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暴君

「暴れる?」


 さっきまで黙っていたカルコスが口を開ける。


「ふふふ、そう、暴れる。こんなふうにね!」


 その瞬間、このやばいやつは文字通り暴れ始めた。


 魔力をただ解放する。制御なんてしない。


 すると周囲で小さな爆発が次々と起こり、風圧で木が吹き飛んでいく。


「はっはー!!」


「うわ! ちょっと! なにすんのよ!!」


 ヒュブリスは前髪が崩れないよう手を当て、風に耐えながらそう言う。


「くっ! そっちがその気なら、こっちも戦わざるをえないね!」


 セリウスは両手を前に突き出すと、周囲の空気が一瞬で冷えた。


 地面の水分が引き寄せられるように集まり、彼の手元で渦を巻く。


「フリーズ・スパイラル!!」


 唸るような音と共に、水が高速で回転しながら巨大な槍状に凝縮される。


 それはまるで水の竜巻がそのまま凍りついたかのような威力と密度。


 セリウスの額には汗が滲み、魔力が集中する気配が全身から伝わってくる。


「はぁぁあ!!」


 叫びと同時に、その水氷の槍が音速で暴君に向かって射出された。


 だが——。


「ふふ!」


 暴君の笑い声が響いたその瞬間、槍は触れる寸前で一瞬にして蒸発した。


 まるで空気ごと焼き払われたかのように、水分は白い湯気になって虚空に舞う。


「っ!?」


 セリウスは目を見開く。


「ふふふ、レベルが低すぎる!」


「くっ!」


 セリウスは悔しそうに顔を歪めた。


「ダメだ…悔しいけど…僕じゃこの人に勝てない」


「はぁあ!? ちゃんと私たちを守りなさいよ!!」


 ヒュブリスがセリウスに理不尽にキレる。


「ご、ごめん…」


 下を向いて拳を握るセリウス。その姿は本当に情けない。


「いや! まだだ!

 まだ、俺は戦える!!」


 カルコスはそう言うと、迷いなく暴君へと向かう。


「カルコスくん…!」


 セリウスが尊敬の眼差しでその背中を見つめる。


「くらえ!!」


 叫びながら、素手で殴りかかった。


「はぁぁぁぁあ!!」


「ふっ」


 だが、拳はあっさりと片手で受け止められた。


「っ!?」


 いや、笑う場面じゃないんだけど…普通に何してんのこいつら?


 もしかしてコントでもしてる?


 勝手に攻撃して勝手に負けて…それを2回連続で見せられたら、ちょっと笑いがこみ上げてきちゃうよね。


「はぁあ!? 阿呆なの!? さっきの見て学びなさいよ!!」


「なんでまた突撃してってんのよ!!」


 ヒュブリスは呆れと怒りを混ぜたような声をあげる。


 うん、今回はヒュブリスが完全に正しいわ。


「あ、あの〜」


「ん? って! さっき出て行ったやつ!?」


「あはは〜、邪魔しないように出て行ったのはよかったんですが……よく考えたら、私、生活力が壊滅的にないこと思い出しまして。このまま放置されるとちょっとヤバくて」


 ピスティオは頭に手を当てて、申し訳なさそうに言う。


「今そんなこと言ってる場合じゃないの!!」


「どうかされたんですか?」


「状況見てわからない!?」


 ヒュブリスとピスティオが言い合っている間に、暴君が無言でピスティオの背後に迫っていく。


「ふん!!」


 拳が振り下ろされる。


「いやぁぁあ!!」


 ヒュブリスの悲鳴。


 だが、ピスティオはノールックでその拳を片手で受け止めていた。


「にひひ…」


 ピスティオの顔が、あの最初に見たにやけ顔に戻っている。


「僕に暴力を振るとは、いい度胸だね」


 その声は底知れぬ不気味さと余裕を含んでいた。


「やはり! 君はなかなかに強いようだね!!」


 暴君が感嘆の声を漏らす。


 ピスティオはにやけ顔のまま、さらに笑みを深めて言った。


「そういうのは嫌いじゃないぜ? かまってやるよ」


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