ここはどこ?
「ゴブリン、どこかな〜」
僕はそんなことをつぶやきながら、前を歩くセリウスについて行く。
「ふん、呑気なやつね」
「まあね」
それにしても、昨日のあの一件以来、一度もイロイダと話していない。
ちょっと話しかけてみようかと思ったけど、やっぱりやめておいた方がいい気もする。
イロイダは難しい顔をしたまま、僕の後ろを歩いている。
どうしたものか…。
ゴブリンも全然いないし、なんなら生物自体がすごく少ない。
近くにいるのは空を飛んでいる鳥くらいだ。
何の鳥か分からないから、手出しはしないらしい。
「ねえねえ、セリウス」
「歩くの疲れたよー、おんぶして」
僕がそう言うと、セリウスは少し困った顔をしたけど、了承してくれた。
「……わかった、少しの間だけだよ?」
「うん!」
ふふふ、こいつは使える。今日から僕はこいつに甘えよう!
そう言うとセリウスは屈んで、僕をおんぶした。
「ふう」
それにしても静かだな。
そう思って、僕はヒュブリスの方を見た。
ヒュブリスはヤバい奴を見るような目で、僕をじっと見ていた。
「ああ、そういうことか…。通りで私の告白に頷かないわけだ…」
え? あ、違うよ!?
別にそういう趣味じゃないよ!?
普段は恥ずかしがらない僕だが、少しだけ恥ずかしくなってきてしまった。
「やっぱりおろしてくれ…」
「あ、うん」
僕はセリウスの背中からゆっくり降りた。
その時、木々のざわめきが急に大きくなった。
風はぴたりと止み、辺りに広がっていた鳥のさえずりもすべて消え失せた。
僕はセリウスの肩越しに視線を送った。
「なんだ……?」
湿った土がかすかに震え、葉っぱの間から霧がゆっくりと立ちこめてきた。
鼓動が胸の奥で高鳴るのを感じた。
イロイダも動きを止め、鋭い目で霧の中を見据えている。
そして霧の中から、苔とツタに覆われた巨大な竜の頭がゆっくりと姿を現した。
琥珀色の瞳が僕たちをじっと見つめ、全身がまるで森の一部のように静かに揺れている。
「森を荒らす者か……」
低く響く声が森にこだました。
かっけー! 竜、初めて出会ったわ!
めっちゃでかいな、家くらいあるよこれは。
竜は一歩、森の地面を踏みしめ、僕たちの動きをじっと観察した。
だが、僕たちの足取りや呼吸、緊張の色から、悪意がないことを瞬時に感じ取ったのだろう。
「……敵ではないようだな」
そうつぶやくと、苔むした口元がわずかに緩み、深緑の巨体がゆっくりと霧の中へと消えていった。
セリウスが静かに言った。
「あれは、なんだ…」
セリウスは驚愕したような表情を浮かべる。
「ドラゴン系統じゃない、格が違いすぎる」
「あんな生物、聞いたことがない。よくよく考えれば、こんな森も見たことも聞いたこともない」
セリウスは息を乱しながら語る。
「僕たちは一体、どんなところに来てしまったんだろう…」




