやされていたローゼン家に対抗心を燃やしておったのじゃ。ローゼンの血に敵うわけがないのに、闘争心と手柄をあげたいばかりに、自ら進んでデュエロに向かった……そして、ナイトレイ家の魔法使いたちは国外へ連れて行かれてしまった……」



『負けた魔法使いは、勝利の国へ引き渡すというのがルールですので、死も同然です』


 あの日のリチェの話が蘇り、膝の上で拳を握る。



「わしは、敵国へ連れて行かれた者たちを助けるためにこの国を出た。その時はまだアムステールには余力があったから大丈夫だ、そう思ったのじゃが……それが大きな間違いじゃった。気づいた時にはもう全てが終わってしまった後。一族の魔法使いを取り戻すこともできず、国家魔法使いとして陛下たちをお守りすることもできず、わしは無意味な存在じゃよ」

「後悔してるなら、なぜアルフォードに協力してあげないんですか?! 今助けるべき人でしょ?!」


 里奈は声を張り上げた。

 エミリアの話を聞いたらますます納得がいかない。

 なんでそこでクーデターということになるのか里奈にはさっぱり理解できなかった。


「デュエロをするように仕向けたのは前国王陛下じゃ。あの方は政治を間違えさえしなければ、こんな状況にはならんかった。それに、一番助けるべき存在は国民ではないかね?」

「そうだけど……でも……」

「わしも、国民のみんなも初めは殿下に同情した。しかし、もうあれから五年経った。これ以上、国民たちを苦しませるわけにはいかんのじゃよ。それがわしの償いじゃ!」

「そんなの、償いなんかじゃない! 人を殺そうとしている革命が償いなんて絶対おかしい! ちゃんと話し合うべきじゃないの? あなたも、アルフォードも国民のみんなも願っていることは同じじゃないの? 誰かを傷つけるとまた復讐の連鎖が始まるだけだよ!」


 里奈は必死でエミリアに訴える。


 アルフォードだけでなくこの人の性格もひん曲がっている。

 なんて世話の焼ける国なんだ!

 

 里奈は心の中で悪態をついた。

 そんな必死な里奈とは裏腹に、エミリアは余裕の表情だ。

 

「話し合って解決するならとっくにやっておる。この問題はそんなに簡単じゃ――」

「やってもないのに言わないでよね! そんな大口叩けるのなら、黙ってとりあえずアルフォードの演説聞いてよ。その話を聞いて、今後暴動に走るのか、アルフォードに協力するのか皆で決めて」



 里奈は再び立ち上がり啖呵を切った。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ