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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第七十九話 入れ替え戦ですが──割り込みのようです

 

 ──試験結果が発表されてから数日後。


 ノーブルクラスに在籍する男子生徒の一人が『決闘』をする話が流れてきた。タイミング的に、ラトスが希望していた『入れ替え戦』だろう。


 ノーブルクラス側の生徒は残念ながらそれ程知った仲ではない。そのため彼には失礼だが、繋がりの深さから言ってラトスを応援する気持ちの方が強かった。


 そして放課後になり、試験明け最初の『決闘』が行われることとなった。


 普段の面子おれたち決闘場アリーナの観客席、その一角に陣取っている。別に席を確保していたわけではないのだが、ノーブルクラスにおけるトップたちの顔は知れ渡っているようで、いい席を探していたらそのあたりに座っていた生徒が自然と席を譲ってくれたのだ。


「……眠い」

「ウッドロウさん。また徹夜したのですか。寝不足はお肌の天敵ですよ? そんなに眠いなら部屋に戻って寝てれば良いでしょうに」

「それは駄目。ガノアルクは友達。友達の頑張る姿はちゃんと見届けて……zzz」

「言ってる側から寝ないでください」


 席に座るなりこくりこくりと船を漕ぐミュリエル。カディナが起こそうと肩を叩く。

 

 この二人、いつの間にか仲良くなってるな。


 初対面では高圧的な態度を取っていたカディナだったが、実は面倒見が良いことがここ最近で分かってきた。一方でミュリエルは見ての通りちょっと手の掛かる子供みたいなところがある。


 手の掛かる妹とそれを世話する姉みたいな雰囲気だ。もっとも、お互いにそんな関係を悪く思っていないからこそ、この短期間で仲良くなれたんだろうけど。


 ふと、俺はアルフィの方を向いた。


「…………」

「おい、その目は何なんだよ」


 俺とアルフィこいつの場合、兄と弟の立場はどう割り振られるのか。


 ……こんなイケメンと兄弟とか、絶対に嫌すぎる。


「何も言わなくても絶対にろくな事を考えてないのはよぉく分かった……表出ろ」

「いや、もう表ですけどね。魔法を投影しようとするのはやめれ」


 アルフィは一見すると理性的で落ち着いた雰囲気のイケメンだが、割と熱くなりやすいタイプのイケメンだ。


「リース・ローヴィス。よろしいでしょうか」

「ん?」


 無理矢理に起こすのは諦めたのか、完全におちたミュリエルを放置したカディナがこちらに問いかけてきた。


「あなたは、今回の決闘をどう見ていますか?」

「ラトスが勝てるかどうかって話か」

「相手の男子には悪いかも知れませんが……」


 同じノーブルクラスとしては少々の心苦しさはあれど、個人的にも知り合いっているラトスに勝って欲しい気持ちが勝っているのだ。


「単純に考えりゃぁラトスの圧勝だな。この前の試験結果でも、ラトスがノーブルクラスの中盤に食い込んでるのに対して、相手の男子はクラス落ちギリギリのラインだったからな」

「……その言い方ですと懸念がおありのようですが」

「あいつが土壇場でヘマしなけりゃぁな」


 俺との決闘ではサラシが千切れた事に全く気づかず、入学試験でも(想像だが)話を聞く限り、似たような事態に陥っているはず。原因はどっちも、あの豊かすぎる隠れおっぱいだな。

あれだけの『たわわ』を男の胸筋と同じくらいに締め付けるとか──損失だよなぁ。


 とはいえ、ラトスは俺がラトスあいつの性別に気が付いていることを知らない。追求できないので諦めるしか無い。


「誰が土壇場でヘマをするって?」

「そりゃお前、あの青髪に決まって──」


 ──ちょっと待て。今の声は……。


 背後から聞こえてきた声にそちらへ振り向くと。


「ラトス!? おまえなんでここにいるんだ!?」


「え?」とアルフィとカディナが振り向く。俺の声でミュリエルも目が覚めたのか、いるはずのない人物がこの場にいることに若干目を見開いた。


 そこには見知った青髪──ラトスが腰に手を当てて立っていた。


「ガノアルクさん、これから『決闘』ではなかったのですか?」

「──(コクコク)」


 カディナに同調するように頷くミュリエル。二人の反応を見たラトスが嘆息する。


「ああ、やっぱりみんな勘違いしてたみたいだね」


 ラトスは俺の隣に腰を下ろすと、不機嫌そうに腕を組んだ。


「今回の『決闘』は僕が挑んだものじゃないよ……不本意ながらね」

「随分と機嫌が悪いな」


 むくれるラトスに気の毒そうにアルフィが声を掛けた。


「当たり前じゃ無いか。いよいよ僕もノーブルクラス入りを望めるって時に、急に割り込みがあったんだからね。機嫌も悪くなるさ」


「割り込み」という言葉に、ラトスを除く他の面子が揃って首を傾げた。


 そうこうしているうちに、決闘場アリーナに二人の男子生徒が足を踏み入れた。


 片方は、俺たちも見覚えがあったノーブルクラスの生徒。


 今回の『決闘』の如何いかんでクラス落ちが決定するのだ。緊張した面持ちで決闘場アリーナの中央へと歩を進めている。


 問題は彼の対戦相手の男。


 まだ他学年への『決闘』は行えないから、とりあえずは同学年なのだろう。ただ、同い年にしては少し大人びいている雰囲気の男子だ。


 ラトスの言う〝割り込み〟をした張本人らしいが。


「アルフィ。あいつ見たことあるか?」

「無いけど……」

「ちっ、使えねぇイケメンだ」

「お前は人を何だと思ってる!?」


 カディナやミュリエルの方を見るが、こちらも見覚えが無い様子。ラトスも同様で、顎に手を当てて唸っている。


『今回の『決闘』は、一年ノーブルクラス在籍トム君と、挑戦者による『入れ替え戦』です。トム君が勝利すればノーブルクラスに残留。挑戦者が勝利すればトム君はノーブルクラスから一般クラスへ移動し、挑戦者が新たなノーブルクラス在籍者となります』


『決闘』の前に行われる実況放送が決闘場アリーナに流れた。俺やアルフィの『決闘』をよく実況しているハイテンション極まりないサラドナとは違った、落ち着いた口調の女性だ。


 普段ならここで『決闘』を行う生徒の軽い解説が行われるのだが……。


『挑戦者の強い希望により、挑戦者の詳しい解説は『決闘』が終了した後に。またそれに伴い公平を期するためトムくんの詳しい情報も伏せる形になりましたので、ご了承ください』


 今までに無い展開に、観客席がざわめく。


 ──どうにも、妙な展開になってきたな。


 俺は確信めいた予感を抱きながら、『決闘』の開始を黙って待った。



なろうラジオの日にちが近くなってきました。

いまからちょい緊張気味です。


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