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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第九十五話 最後の課題です──旗を立ててました


 最初の遠距離攻撃から始まり、近接での早撃ち、魔法の持続力、連射と様々な課題が出されていった。どれも戦闘に於ては基本的な項目であるが、こうも連続で行っていくことは今まで無かった。


 この合同授業。単純にそれぞれの項目をこなすだけではない。長時間の魔法使用による魔力や集中力の低下も加味し、その上での実力を量ろうというのだろう。


 今日は一日を使っての授業だ。ペース配分を考えないとバテてしまう。後半になっていくと、投影のキレや躯に動きに繊細さを欠く生徒が増えていった。おそらくは前半の課題に力を入れすぎたのだろう。


 俺のグループにも一人いた。


 半ば予想通りであったが、ラトスは膝に手をつき肩で息をしている。


「だから言っただろうさ。ペースを考えろって」

「う、うるさい。放っておいてくれ。っていうかずるいよ。魔力を常に回復できるなんて反則じゃ無いか」


 言い返すラトスだったが言葉には力が入っていない。


「俺の場合『瞬間回復』がねぇと魔力がもやしっ子だからしょうがねぇだろ。つか今は俺のことよりお前だ」

「だからうるさいってば」


 ラトスの魔力は決して少なくは無いが、今日はどうにも肩に力が入り気味だった。


 原因はテリア。


 とはいうがテリアが悪いのでは無く、ラトスがテリアを一方的に目の敵にしているからだ。


 テリアは出される課題の全てを難なくこなしていた。俺を除けばこのグループの中では間違いなくトップ。そして、その次に優れていたのはラトスだったのだが、今一歩のところでテリアに負けていた。


 別にテリアがラトスに対して見下した態度をとっているとか無為に成果を誇っている風ではない。むしろ淡々と課題をこなし、己の出来に満足でありつつも、要所の至らなさへの小さな不満感を抱いているところは非常に好感が持てる。


 そんなテリアに、ラトスは異様に対抗心を抱いている。合同授業の最初の意図である『新たな刺激』がラトスの場合、悪い方向に傾いてしまっていた。その結果、肩肘を張ってしまい余計な体力、魔力を消費している。


 傍目から見れば明らかなのだが、さすがにそれを指摘するのははばかられた。ラトスのことだ。実際に口にすれば余計に意地を張るに決まっている。最悪、こちらの言葉を完全に聞かなくなるシャットダウンする。


 だったら遠回しながらに諫めるしかないのだが、効果は薄い。


 幸いにも今日の授業も終わりに差し掛かっている。


 このまま何事も無く終われば言うことなしだ。


 ──ん? もしかして俺は余計な事を考えたのではないか?


 背筋がヒヤリとするような嫌な予感を覚えつつも、授業は終盤へと突入した。


「最後はグループ内で模擬戦を行います。一人につき最低一度は戦うように」


 ヒュリアが口にした最後の課題に、生徒一同の反応はおおよそ二通りだった。


 やる気を出す者と肩を落とす者だ。


 前者はペース配分を考え、今現在も余裕がある者。


 後者は逆に、もはや集中力も魔力も限界の者。


 もちろん例外もいる。


「…………はぁ」


 別グループにいるミュリエルは案の定、最後の課題に溜息をついていた。時折様子を見ていたが、教師に不真面目ととられない程度に手を抜いていた感があったしな。


 今日は一日中、魔法を扱う上での根本的な技術の訓練だった。その集大成として模擬戦を行うのは理に適っている。 


「ただし、扱う魔法は初級魔法に限らせていただきます。ここは学校内にある闘技場とは違い『夢幻の結界』がありませんので」


 引率の教師の中にも回復魔法を扱える者はいるが、万が一の為の配慮だろう。


 それと、とヒュリアは忌々しげな視線を俺に向けた。


「ローヴィスさん。あなたはあの超化エクステンドとかいう魔法は禁止しますので、その辺りをよろしくお願いします」

「うっす」


 超化エクステンドを使った数々の魔法は、威力や効果だけを見れば中級や上級魔法に匹敵する。その辺りを禁止するのは妥当なところだろう。俺は素直に受け容れた。


 ──それから各グループで模擬戦が始まった。


 俺は真っ先に、同グループになった一般クラスの生徒に勝負を挑まれた。学年主席の実力を味わいたいとのことだ。


 ご希望通り、俺は防壁シールド手甲ガントレットだけを使用して模擬戦に応じる。結果は俺の圧勝。放たれる魔法を手甲ガントレットで叩き落としながら間合いを詰め、俺の拳が相手に届く寸前でゼストから俺の勝利判定が下された。


「くっそぉ、さすがに無謀すぎたか」

「わりぃな、そう簡単には負けてやれないんでな」

「けど良い経験をさせてもらった。ありがとう」


 対戦相手の生徒は悔しげながらも充実した顔をしており、こちらに礼を述べながら手を差し出してきた。俺はそれを握り返した。


 後には、残った一般クラス生徒とノーブルクラス生徒が模擬戦を行う。


 その最中に呼吸を整えながら、俺は他のグループの様子を伺う。


「うわぁ……。アルフィの奴、大人げねぇだろちょっと」


 四つ四属性の魔法を同時に投影し、相手になっている男子の顔には半分泣きが入っている。今し方、俺と相手をした生徒と同じで胸を借りるつもりだったのだろうが、挑んだ壁はいささか高すぎたようだ。


「あ、終わった」


 三つまではどうにか迎え撃ったが、最後に残った炎弾フレイムバレットをくらい、男子が吹き飛んだ。


 カディナもミュリエルも似たようなもので、挑まれた模擬戦に対応している。ミュリエルの奴は心底面倒くさそうな顔をしていたが、さすがにわざと負ける気はないようだ。


 そうこうしていると俺のグループの模擬戦も一つ終わる。辛うじて一般クラスの生徒が勝負を制した。単純な実力ではノーブルクラス生徒の方が高かったが、コレまでの授業でかなり消耗していたようで、そこを突かれて押し切られた形だな。


 さて、次の模擬戦はと。


「リース、もし良かったら相手になってくれないか?」


 テリアから声が掛かった。一人最低一戦ということで、逆を言えば二戦以上しても構わないと言うこと。鍛え上げた体力と魔力の瞬間回復がある俺は他に比べて圧倒的に余裕があった。


 言葉を返そうとする俺だったが、それよりも先に別の方から声が上がった。


「待ってもらおうか、テリア・ウォルアクト!」


 声がした方を向けば、張り詰めた表情のラトスであった。


前回の感想に


『リースのネタ枠魔法って、他の魔法塚にとっては秘奥儀レベルじゃね?』という意見がありました。


確かに有用性はあるでしょうが、リースは後衛で援護するような魔法使いではなく、ゴリゴリの近距離戦特化型の魔法使いな上、戦闘は『一対一』が基本と考えているので使うのに隙が多すぎる魔法というのは基本的に『作ってみるだけ作ってみた』な認識です。



『大賢者の愛弟子』を読んでいただきありがとうございました。

当作品を気に入ってくれた方、よろしければ小説下部にある『評価点』をいただけると幸いです。

執筆の励みになりますので是非よろしくお願いします。

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