第七十四話 試験前です──正直羨ましい
新章突入!
長らく待たせてゴメンなさい!
今後もどうにか更新していきます!
多分不定期だけど!
ジーニアス魔法学校が中間試験の期間に突入。それにより、試験の全課程が終では生徒同士による『決闘』は全面的に禁止されることとなった。
そして、普段は決闘でのみ使用されている決闘場も、試験期間には訓練場の代わりとして解放されることとなった。
というのも、試験内容には魔法学校だけ合って当たり前のように『魔法』の科目があり、当然筆記だけでは実技試験もある。
訓練場は毎度試験対策の生徒たちで定員一杯になり、それでも収容しきれなかった者たちが決闘場を訓練場代わりとして使うのだ。
『決闘』はジーニアス魔法学校に通う者たちにとっては馴染み深い。一年生達の間にも既に深く浸透している。かといって実際に決闘を行った者は全体の一割か多くて二割弱程度。観客席から決闘を観戦していた者が大半だ。
だからだろう。訓練場代わりに決闘場に入った多くの者が、目で辺りを見渡している。壇上から決闘場を見ることに物珍しさを感じているのだろう。
「まぁ、普段から俺たちはどっちも使ってるからあんまり新鮮みは無いわな」
俺は無属性防御魔法である『防壁』を弄くりながら呟いた。今はお手玉の形にしてぽんぽんと上に放り投げてはキャッチしまた放り投げる、といった行為を続けている。
一見して遊んでいるように見えるだろうが、複数のお手玉の形を維持したまま、それらを地面に落とさないようにキャッチ&リリースを繰り返すというのは魔力だけでは無く手先の制御も加わってかなり集中力を要する。
自分で言うのも変だが、こう見えても俺はジーニアス魔法学校一年生の中では主席である。そして、その座を譲るつもりは未だに無くこうして真面目に魔法の訓練を行っているのである。
そう。頂点とはつまり並び立つ者がいない存在。孤高でありその前にあるのは虚空のみ。ただただ一人、己を極めるために邁進する者なのだ。
だから──。
「ねぇライトハート君、ちょっと教えて欲しいんだけど」
だから──。
「ガノアルク君。私の魔法見てくれないかな」
だから!
アルフィとラトスが女子生徒に囲まれている光景を見てちっとも羨ましくない!
やっぱり嘘! 凄く羨ましいです畜生!!
「……リース、リース」
「どうしたミュリエル」
「握りつぶしてる」
「ん? ……おおっ!?」
ミュリエルが指摘すると、俺の手は防壁お手玉を見事に握りつぶしていた。
おかしいな、強度は低く設定していたが、それでも簡単に人間の握力でつぶせるほどじゃぁ無かったはずなんだが。
不思議だなぁ。
……ちょっと荒ぶって力が入りすぎたようだ。
とにかくちょっと落ち着こう。
俺と一緒に試験対策として魔法の訓練をしに来たアルフィとラトスなのだが、来て早々にそのどちらの周囲にも魔法を教わろうとする女子でいっぱいになってしまったのだ。
……なんなのちょっとこれ。
そりゃアルフィは総合成績は一年生の中で三位。イケメンだし人当たりも良いしついでに四属性。そんな奴に何かしらを教わろうとする者が多いのは当然だ。
ラトスもノーブルクラスでは無いがおそらく魔法の腕前はノーブルクラスの上位に食い込むほどだ。魔法の制御力に限れば一年生でも十指に入るだろう。
ついでに、二人とも中間試験前まで俺と同じく何度も決闘を行っており、その顔は広く知れ渡っている。その容姿のせいか、女子からの人気は非常に高い者となっている。片方はちょっとアレだが、先入観がなければ中性的に整った好青年にしか見えない。
冷静に考えれば、二人の周囲に人が集まるのも無理は無い。誰だって、カッコイイ異性に者を教わりたいと考えるのは自然だ。
ただ言わせてくれ。
繰り返しになるが、俺は一年生で主席だ。それを殊更に喧伝するつもりも自慢するつもりもない。成績の良さを笠に着て誰かしらに無体を働いた事も無い。ノーブルクラスは貴族生徒がほとんどだが、彼らとの関係も比較的良好のはず。
なのにどうして──。
「俺の周りには……誰もいないんだ……」
ちょっとした絶望感が言葉に乗った。
決闘場に入り、訓練を初めて早々にアルフィとラトスの近くには人が集まりだした。だが俺のところには今まで誰も近寄ろうとしない。ノーブルクラス以外の生徒がこちらを見ても、少し指差してヒソヒソと話し合うだけで俺の方に来る気配がまったくない。
たまに女子生徒と目があうのだが、なぜか目を逸らされる。
この差はなんなんだ!?
学年一位の実績を持ってしても近くのがためらわれるほど俺は不細工なのか!? 男としてちょっと自信なくしそうですよ!!
「──? 周囲を気にせず魔法の練習に集中できる。良いことじゃないの?」
本気で分からない様でミュリエルがコテンと首を傾げた。体付きは我が儘なのにこの小動物じみた仕草がちょっとあざといくらいに可愛い。でもって本人は完全に無自覚というのがかわいさを更に引き立たせる。
ちなみに、彼女もラトスやアルフィと同じで一緒に決闘場に来た一人だ。そして、他にも一緒に来た人物がいる。
「ウッドロウさんの言うとおりです。それにアレは魔法を教わりたいというよりも、ただ単にあのお二人とお近づきになりたいだけでしょう」
腕を組みながら呆れたように言うのは、俺と一緒に来た最後の一人であるカディナ。腕を組むのはおそらく無意識の動作なのだろうが、拍子に腕の上に胸が乗ってたわわが強調されます。どうもありがとうございます。
先日から何かとカディナと話すようになり、その流れで今日も一緒に訓練場に来た次第だ。
せめてもの救いは、こんな美少女二人が俺の近くにいることだろう。そうでなければ、俺は今頃あの二人に特大の重魔力砲をぶち込んでいたに違いない。
──リースの側に誰も寄りつかなかったのは、学年で屈指の美少女であり、魔法使いとしても学年でトップ近くの実力を持つ人物が二人もいる。それで誰もが萎縮してしまった事が最大の原因だったのだが、当のリースは(ミュリエルとカディナも含め)まったく気づくことはなかった。




