幹部到来
して、そこから時は流れ──気づけば、あたりはすっかり暗くなっていた。
ちなみに話し合いの結果だが、まずは食料の確保について議論した。
虫や魔物を食べるしかない、という意見が出たものの、案の定ヒュブリスが駄々をこねはじめ、話が全く進まなかった。
それを見かねて、セリウスが話題を変えた。
「これからどう過ごしていくか」という内容だ。
「まず、僕たちがここに放り出された理由は、レベルアップと経験を積ませることが目的だろう」
そうセリウスは言った。
「だから、ただ生き残るだけじゃなく、ちゃんと戦闘もしていったほうがいいと思う」
ヒュブリスがまた駄々をこねるかと思ったが、意外にも真剣に話を聞いていた。
そのように話し合いが進み、要約すると──
食料は、魔物の肉や虫を食べられる人はそれを食べ、無理な人はそのへんに生えている果実や野生動物を探して食べる。
これからの過ごし方としては、本当は役割を分担したいが、バラバラに行動するのは危険なので、基本的にはみんなで行動しながら少しずつレベルアップを目指す、ということになった。
そして僕は、もういろいろと疲れてしまい、こっそり抜け出して一人休憩していた。
いやー、星が綺麗だね〜。
僕は大きな一本の木に寄りかかって空を眺める。
ん? なんか、圧を感じるな。
横を向く。
「っ!?」
振り向いた先には、なぜか幹部のスキロスがいた。
いや、なんでこんな近距離で真顔のまま、僕の顔をガン見してんの!?
もう鼻と鼻がぶつかりそうな距離なんですけどっ!?
「え? あ、な、なんでいんの?」
できるだけ落ち着いて、スキロスに問いかける。
「寂しかったから会いに来た!」
「へー、そうなんだね〜」
「じゃねーよ!!」
「なんで勝手に会いに来てんだよ! こっちは実力隠してるの! 怪しまれるような真似しないでよ!」
そう怒鳴ると、思いのほか効いたようで、スキロスは涙目になっていた。
「え?」
正直、僕は驚いていた。いや、だって普通こういう展開だったら
「だって会いたかったんだもん!」
みたいにスキロスが言ってきて
「いや、それだけの理由で来るなよ!」
って僕がツッコム展開じゃないの?
テンプレ無視すんなよなあ。
「ふう……」
僕は大きく息を吸った。
「あのさぁ! まだ百歩譲って、ここに来たのはいいとして!」
「でもさ! テンプレ無視するってどういう神経してんのっ!?」
僕が怒鳴ると、スキロスは目を丸くして、不安そうにこっちを見つめてきた。
「てんぷれ?」
「そう! テンプレだ!」
沈黙が流れる。
時間が経つと、落ち着いてきたぶん、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「こ、こほん…ま、まあ、とりあえず勝手に来ちゃだめだぞっ」
「はい、帰った帰った」
僕は手を仰ぎ、あっちへ行けと促す。
「主人、もう怒ってない!」
「げっ、ぼ、僕は怒ってるよ!」
「主人から申し訳ない匂いと恥ずかしい匂いがする!」
くっ、さすが獣人……鼻が利くな。
「つまり、甘えても怒られない!」
「わ、わかったよ、ちょっとだけだぞ!」
そう言うと、スキロスはその言葉を待っていたかのように飛びかかってきた。
──だがしかし、スキロスは勘違いしている。
自分が甘えられると思っているようだが…。
「おりゃ!」
「ちょ、へ? あ、主人!?」
「もふもふ」
僕はスキロスのもふもふな尻尾めがけて飛びつき、そのまま尻尾をもふもふし始めた。
「ひゃっ……///」
そう僕は、もふもふしたものが好きなのだ!
正確には、ぬいぐるみが好きと言ったほうがいいだろう。
前世ではコ◯トコにいる、でかいクマを五体も家で飼っていたくらいだ。
だから最近は何も、もふもふできなくて欲が限界に達していた!
「うーん、いい触り心地だ」
「あ、主人、ま、まだそういうのは早いよっ……///」
「もふもふ」
「う、うわーん! あ、主人のわからずやー!」
僕が無我夢中でスキロスの尻尾をもふもふしていると、とうとうスキロスは逃げ出してしまった。
やれやれ、逃げ出すなんて臆病な奴だぜ。
まあいいや、そろそろ戻らないとまずそうだし戻るか。




