人は勘違いで強くなれる
今日は学校が休みだった。うちの学校はなかなかに合理的な考え方で、特にやることがない日は無理矢理授業を作ったりせず、普通に休みにしてくれる。素晴らしい学校だ。今日は幹部であるシュナに城に呼ばれたので来てみたのだが……。
「いや、なにこれ……」
城は前とはまるで違う風貌へと変わっていた。至る所に、それぞれ違うポーズの仮面を被った僕の像。自然に溢れており、僕の像を固定してる根本の部分には、よくわからない僕の逸話があることないこと書かれていた。
城の大きさはあんまり変わってないんだけど、こんな城、ナルシストだと思われそうだ。あとなんて言うか、この城めっちゃエルフって感じするんだよなぁ。この自然が溢れる感じに、城に余る大きな土地がさ。
「気に入っていただけましたか?」
背後からの突然の声に僕は思わず一歩下がる。
「うわっ!」
そこには真剣な顔で片膝をついたシュナがいた。こんな石の道で膝をつくなんて痛そうだなぁ。
「ま、まあね」
僕は戸惑いつつも扉を開けると、そこには何十人のメイドと執事らしい人らが佇んでいた。とても難しい顔をしている、いや震えているのか?
視線はまっすぐ向いていて、道を示すように並んでいた。
「おお!」
「ご主人様が前に召使いが欲しいとおっしゃられていたので。迷惑でしたか?」
「いやいや、とても素晴らしいよ」
まさかメイドさんを得ることができるとは。やっぱり異世界って素晴らしい、それに執事みたいなのもいるし、それにしても美男美女ばっかりだなぁ。これじゃ僕が浮いちゃいそうだ。
僕は優越感に浸りにながらゆっくり歩き出した。
「ふむふむ」
僕は歩きながらロボットのように並んでいるメイドさんたちの服を凝視した。メイド服なんてこの世界にあったんだな。全くイメージ通りの見た目である。
1人1人凝視していて気づいたが、僕が横を通るたびにこのメイドさんらは顔を真っ赤にしている。そう、僕は確実にモテている。僕は別に鈍感系主人公ではないからね。これは良い思いとかもできちゃいそーー
「ーー見てんじゃないわよ!!」
その時、20人目くらいのところで、顎に思いっきり蹴りを喰らった。え、え? 僕は尻餅をついたままゆっくり後ろに後ずさる。こわ、こわ! 僕に蹴りを入れた彼女は金髪のツイテール、明らかなツンデレ系だ。
「な、何をしているのあなた!?」
シュナは倒れた僕に慌てて駆け寄ると、そのまま信じられないという顔でツンデレちゃんを睨みつけた。いや今のはどう考えても僕が悪いから、やっぱり僕にモテ期など来るはずもなかった。多分みんな気持ち悪すぎて体温が上がっていただけだろう。
「あなた……死罪で済むとは思わないでちょうだい!」
シュナは鬼の形相でツンデレちゃんを睨んだ。いや死罪の上ってなに!? この子一体何する気なの? 周りのメイドさんたちも驚愕の表情で固まっていた。でもツンデレちゃんはビビることなく、満足げに僕たちを見下した。
「し、シュナ。別に良いから、今のは僕が悪い」
僕は今にも殴りかかりそうなシュナに肩に手を置き、そのままゆっくりと立ち上がった。するとツンデレちゃんは挑発するような表情で、薄く笑みを浮かべて言った。
「神様とか言われてる割に、弱っちいじゃない? ていうか仮面外した姿初めて見たけど、ブッサイクでキモいやつね」
「気に障ったならごめんね。でも許してほしい」
僕はメイドさんたちの目もあるので、少しカッコつけてクールで爽やかに対応して見せた。我ながら寛容な対応だ。
「な、やはりこの女は殺しましょう!!」
シュナなすがるように頼み込んできた。なんかシュナまでスキロスみたいになってきたな。
「度胸がある子は嫌いじゃないよ、なんなら大好きさ。だからそれが本当に度胸なのか試そうか」
僕は彼女に向かって手をかざした。そして少し弱めに風魔法を放つ。弱めとは言っても並の人なら即死レベルのものだ。それは三本の風の斬撃だ。だが彼女は表情一つ変えない。
と、それは案の定結界によって防がれた。
「やっぱりか」
彼女は自慢げな顔をする。
「へっ」
そう、彼女は結界に守られている。だから度胸があるんじゃなく、ただまずまず危険じゃないだけだ。いやアホなだけだ。
「ていっ」
僕は結界に軽くデコピンをした。いやデコじゃないけど。
「はっ?」
すると結界はバリンっと綺麗に割れて、光となって消えていった。こんな弱っちい結界くらい誰でも壊せる。
「自信だけは凄いようだけど、弱すぎるよ」
「そ、そんな……」
彼女は今更恐怖の表情を見せた。アホじゃん。めっちゃアホじゃん。
「まあ、おとなしくお家帰るか、ここに残るかは好きにしてよ」
「そ、それでいいのですか!」
「うんうん」
僕はシュナの言葉に適当に返事をして、自分の部屋に入った。
やっと1人になれた。にしてもすっごいアホだったな。一周回って可愛らしいくらいだ。今日はここで寝よう。昼間だがもう眠い。
僕はベッドに横たわって静かに目を閉じた。




