笑うポルメターベ
カルテマイセーは、予想以上に大きな都市だった。
帝国北部に睨みを利かせる帝国直轄領の重要拠点だけに、諸侯領の街とは格が違う。
――この中で、名前すら定かではない男を捜すのか。
リリーメル、アディ、フェーンは、森の中で一輪の花を求める自分を想像してこめかみを押さえた。ポルメターだかポルメテーだかを捜すだけで人生を終えてしまいそうだ。
ピーデはそんな三人を尻目に、街の奥に入っていく。
「ピーデ、どこに向かっているのです?」
「クソみてえな仕事をするようなヤツは、どうせクソみてえな店に行く。クソみてえな店は、どの街にでもあるクソみてえな地区にあるもんだ」
「ピーデ、姫様に向かってクソクソ連呼しないでください。すぐ感化されてしまうのですから」
「あらアディ、そんなクソみたいなこと言わないで」
「ほら感化された」
「……前から思ってたんだが、お嬢ちゃんたちはふざけてるのか?」
「いえ、至って真面目に生きていますが?」と、リリーメルは真顔で返した。
「……あっそう」
いつの間にか、ガレーナの酒場のような雰囲気の店が建ち並ぶ一角に居た。
「ま、この辺りで十軒くらい回れば当たりがあるだろ」
「なるほど、この辺りがクソみたいな地区なのですね」
「姫様、クソクソ言わない!」
「やっぱりお前らふざけてるだろ」
「いえ、至って真面目に生きていますが?」と、アディは真顔で返した。
そして聞き込み三軒目。
「ポルメターだかポルメテーだかってヤツを知らねえか」
「ポルメターだかポルメテーだかは知らねえが、ポルメターベってヤツならあのハゲ野郎だ」
男が指差した先に、小太りの禿げた小男が一人で飲んでいた。ピーデは男に小銀貨を握らせると、ポルメターベに近づいた。
「アンタがポルメターベか?」
「違うな」
「ポルメターベだって聞いたんだが?」
「ヤツは嘘つきだ。騙されたな。気の毒に」
「アンタが嘘つきって線もあるな」
「なら、『俺こそがポルメターベだ』と言ったら信じるか? 嘘かもしれんぞ」
「……」
ピーデは、ため息をはくと男の禿げ頭をビタリと引っぱたいた。
「なら、ここからの会話は暴力で行こう。痛い思いをしてもらって、最後に出てきた言葉が真実だろう」
「ちょっ、暴力は困る。俺は痛いのは嫌いなんだ」
「俺もまどろっこしい会話は嫌いだ。円滑に話を進めようじゃないか。俺はただ話がしてえだけだ。アンタに危害を加えるつもりはねえ。俺を苛つかせなければな」
「分かった。あんたの好みに合わせようじゃないか。俺こそがポルメターベだ」
「その証拠は?」
「おい! この会話の正解は何だ?」
「ベーベンって男を知ってるか?」
「ベーベン? 誰だ?」
「あんたが儲け話を持ち掛けた男だ」
「ああ、アイツか。俺は何も悪いことはしてねえよ。ある男に紹介しただけだ」
「知ってるんだな?」
「ちょいと話して意気投合しただけだ。詳しいことは知らねえよ。カネがねえって言うから仕事を回してやった。それだけだ」
「そんな儲け話、なぜ斡旋してやったんだ。普通は自分でやるだろ」
「明らかにイモ引かされる話だ。俺はご免だね」
「一体どんな仕事だ。誰が糸引いてる」
「ヤツらの狙いは知らねえよ。だが、ありゃ帝都の宮内伯が絡んでる」
「宮内伯!?」「宮内伯!?」「宮内伯!?」
リリーメルとアディとフェーンは仰天した。帝国の官僚階級である宮内伯が絡んでいるとはどういうことなのか。
「あんたら、まさか宮内伯とやり合う気か?」
ポルメターベは、あきれたという顔をしてせせら笑った。




