42
一方ノートはというと、精霊の近くに行った後余程体調が優れなかったのかアジトにしているデトワールの近くの廃墟に戻って来ていた。
ノートが何かに痛がる事などこれまでになかったが余程苦しかったのか急いでアジトに戻った後、休息を取る為に普段寝る事などないノートが眠りにつこうとしていた。
「……ダメだなこれは……少し休んだ方が良いか……。意識は失ってしまうが仕方ない……この状態ではそんな事も言ってられないか……。」
ノートは廃墟の2階に移動すると部屋の1番奥の場所まで移動して座った後目をつぶった。
余程頭の痛みが酷かったのかノートは体を元に戻す為に意識が無くなる程深い眠りについた。
ノートの意識が無くなった瞬間、ロートの体にロートの意識が戻った。
「……何だ?どうなってる……?」
ロートは自分の意思で体が動くか確認する為に体の至る所を動かしてみた。
するとロートの体はロートが思った通りに動かす事が出来た。
「……そうか、こいつの意思が無くなったから俺の思い通りに動くようになったのか……?‼︎……そうだ!早くリオーネを助け出さなきゃ!……こいつの意識がまたいつ元に戻るか分からない……もたもたしている時間は無いな……。早くリオーネを助け出さなきゃ!」
ロートはリオーネを助ける為に急いでリオーネが閉じ込められている牢屋の鍵を探しに行った。
「……確かこの辺りのはずだ……随分前だったがあいつはこの辺りに鍵を投げてたはずだ……。」
ロートはリオーネが閉じ込められている牢屋の近くを探して歩いていた。
すると通路の端に無造作に鍵が投げ捨てられていた。
「‼︎……あった……これだ……早くリオーネを助けてやらないと!待ってろよ、リオーネ!」
ロートが牢屋の前まで行くと牢屋の中でリオーネが憔悴しきっているかのように寝込んでいた。
リオーネはロートが来てもロートの方を見ようとはせず、起き上がろうともしなかった。
そんなリオーネの姿を見たロートは慌ててリオーネに声をかけた。
「……リオーネ……リオーネ!俺だ!ロートだ!お前を助けに来た!リオーネ!早く起きろ!ここから逃げ出すぞ!」
「キャー‼︎ごめんなさい!ごめんなさい!許して……。」
「リオーネ……良いか、リオーネ?俺が今から1人で話す。お前は何も言わなくていい。大丈夫、俺はロートだ。お前に何かする訳ないだろ……お前を助けに来た。時間が無いんだ……俺の話を聞いてくれないか?」
「……お兄ちゃん……?」
「……ああ……時間が無い。これからこれまで起きた事を全て話す。その前に牢の鍵を開けなきゃな……ちょっと待ってろよ……。」
「……。」
ロートは牢屋に鍵を差し込んで牢屋の鍵を開けた。
しかしロートが牢の扉を開けてもリオーネは牢の中から出て来ようとはしなかった。
「……リオーネ……。」
ロートはすぐにでもリオーネに牢の中から出て欲しかったが、時間が無いので先に話を進める事にした。
「……リオーネ、聞いてくれ。俺の体は今ノートとかいう化物に乗っ取られているんだ。時間が無いから話を進めるぞ。良いか?」
「……ノート⁉︎ノートってあの伝説上のものでしょ……?まさかお兄ちゃんがそんなものになったの⁉︎」
「リオーネ、落ち着いて聞いてくれ……俺はお前をルヴァンから助け出す為にノートの力を使ったんだ……しかしそのせいで体を乗っ取られる事になってしまった……。だが今は奴が意識を失っていて俺に意識が戻って来たんだ!リオーネ、早くここから逃げろ!またいつ奴が意識を取り戻すか分からない!これまでは1度もこいつの意識が無くなる事なんて無かったんだ!早く逃げるんだ!リオーネ!」
「……。」
ロートの話を聞いてもリオーネはすぐに立ち上がる事が出来ないでいた。
そんなリオーネの様子を察してロートは牢屋から離れて行った。
牢からある程度離れた場所まで行くとロートはリオーネに話しかけた。
「リオーネ、良いか?ミッドガルドという町を訪ねろ。その町にジェダがいる。ジェダは今ミッドガルドの下の町を取り仕切っているんだ。あそこにはデトワールの生き残りも何人かいる。あそこに行けば何とかなるかもしれない。リオーネ、急げ。ノートがいつ意識を取り戻すか分からないんだ。早くしてくれ。」
ロートの言葉を聞いたリオーネは恐る恐る起き上がると牢から出て来た。
「リオーネ、早く行け。大丈夫、俺はここから一歩も動かない。さぁ、早く行け。」
「……。」
リオーネは牢から出るとロートとは反対の方向に向かって走り出した。
しかしリオーネはしばらく走った後立ち止まり、ロートの方を振り返った。
「……お兄ちゃん?あなたは本当にお兄ちゃんなの……?私が知っているお兄ちゃんの感じがした……あなたは本当に私のお兄ちゃんだと思う……。」
するとロートは1つため息を吐いた後すぐリオーネに話しかけた。
「……リオーネ、時間が無いんだ。俺の体もまたいつノートに奪われるか分からない。じゃあな、リオーネ。元気でやれよ。」
ロートのその言葉にリオーネは小さく頷くとロートがいる方向の反対に向かって走り出した。
しかしリオーネはまた立ち止まるとロートに向かって大きな声で叫んだ。
「……ありがとう!お兄ちゃん!お兄ちゃんなら絶対に助けてくれると思ってた!……私も必ずお兄ちゃんを助けに来るから!だから待ってて!絶対に助けに来るから!」
「……リオーネ!早く行け!時間が無い!それに俺の事は良い!絶対に助けに来るな!絶対にもう振り返るなよ!時間が無いんだ!」
その言葉を聞いたリオーネはまた小さく頷いた後、ロートがいる方向の反対に向かって走り出して行った。
「……じゃあな、リオーネ……達者で暮らせよ……。」
ロートは2階からリオーネが廃墟から出て行ったのを見届けると奥の部屋へと戻って行った。
「……さぁ、後は俺の役目だな。……こんな事態に陥ってしまったのは俺の責任なんだ……俺の手でこんな馬鹿げた事は終わらせてやる!」
するとロートは立ち上がってどこかに何かを取りに行った。
ノートが眠っている間にロートは一体何をしようとしているのか?
そしてロートの力で本当にノートを倒す事は出来るのだろうか?




