婚約
その夜。
いつも通り、そこら辺で寝転がって寝ていると――
まっちゃんに、後ろから抱きつかれた。
こ、これは……まさか、そういう展開か!?
「あの、いつも面倒を見てくれたり、いろいろしてくれてありがとう」
「な、なんだよ今さら」
「ううん……確かに、食料も知識もない。人に拾われた私だけど……。嫌な顔ひとつせず、自分も危ない状況なのに、足手まといになる私を拾ってくれた」
「それって、すごいことだなって……思って」
「そうかもね」
「そう思ったら、なんか……こうなった」
恥ずかしそうにそう言いながら、まっちゃんは僕を抱きしめていた腕に、さらに力を込めてきた。
……が。
「あのさ、僕、ロリコンじゃないんだけど!!」
そう口に出した瞬間、その場の空気が凍りついた。
……あっ。
結構いい雰囲気だったのに、ぶち壊してしまったようだ。
次の瞬間、まっちゃんに横腹をぶん殴られた。
普通に痛い。
そのまま、まっちゃんは離れていったので、僕は静かに目を閉じて眠った。
2
翌朝。
とても良い朝だった。鳥がさえずり、空気も澄んでいる。
やっと、まともな冒険ができる。
って言っても、目的があるわけじゃないから、冒険する意味も特にないんだけど。
一応、夢はあるっちゃある。
僕は組織を作りたいんだ。僕はそのボス。
まっちゃんも、その一人に入れてやりたいと思っている。
仲間を増やして、組織をでかくして。
そして、めちゃくちゃ威張る!!
そのためには、もっと魔法を極めなければ。
ーーそれから、約一ヶ月が経った。
僕とまっちゃんは、すっかり仲良くなった。
すると、まっちゃんの本来の性格が表に出てきて、けっこう面白かった。
魔法もだいぶ使えるようになった。レベルは百くらい。
今では、土魔法を使って仮設住宅を作ることもできるようになっている。
「ねぇ、みのる! 今日も魔法の練習しよ!」
「分かってるって。レベルアップ画面、まだ想像できないんだもんね」
「その言い方、ひどいよ〜! そんな簡単なことじゃないんだから、当たり前じゃん!」
「まぁ地道に頑張ろう。まっちゃんには、僕の組織の幹部になってもらわないといけないからね」
「これは想像力が大事なんだ。常に何かを想像し続けること」
僕はいつも、アニメ的展開を妄想していたから、想像力だけは自信がある。
「想像か〜。何を想像したらいいかわかんないよ」
「まあ、自分がこうだったらいいなぁってことを想像すればいいんだよ」
「じゃあ私、みのるとの結婚式を想像する!!」
「だから僕はロリコンじゃないって言ってるだろ?」
「それはもう聞き飽きたよ。大人になって、大きくなってから結婚するの!」
「やめといたほうがいいと思うなぁ。だって僕、絶対に二股するよ?」
「ふたまた?」
「つまり、恋人を二人作るってこと」
「え〜……それは……」
まっちゃんは、少し考えて――
「まぁ、私の認めた人ならいいや!!」
「ほんと? それは激アツだわ!」
「なら、大きくなったら結婚してやってもいいよ。ロリコンじゃないからね!!」
「ほんと!?」
「って言っても、結婚したところで何か変わるわけでもないと思うけどね」
「確かにそうかも……」
「まあいいよ! 結婚するってことが大事なんだから!!」
「そういうもんか」
「そういうもんだよ!」