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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第四の部 学園生活満喫中のお話
41/227

第四十話 常に品薄かもしれない──誰も眠りません

今回も第三者視点です。



 バルサことハァハァ男子の……ではなく。ハァハァ男子ことバルサ・アモスの、〝謹慎〟という名の拘留生活が終わり、彼はいよいよリースに決闘を申し込んだ。


 実は彼の拘留期間中に、『望むのなら以降、バルサから俺に決闘を挑むことを禁止するのを罰に含めることも出来る』とゼストから提案があったのだが、リースはそれを拒否した。


「俺自身はハァハァ男子バルサに思うところは無いしな。強いて言えば、もうちょっと人の話をよく聞いて欲しいって事ぐらいだ」

「……バルサも、お前に対して全く同じ事を考えているだろうな」

「ん? 何か言ったかアルフィ?」

「独り言だ。気にすんな」


 そんなリースとアルフィのやり取りがあってから、一週間が経過していた。


 当初、リースやアルフィはバルサが拘留期間が終わった直後に挑んでくると踏んでいた。実際に挑んできたのだが、バルサは決闘を行うのは一週間後という条件を出してきた。


「──で、今日がその一週間後。ローヴィスは馬鹿正直にそのバルサ・アモスって言う奴の出した条件を呑んだわけだ」

「あいつらしいと言えばらしいんだけどな」


 呆れたラトスに、アルフィは肩を竦めて答えた。


 ラトスの言葉通り、今日はバルサが釈放されてから更に一週間後。指定された決闘の日時だ。


 アルフィとラトスは決闘場アリーナの観客席に陣を取っており、決闘が始まるのを待っている。彼らの周囲にも同じく決闘の開始を今か今かと待ち望む生徒たちで賑わっていた。


 一年生たちの間で、リースが行う決闘たたかいは相当の人気を博していた。お陰で決闘が行われる度に決闘場アリーナの観客席は常に賑わう。それはアルフィやラトスの場合でも変わらず、むしろ女子生徒の比率に限ればリース以上の数が押し寄せる。


 今現在も、アルフィとラトスが座る席の周囲には、女子生徒で溢れかえっていた。確実に試合そっちのけで、一歩でも近くから二人の美顔を拝もうと集まった者たちだ。


 当のイケメン二人(片方は隠れ男装美少女)は向けられる憧れの視線を気にせずに会話を続ける。


「それで、実際のところはどうなんだい? アモスはローヴィスに勝てると思う?」

「さぁな」


 バルサの名前こそ知らなかったが、バルサの魔法使いとしての実力はそれなりに把握していた。何せ同じクラスに在籍しているのだから。授業の一環で見た魔法使いとして腕は、ノーブルクラスの中でも上位に食い込む優秀さ。


 けれども、『主席』と『上位』では、大きな隔たりがあった。


「ま、順当に考えれば十中八九リースの勝ちだろう。……変な癖が足を引っ張らなければな」

「癖?」

「〝性分〟といっても間違いないな──お?」


 アルフィが目を向けた先には、ミュリエルがきょろきょろと何かを探すように視線を巡らせている姿があった。


「ウッドロウ、こっちだよ!」


 ラトスの声と手振りに気がついたミュリエル。瞬間、アルフィとラトスの追っかけ女子から殺気めいた視線を浴びるも、ミュリエルはどこ吹く風とばかりにまるで意に介せず、アルフィの隣に空いた席に腰を下ろした。


「──ん?」


 自分を取り巻く気配に首を傾げたアルフィが背後を振り返るも、そこにあったのは女子たちの笑顔だけ。それまで後頭部しか観ることが出来なかった彼女たちは内心に喝采を上げていた。


 だが、気のせいかと前を向き直した直後、女子たちの嫉妬の眼差しが一気にミュリエルに集中した。無駄に息の合った女子たちの顔芸だ。ミュリエルが座ったのは、女子一同が虎視眈々と狙いつつも互いに牽制し合って座れなかった席なのだ。ちなみに、反対側のラトスの隣席も同じである。


「まだ始まらない?」 


 ミュリエルは無関心なのか鈍いのか、あるいは図太いのかは不明だが、普段通りの無表情。なかなかに大物だった。


「もうそろそろだと思うよ。それよりも遅かったね、ウッドロウ。どこに行ってたんだい?」

「ん、トイレ」

「……いや、そこはもうちょっとオブラートに包もうよ、女の子なんだからさ」

「オブラートは今、品切れ中」

「品切れ!? オブラートって品切れするのっ!?」

「再入荷の予定は……未定」

「お前のオブラートは在庫制なのか……」


 そのまま、決闘が開始されるまで何気ない会話が続くと思いきや、ここで彼らに予想外の人物が現れた。


「……隣、良いかしら?」


 明らかに女子の声。けれども、今度は誰も殺気を込めた視線を向けなかった。むしろ、その女子に気圧されたかのように静まりかえっていた。


「カディナ・アルファイア……」


 ラトスが彼女の名を口にした。 


 ジーニアス魔法学校の一年生で、現在次席の成績を誇る女子生徒だ。


 アルフィは彼女を睨むように見据えた。


「……一年生の次席様が、どうしてここに?」

「いずれは倒す相手の情報を一つでも多く集めようとするのは当然でしょう? 今日はたまたま、空いていた席があなたたちの隣だっただけの話」


 カディナは了承を得ること無く、さも当然とばかりにラトスの隣に腰を下ろした。聞いた意味ないじゃん、とラトスは言いたかったが、カディナの迫力・・に気圧されて口を挟む余裕が無かった。


 そう、制服をこれでもかと押し上げ、躯が動く度にたわわに揺れるその盛り上がり。


(この子もおっぱいでかっ!?)


 ミュリエルに続き、またしても現れた巨乳に戦慄していた。


 ──自らの破城槌おっぱいを、完全に棚上げした感想である。


 ラトスが人知れず驚いていると、ミュリエルがカディナの顔を見て何かを思い出したように呟いた。


「あ、この前ケーキ屋で並んでた人」


 ギックゥゥゥゥッ、という擬音が聞こえてきそうな程、カディナが肩を震わせた。


「な、ななな何のことかしら?」


 誰の目から見ても、動揺しているのは丸わかりだった。


「バルサ・アモスが問題を起こした日、私たちが入ったケーキ屋の列に並んでた」

「き、きききき気のせいじゃないかしらねぇ」


 ミュリエルの問い詰めるような視線から、カディナは目をさっとそらした。


 ──あの時、カディナはリースたちの後を追うか否かの選択を強いられた。


 運が良いのか悪いのか、カディナが並んだときから客の回転率が上がり、列の進行速度がかなり上がっていたのだ。普通に考えれば運が良いと考えるだろうが、カディナにとっては不幸とも言えた。なにせ、リースたちが店を出た時点で、カディナが店に入れるまで後一人か二人というところまで迫っていたのだから。


 まだまだ列の半ばであれば簡単に諦め、リースの後を追っていただろう。しかし、もはや直前となれば簡単に列を抜け出すのが躊躇われてしまう。


 ……結局、カディナはケーキの誘惑に負け、リースの追跡を断念したのであった。


 今回、アルフィたちの隣を選んだのは『今日ばかりは逃がすものか!!』という気持ちが強く、当初の目的から方向性が微妙にズレていた。


「記憶力には自信がある。見間違いは無い」

「だ、だとしたら私に似た別の誰か、ということでは無いかしら?」

「それも無い」


 ミュリエルは自信ありげに断言した。


「こ、根拠は何かしら?」

「そこまで見事なおっぱいを持つ人間など滅多にいない」

「────ッ!?」


 ズビシッと大鉄球モーニングスターおっぱいの持ち主であるミュリエルがカディナの巨大弩バリスタおっぱいを指さした。


「顔は同じでもおっぱいまで同じなど、断じてあり得ない」

「まさか……そんなっ!?」

証拠おっぱいはある。素直に白状するべき」

「くっ……」

「真実はいつも一つ」


 まるで罪を犯した知能犯とそれを追い詰めた探偵のようなやり取り。


 なお、ミュリエルとカディナの間に挟まる位置に座っていた二人はこのやり取りをしらけた目で眺めてた。


「……僕の中にあるカディナ・アルファイアの人間像が崩れていくような気がするよ」

「奇遇だな。俺もだ」


 ──そろそろ決闘しあいの開始である。

 

ようやくヒロイン揃い踏み。まぁ、恋愛のれの字も出ていないし、うち一人は女子であることを隠していますがね。


次回から待ちに待ったバトル回です。青春ラブコメ書くのもそれはそれで楽しいですが、作者的にはやっぱり戦闘シーンを書いている時が一番楽しいです。


最近は急に寒くなり、ナカノムラはやはりいつものように体調が崩れました。

ただ、初期段階で自覚があったので、寝るときはちゃんとマスクをして体を暖かくして寝たためか、それほどひどいことにはなりませんでした。

喉が乾燥すると免疫力が低下し、より風邪をひきやすくなるそうです。で、一番乾燥するのが寝ている時。なのでマスクをして喉の保湿を保つとかなり風邪の予防になります。



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