孤独
そうして、さらに一ヵ月が経ったある日。
いつも通りまっちゃんと適当に散歩していると、大きな門のようなものがあった。
前には門番のような奴がいて僕に話しかけてきた。
「何者だ!」
「僕はみのるだよ」
「人間がこんなところに来るとは、魔族も舐められたものだな」
魔物と人間が合体したような見た目。
魔族っていうのがこの世界にもいるんだなぁ。
「ここ通りたいんだけど……。まぁ殺すしかないか」
右の手のひらをその魔族にかざす。
「面白い。かかってこい!」
そう言われたので、僕は風魔法を使い、竜巻を起こした。
その竜巻に土魔術で生成した、いろいろな形の石を巻き込ませ、魔族をミンチにした。
「きゃっ!」
まっちゃんは驚いて後ろに飛んだ。
「あ、ごめん」
とりあえず門をくぐると、そこには町のようなものがあった。
地面は自然あふれる土なのに対し、家は割とちゃんとしていて、街の中心部には城のようなものがあった。
「なかなかの度胸だな」
その時、どこからか話しかけられた。
女なのかな? 見た目は紫の鬼のような感じで、角が生えていた。
「別に、ただ散歩してるだけだけど」
「それは不幸な奴だ。間違えて魔王城に来てしまうとはな!!」
その時、骨が切り裂かれるような、鈍く残酷な音がした。
僕に大量の血液が飛んできた。
横を見ると、まっちゃんはいなかった。あったのはすでに魂のない肉の塊。
「は?」
「お前も私の仲間をミンチにしたんだ。当然だろ?」
どこからともなくそいつは僕の目の前に現れた。
あっけない、あまりにあっけない。
もはや悲しみの感情が追いつかない程に。
「……」
いや、どうでもいいはずだ。まっちゃんとは、まだ出会って二ヶ月くらいだ。そうだ、どうでも、どうでもいいんだ……。
体が自然と小刻みに震えた。
「お前……死ねよ!!」
僕はそいつに全速力で突進した。
「そんなにキレるなよ、みのるくん」
そのまま僕は力任せに、魔力を本気で込めた拳で顔を殴った。
「なんだこれは、蚊でも止まったかと思ったぞ」
何度も何度も。だが、砕けたのは拳の方だった。
「あはは! 雑魚いなぁ!
まぁ、それも当たり前か。魔王相手に人間ごときが勝てるわけもないしな」
「魔王……?」
魔王ってあの魔王か?
「やはり知らなかったのか。私は魔王だ!」
「……」
「うるせぇよ。そんなの関係ねぇ。お前はただただ死ぬだけだ!」
本気で殴っても、本気で魔術をぶつけても、全く効かない。
何もできない。無力感。
「うわー、こわいこわい」
魔王はおもちゃで遊ぶ子供のように、僕をからかって反撃もせず、ただただバカにした。
ああ、もういいさ。
僕は孤独を恐れていた。でもそれと同時に、孤独じゃないことも、怖かった。
やっぱりこうなる。だから仲間なんて嫌いなんだ。まぁ、もういいよ。魔王も人間も、全部殺す。
神はいるんだろ? 助けろよ……! 本当に使えない神だ。
その時、後ろから足音が聞こえた。
「とぉーっても楽しそうなことしてるね」
「ん? なんだ、ペルソナか。今いいところなんだが」
ペルソナ。その男は色白の肌に白髪の髪。白い目。
体全体が白く、それは今まで見たどんな生物より不気味だった。
「魔王様〜、私、魔王幹部、引退します!!」
男はウインクをし、口角を上げ、ふざけたようににやけた。
「は?」
「だから、君も今日から私の敵だ。さようなら、魔王様。今まで楽しかったよ」
ペルソナは真面目な表情を作ってそう言った。
「なにをふざけたこと言っている! 幹部が魔王に勝てるわけないだろ」
「うわー、やっぱり怒ったぁ! 退職代行サービスとかないのかなぁ?」
「あまりふざけるのもいい加減にしろ! お前は優秀だから好き勝手にさせてやっていたが、それももう終わりだ。ここで死ね!!」
魔王は大きな紫の魔力の塊のようなものを、ペルソナという男に向けて放った。
その威力を見て、格の違いと今まで自分が自惚れていたと気づいた。
このままでは、ここら辺一帯が吹っ飛ぶ。そしてペルソナも死ぬだろう。
「君が死ねよ」
だが、その予想は一瞬にして裏切られた。
何が起きたのか全くわからない。だけど、ペルソナがその一言を放った瞬間、あたり一帯に強烈な圧力がかかった。
見ると魔王は魂が抜けたように死んでいた。
ペルソナの一言は、まるで神からの命令のように、絶対的で圧倒的だった。




