いざ敵地へ
「お二人さん、お取込み中よろしいかしらぁ?」
気づけば二人の背後にオネェ神父が立っている。
急いで里奈は、立ち上がり、リチェから離れる。
「あら、いいのよ? 私なんか気にしなくて~。仲がいいってことはいいことよ~」
「わ、私たちはそんなんじゃないですから!!」
里奈はあわてて否定するが、リチェはいつも通り何もしゃべらず。
「さっそくだけど、今からいける? 道案内人にフリンを付けてあげるから」
「ありがとうございます。今からいけます」
そして里奈は、最初に会ったシスターのフリンと一緒に、教会を後にした。
教会を出るときに、リチェはかなり心配そうな顔を見せ「無茶だけはしないように」と念を押してきた。
(あの無表情なリチェがあんな顔するんだ~)
初めに会ったときは冷酷で無表情な人だと思ったが、最近はちょっとだけ色んな表情を見せてくれるようになって里奈は嬉しく思った。
でも、できれば心配そうな顔ではなく、笑わせたいと思う。
アムステール王国再建が表目標だとしたら、これは裏目標だ。
そんな能天気なことを考えながら、フリンの後ろについて歩いていく。
林道を抜けると、大きな門が見え、その奥には赤い屋根の大きなお屋敷があった。
門の前には、門番らしき男が二名いる。
(ここがあの人の屋敷? あの人も結構豪華な生活してるんじゃないの?!)
里奈は門の隙間から、お屋敷の様子を覗き見た。
フリンは門番の男たちに声を掛ける。
「ジュペール教皇のお使いできました。中へお通しください」
「この隣の女は?」
「この方をお連れするよう言われております」
「本当か?! そんな話聞いていない」
(ちょっと……さっそく、やばい感じじゃない……)
里奈は他に護衛の者がやってこないかと、キョロキョロと見回すと、中からいきなり門が開き――
「その方は大事な客じゃ、通しなさい」
エミリアが現れた。
里奈はギュッと拳を握る。
(ここからが勝負よ。隙をみせちゃ負けなんだから!)
そう自分に言い聞かせ、背筋を伸ばし胸を張った。
「お待ちしておりましたぞ、リナ・ローゼン様」
「こちらこそ、またお会いできて光栄です、エミリア様」
そこでフリンと別れ、里奈はとうとう一人になった。
そして、エミリアの後についてゆっくり屋敷の中へ入っていく。
(やっぱり、贅沢な生活を送ってるんじゃない……別にアルフォードだけじゃない……)
里奈はそう思うのも無理はない。
通されたお屋敷の中は、きれいに掃除が行き届いていた。
屋敷に入るまでの遊歩道も、ちゃんと草木が整えられているし、枯れた花も見当たらない。
そして、屋敷の中もちゃんと電球はついているし、窓ガラスもヒビが入ったままになっていないようだ。
あの王宮の姿よりも、こちらのお屋敷の方がずいぶん豪華に見える。
(さすがに、年配のエミリア一人で掃除したりしてないだろうし……)
里奈がキョロキョロしながら歩くので、エミリアは不審に思ったのか「どうされたのですか?」と問いかけてきた。
「いや、ずいぶんきれいなお屋敷だなぁと思いまして。王宮なんか窓ガラスにヒビは入っていたし、蜘蛛の巣だってあったから」
エミリアがどんな反応を見せるか気になったので、 ちょっと嫌味っぽく言ってみた。




