第八話 誰かが言った。『大丈夫だ、問題はないだろう』──担任の登場です
ダークソウル3(以降『闇魂三世』)がヤヴァイ。
七話と八話は結合しても、文章量と内容的に問題なかったかもしれません。ただ、そうすると更新が遅れすぎたのでこんな形に。
ジーニアス魔法学校における生徒のクラス分けは基本的にランダムだ。あるいは学校が何かしらの意図を持って振り分けているかもしれないが、少なくとも生徒側がその『意図』を計ることはできない。
ただ一つだけ、所属するだけで大きな意味を持つクラスがある。
それが『ノーブルクラス』。
入学試験にて極めて優秀な成績を納めた者のみを集めた、学内の精鋭クラスだ。飛び抜けた能力を持つ生徒を、他の多くの生徒と一緒くたにすれば足並みが揃わずに、教育する側にもされる側にとっても弊害が出てくるとのことでこのようなクラスが設けられたのだ。
お気づきの方もいらっしゃるだろうが、俺もアルフィもともにこのノーブルクラスに所属することとなった。つまり、平民である俺たち二人は『高貴』なクラスにいるのである。妙な話だ。
「……なぁ親友、ちょっと聞いていいか?」
俺は教室に並ぶ机の席に座りながら、同じく隣の席に座るアルフィに声を掛けた。たかが席と侮るなかれ。作りこそ勉強机なのだが、所々に職人技が光って見える。机だけではなく、教室内の全てが『むしろ教室なのか?』と言いたくなるほどに凝った作りをしていた。しかも床はフカフカの絨毯が敷いてある。このクラスに向かう最中に他のクラスもいくつか見てきたが、ここまで豪勢な作りではなかった。
「お前と兄弟分になった記憶はないぞ。で、何だ?」
否定はしつつも聞き返してくれるこいつは本当に良い奴だ。
「俺はどうして超睨まれてるんだ?」
教室に入ってから空いている適当な席に座ってからアルフィに声を掛けるまでの間、俺は嫌悪とも憤怒ともとれる強い視線を教室内にいる他の生徒たちから注がれていた。
「本気でそれを言っているなら、お前は記憶力に致命的な欠陥があるな。今からでも遅くない。医者に診てもらえ。幸い、この学校の保険医は優秀らしい」
「残念、入学筆記試験で満点を取れる程度には記憶力に自信はある」
「満点」と口にした途端、俺が教室には行った瞬間から注がれていた多くの視線がさらに険しさをました。とてもではないが「お友達になりましょう」という感じではない。むしろ「血祭りに上げてやろうか!?」といった具合か。
……「掛かってこいやこらぁぁ!」とでも返すのが礼儀だろうか?
「(やめろ本当に頼むから最初の授業が始まる前に問題起こさないでくれマジで!)」
おっと、思っていたことが顔にでていたのか、アルフィから小声でありながら必死な様子で止めにきた。彼に言われたのならば惜しくはあるが今のところは自重するしかあるまい。
ーービリッ。
注がれる視線の中に、一際鋭さを秘めた視線があった。他の視線が弓から放たれた矢と例えるならば、こちらは攻城戦用の巨大弩だ。視線の着地点が痺れそうだ。
なるべく顔を合わせずに、横目でちらりと視線の元をたどる。発生源が誰かはすぐにわかった。入学式で俺が教壇で啖呵を切ったとき、ものすごい形相で睨んできた美少女な巨乳ちゃんだ。というか、彼女を取り囲む一角だけ、巨乳ちゃんの尋常ではない『殺気』の余波に当てられて涙目になっている。こちらを睨んでいられるような精神的余裕は皆無だった。
しかし、視線が戦略兵器級なら、胸部も戦略兵器級だな。他の女性とを圧倒し、少し身を乗り出せば制服を窮屈そうに押し上げる二つの山が机に乗っかりそうだ。多分、今まで見てきた中ではトップかそれに近いだろう。バランスを考えれば随一かもしれない。
個人的には是非お近づきになりたいが、これだけ敵視されていてはそれも難しいだろう。どうやら彼女は、俺がいなければ入学成績の最優秀者になっていたと言うしな。プライドも高そうだし、仲良くなるのは簡単ではないだろうな。
(ま、アルフィと仲良くなれた実績もあるし、何とかなるでしょ)
楽観的な結論に至ったところで、教室の扉が開かれた。俺に集中していた敵意が一時的に消え、そちらに集中する。
入ってきたのは、くたびれた白衣を着る無精ひげを生やした男性。
俺の入学試験の時に採点を担当していたゼストという教師だな。彼は黒板前の教壇に上ると、教室内の生徒たちを眠たげな目で見渡してから口を開いた。
「とりあえず、全員が揃っているという前提で話を進めるからな。入学式で軽くは言ったが改めて自己紹介だ。俺の名前はゼスト。この度、非常に不本意ながら、このノーブルクラスを担当することになった。以後ヨロシク」
やる気の無さを全く隠さない態度に『こんな教師で大丈夫か?』という空気が流れた。それを察したゼストは頭を掻きながら溜息を吐いた。
「本来であるならば、ノーブルクラスの担当はヒュリアのお嬢が担当する予定だったんだがな、ちょいと込み入った事情があって奴は別クラスを担当することになった。気になる奴は……まぁ、各自で調べろ」
言ってから、ゼストは視線を『俺』に投げかけてきた。
ヒュリアとは確か、実技試験で相手をした女性の名前だ。
……まさか、入学試験で『負けた』ことがショック過ぎたのか。だとしたらメンタル弱すぎるだろ。隣から「早々にこいつの犠牲者が……」とか聞こえたが、もちろん気のせいだ。
「不本意とは言ったが、任された以上は担任としての職務を全うするつもりだ。給料泥棒とは言われたくないんでね」
真面目か不真面目なのか微妙に判断に困るセリフだ。少なからず不満げな視線を向ける生徒がいるも、ゼストは意に介する様子もなく続けた。
「それじゃぁ、最初の授業だ。つっても、堅苦しい入学式で教師も生徒達も疲れてる。今日はほとんど連絡事項を伝えるだけで解散だ。明日には学内の施設を案内して終わって、本格的な授業が始まるのは明後日からだ。……つか、昨日は徹夜で研究してて眠いんだわ俺。さっさと家に帰って寝たい」
『こんな教師で本当に大丈夫か?』という微妙すぎる空気をマルっと無視し、ゼストは以降の連絡事項を黒板の板書を交えて説明を始めた。隠さない不真面目さとは裏腹に、非常に丁寧で聞きやすい内容だった。学校長直々に「信頼できる教師」と聞いていたが、もしかしたらなかなかに優秀なのかもしれない。明後日以降の授業は期待しよう。
コーヒーを飲みすぎたせいか、寝る前にがっつり飲んでもぐっすり眠れるナカノムラです。
読者さんから『キャラ設定』の要望があったのですが、出すとしたらもうちょいキャラが増えてからの予定です。メインヒロインが決まったら考えようと思っています。
『カンナのカンナ 〜間違いで召喚された俺のシナリオブレイカーな英雄伝説〜』
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