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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第五十二話 実はまともな会話は初めてです──1たゆん、もらいました

およそ半月と少しぶりの更新です。みなさんお待たせして申しわけ有りません。


今回はようやくあの子の回です。



 

 ミュリエルとの決闘を翌日に控え、俺は最後の調整のため放課後に訓練場へ赴いた。

 

 やることは基本的に普段の鍛錬と同じだ。鍛錬で成果を挙げられなければ本番で結果を出すことはできない。〝いつも通り〟を意識的に行うこともまた大事なことだ。

 

 訓練場に足を踏み入れると、いつもと様子が違った。すでに別の生徒が何人かいたのだが、その誰もがとある一点を見据えて呆然としていた。


 ──ドォォォォォンッ!!


 文字通り、空気を震わせる音が訓練場の中に木霊した。


 訓練場は他の施設への被害や迷惑を考慮し、防音効果を含んだ結界が施されている。でなければ、こうした大音量で近所迷惑必至だからだ。


 生徒たちの視線を集めている場所。今の音の根源に目を向けると、一人の女子生徒が佇んでいた。


風砲弾エアカノン!」


 投影された魔法が解放され、訓練場の端に置かれた横並びの的に着弾。圧縮されていた空気が解放され、訓練場にまたも爆音が轟いた。女子生徒は更に同じ魔法の投影を重ね、次々に別の的へと命中させていく。


 風砲弾エアカノン風弾エアバレットよりも上位に位置する風属性魔法。威力は風弾エアバレットよりも上だがその分投影に時間が掛かる。投影速度を意識しすぎると投影そのものが甘くなって威力が低下したり狙いが甘くなったりする。もっとも、これはどの魔法でも同じだ。


 だが、女子生徒──カディナは風砲弾それを常に一定間隔で連射し、動かないとはいえ放った全ての魔法を的に命中させている。投影の一つ一つを正確に行っている証拠だ。


「おおぉ、さすがぁ」

「──ッ!?」


 ポツリと感心の言葉を口にすると、どうやらカディナの耳に届いたようだ。彼女は驚いたように肩を震わせた。距離が離れているのに声が聞こえたことを意外に思う。


 カディナの放った風砲弾エアカノンが狙いを僅かにそれて背後の壁に着弾した。彼女はそれを目に、眉間に皺を寄せる。


「あー、もしかして邪魔したか?」

「──ッ。……いえ、あの程度で制御を誤った私の未熟です」


 カディナは一瞬だけ声を荒げそうな雰囲気だったが、それを飲み込み代わりに深く息を吐いた。 


「……で、なんの用ですか、リース・ローヴィス」

「知った顔に声をかけるのにわざわざ用って必要なのか?」

「私とあなたとでは、まだ数える程度にしか言葉を交わしていないはずですけど」


 どうにも対応の仕方が刺々しいな。入学して最初の頃、魔法の威力測定の時に挑戦的な言葉を受け取って以来、まともな会話はこれで二度目かも知れない。


 ──いや、棘が鋭いのは今朝のことがあったせいか。


「ま、そう言いなさんな。折角だし、ここで一つクラスメイト同士の交流でも深めようや」

「それでお互いにどんな益が?」

「俺個人の意見を言わせてもらえば、お前みたいな美人さんと仲良くなれるのは非常に嬉しい」


 更にカディナの視線が鋭くなった。どうやらお気に召さなかったらしい。割と本心であったのだが。


 仕方がないので、当たり障りのない会話から始めよう。


「俺はよく放課後で訓練場ここを利用してるが、この場所でお前と顔を合わせるのは初めてだよな」

「……普段使っている訓練場が整備中で使えなかったので、仕方がなくこちらの訓練場に来ただけです」

「へぇ……よく見りゃぁいつもよりちょっと人が多いな」


 訓練場を使う顔ぶれはわりと固定で、話したことはないがいつも使っている生徒の顔は同じだ。ただ、それに加えて普段見ない顔がちらほらとあった。


「ん? 普段使ってるって事は、お前も放課後は訓練場で自己練してる口か?」

「当然です。私はアルファイア家の長女ですから」


 ……あかん、アルファイアさん家の事情とか全く知らん。威力測定の時や、先ほどの投影を見るに、彼女自身の才覚は確かなもの。その実家も魔法使いとして濃い血を受け継いでいるのは想像に難くない。立ち振る舞いからは良いところのお嬢様だとは思っていたが。


「随分と意外そうな顔をしていますね」

「っと、こいつは失礼した。別に、馬鹿にしてたわけじゃぁないんだけどさ……」


 口では謝罪を述べたが、本音を言えば彼女のように優れた才能を持った者は──特に、貴族であれば、努力とは無縁の生活を送っているとばかり思っていたが……。


「この国を武力の面から支えてきた魔法使いの一族。その一端である私が日々を無駄にするわけがないでしょう」


 まるで模範解答のような言い回しだったが、それは上辺だけではなく責任感の籠もった〝芯〟のある言葉だった。


 故郷の村にいた頃は、貴族と聞けばどいつもこいつも生まれ持った地位と才能に胡座を掻いて威張りくさり。そのくせ相手が己よりも上だと分かった途端、妙にへりくだる奴ばかりだった。


いくさとなれば矢面に立って戦い、平時であれば次の代へ血脈を受け継ぐため、研鑽を行うこと。それこそが、貴族の役割であり義務です。少なくとも、私はお父様からそう教わって生きてきました」

「随分とご立派なお父様だな」

「ええ。私の誇りであり、自慢の父です」


 尊敬する対象を褒められて機嫌をよろしくしたのか、カディナの眉間から皺が取れる。ついでに、誇らしげに胸を張り、巨大弩バリスタおっぱいがたゆんと揺れた。


「どうしてそんなに目を瞬いているのですか?」


 ──脳内シャッターを大量に切っているだけです。


 とはもちろん口にせず、心の中で呟いた。


そんなわけでカディナちゃんの回でした。


今まで彼女との絡みあまりなく、すれ違ってばかりだったので一度しっかりと会話をする場面を設けたいとは思っていました。ただし、表面上は完璧女子でありポンコツ具合はナリを潜めています。


あと、言っておくが今の所アルフィと旗が立つ予定は無い。


それとナカノムラが過去に書いた小説を現在連載中。

単行本一巻分程度の文章量で完結する予定。なるべく過去に書いたままをそのまま投稿しています。

現代ファンタジーなバトルものです。

よければこちらもどうぞ↓


──導く者は吸血の姫君と踊る──

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