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「やったわね! あいつ、死体に手をつけずどっか行ったみたいだわ!」


 空腹なこともあってヒュブリスは満面の笑みで喜ぶ。


「やっぱり君も食べたいんじゃん」


 お腹がぐうと鳴り、僕もつられて口元がゆるんだ。


 そんな中、セリウスだけは冷静に何かを考え込んでいた。


「タラクスが負けた……? あの男、あの人ならもしくは……」


「どうしたのよ」


 セリウスはハッとしたような表情を浮かべ、いつも通りに戻った。


「うん、これでとりあえず食料をゲットしたわけだけど、伝承に伝わる生物なんて食べられるのかな?」


「食うしかないだろ」


 まあそりゃ、伝承に伝わる生物とか食いたくないわな。


 日本で言うなら鬼食うみたいなことかな?


 もしくは桃太郎…。


 それは流石にきめぇ!


「まあ、とりあえず僕が味見してあげるよ」


 どっちかと言うと毒味か。


「いや、それは僕にやらせてほしい」


 それはまずい。


 もしここで毒があってセリウスが倒れると、とても気まずい!


 僕が「勇気だせよ」みたいな感じですかしてかっこよく連れてきたのに…。


「いや、僕がやる」


 ここは譲れない。


「本当に君は優しんだね、でもここで君に毒味をさせる訳にはいかない。君にたくさん助けられて、これ以上助けられるなんてカッコ悪すぎてできないよ。今だって、おんぶされているしね」


 セリウスは頬を掻いて少し照れながら言う。


 やめろ、そんな言い方されたら断れない!


「わ、わかった」


 僕がしぶしぶOKすると、セリウスは優しい笑みを見せた。


「大抵足に毒はないから、足を食べてみようか」


 僕はセリウスに足の部分に、ヒュブリスが魔術で作ったナイフのような物で刃を通した。


「っ!?」


 あ、やべ。


「どうかした?」


 セリウスが僕に純粋な顔で質問する。


「い、いや、なんでもない…」


 セリウスの中で少し疑問点が残ったのか、考えるような顔をした。


「まあ、困ったことがあれば遠慮なく言ってね」


 そう言ってセリウスは優しく笑う。


 ふう、僕はやってしまった…。


 力加減を間違えた。


 この鱗みたいなやつ、めっちゃ硬い!


 常人では絶対に切れないような硬さしてるっ。それを当たり前のように切ってしまったのだ…。


 もし他の人がこのタラクスの解体をすることになれば、実力がバレる。


「き、切れたよ」


 そう言って僕はデカめの肉の塊をセリウスに渡す。


 そうするとセリウスは魔法を使い、少し雑な土台を作った。


 土の台座がごつごつと地面からせり上がり、そこに影が落ちる。


「とりゃ!」


 すると、そこに肉を置き炎魔法で加熱した。


 ぱちぱちと音を立て、香ばしい匂いが鼻を刺激する。


「それじゃあ、食べてみるね」


 セリウスの顎から汗が垂れる。


 火の光で光ったその汗が、不安を物語っていた。


 顔に余裕はなさそうだ。


 頼む、毒あるなよ。


 大丈夫なはずだ。強い生物に基本的に毒は無い。


「はむっ」


 セリウスは豪快に肉にかぶりつく。


 肉汁がじゅわっとあふれ、湯気が立った。


 そのまま肉をもぐもぐし、飲み込んだ。


「うん、美味しい! 今のところは何もないよ!」


 セリウスはそう言って、安堵の表現を浮かべる。


 胸をなでおろすようにして笑った。


 ふう、よかった。


 これでひとまず大丈夫そう。


「その肉美味しいの? 早くよこしない!」


 そうして、その後僕たちは肉にかぶりついた。


 焼けた匂いと肉汁の温かさが、ようやく生き延びた実感をくれた。


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