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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第六十話 我慢します──変わりすぎでしょう

山梨あっついなぁ!!


 ──手の内バレてるな、これは。


 何度目かになる接近を防がれてから、俺の中にあった疑惑は徐々に確信へと至っていた。もちろん、俺もそれを見越した上であえてミュリエルの手管に乗っていたのだが。


「ちょっと試してみるか」


 最後の証明を行うために、俺は手を打つ。


 歯を噛みしめ、心身に活を入れた。


 そして──。


加速ブースト!!」


 背後に反射力場を二枚具現した。


炎壁フレイム・ウォール


 まるで申し合わせたようにミュリエルが炎の壁を投影。速度を得る直前の俺を炎の壁が阻んだ。


「あっづぁぁぁぁぁっっっ!!」


 全身を灼熱が覆い激痛が走る。決闘の開幕時にはこの時点で加速ブーストの制御を手放してしまったが──。


「──ッッッ!?」  

「づぁらぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 文字通り焼けるような痛みを気合いで耐え抜き、加速ブーストで集めた圧縮魔力を解放。


 俺の躯が炎の壁を突っ切り、加速ブーストで得た勢いのままにミュリエルへと突貫する。


 まさかこんな根性技で炎壁フレイム・ウォールを突破するとは思っていなかっただろう。ミュリエルの息を呑んだ表情が窺えた。


手甲ガントレット!」


 右手に魔法を投影。加速ブーストの勢いが乗った今なら、大地戦槍ガイアランスでも大地隆起アースウェルであろうとも粉砕し、その先のミュリエルを穿てる。


「──でも、その魔法ブーストを使った時点で貴方の失敗は揺るがない。『地震波グランウェイブ』」


 地震波グランウェイブ──大地を波打たせるだけの魔法。炎壁フレイム・ウォールと同じく相手の動きを阻害する魔法なのだが。


 ミュリエルが選択したのは、迎撃でも防御でもなく〝回避〟。彼女の足下に魔法陣が投影すると、その付近の地面が波打ち、彼女の躯を一気に真横へ押し出した。


「ちょっ、おぃぃぃぃっっ!?」


 加速ブーストは最高速こそ出るが、速度に乗ってしまうと急な方向転換ができない。ミュリエルが横に移動してしまったために目標を失い、俺は勢いそのままになにも無い空間を突っ切ってしまった。


「うぉお、やべぇっ!」


 このまま加速ブーストの勢いを継続すると壇上から飛びだし場外負けになってしまう。俺は慌てて地に足を付けて急ブレーキを掛けた。


 靴底を地面に擦りつけながら場外に出る前に止まることができたが、そこへミュリエルが追い打ちを掛ける。


拡散岩砲ワイドロック

「──ッ、いだだだだだッ!」


 咄嗟に手甲ガントレットを纏った右腕で頭部を守るが、それ以外の部分は広範囲に発射された石の礫に晒されて痛みが走った。体を鍛えていない魔法使いだったらこの時点で戦闘不能に陥っていただろう。


 幸いに、日々の鍛錬で頑強度を上げていた俺の躯は耐えきったが、そう何度も食らいたいとは思えない。


 岩の散弾が途切れたのを見計らい、俺は手甲ガントレットを解除。


 それから、大きく息を吸い込んだ・・・・・・・


拡散岩砲ワイドロック


 ミュリエルが同じ魔法を投影。


「二度目は喰らうかよ! 防壁シールド!」


 両手を前にかざして六角形ハニカム防壁シールドを展開。拡散放射された岩の弾丸を防ぐ。広範囲に拡散する魔法の一発一発は威力が低い傾向にある。至近距離であるならともかく、距離が離れていれば防壁シールドで簡単に防げる。


「ふぅぅ……痛たたたた」


 防壁シールドでミュリエルの魔法を防ぎつつ、その前に喰らった拡散岩砲ワイドロックの痛みを呼吸を整えて緩和させる。


 ジーニアスに来て、他の生徒と『決闘』を何度も繰り広げてきたが、真面まともに攻撃を受けたのは初めてかも知れない。


 今の攻防で確信に至った。


 ミュリエルの奴、間違いなく俺の『特性』を──。


「────ッ」



 ──ゾクリと、俺の背筋に震えが走った。



 半透明な防壁シールドの先に佇む人物を見て、俺は目を見開いた。



「……くくくっ」



 ミュリエルが──笑っていた。



 いつもは眠そうな目が今は強く開かれ、ギラギラとしたものへと変わっていた。普段は最低限の言葉しか喋らない口は、その端を大きくつり上げ三日月を作っている。


 時折見せる微笑とは一線を介する、狂気すら孕んでいそうな強烈な笑みだった。


 防壁シールドを解き、俺はミュリエルと対峙する。


 彼女は一瞬だけ顔を伏せてから。



「あはははははははははははははははははははははっっっ!!」



 仰け反るようにして天を仰ぎ、両手を広げて高らかに笑った。


「これまで半信半疑だったけれど今確信した! 私の仮説は正しかった!! まさか貴方のような常識外れが存在していたなんて考えもしなかったわ!! あははははははは!」


 勢いよく躯を反らした拍子に大鉄球おっぱいがたゆゆんと揺れたが、それを凝視している余裕は俺には無かった。それよりも、彼女ミュリエルの変貌ぶりに度肝を抜かれていた。


 ──私は興奮すると〝人が変わる〟らしい。


 決闘が始まる直前の言葉を思い出したが。


「〝人が変わる〟って、比喩じゃなかったのかよ!?」


 興奮してテンションが上がるってレベルじゃねぇぞ。しゃべり方まで変わってるぞ!


 俺の顔が引きつらせている中、ミュリエルは一頻りに笑ってから小さく呼吸を整える。


「……ずっと疑問に思っていた」


 半ば独白するように、彼女は語り出した。


「いくら手段を駆使して防御魔法の魔力効率化を図っても、それは結局他の属性と消費量の釣り合いが取れるようになる程度。あれだけ頻繁に魔法を駆使していれば直ぐに魔力の枯渇を引き起こす。けれど、これまでの決闘の最中、貴方は魔力枯渇それを起こす気配がまるで無かった」


 そして──ミュリエルの口から語られるのは、俺の〝特性〟の真実であった。

テンション上がったミュリエルちゃんは、狂科学者的なノリに進化します。


ここしばらくめっちゃ忙しかった。そんなわけで二週間も空いて申し訳ないです。

だからというわけではありませんが、明日と明後日も更新していく予定ですのでお楽しみに。


さて、前回もご報告した通り本作『アブソリュート・ストライク』が書籍化いたします。

すでに編集さんとは色々と話は進み、絵師様からキャラクターのラフを見せていただいております。

毎回のことながら、キャラの絵を見るたびに感動に震える始末です。

編集さんの許可が下り次第そちらも公開していきますのでお待ちください。

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『大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜』
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大賢者pop
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