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第三話 お土産は決まりました──魔法学校の長に会います

未来少年コナンを全話見ました。

ストーリーもよかったのですが、それ以上に主人公の超人っぷりが凄まじかった。

壁に鉄錠で貼り付けにされたら、壁ごと引っこ抜くとは意外すぎた。ワンブロックごと抜けて貼り付けの格好のままでしたが……。


 

 噂には聞いていたが、ジーニアス魔法学校は凄まじい規模を誇っていた。敷地の広さ故に、都の中心からは離れた場所に位置しているそこは、一つの町が収まってしまいそうなほどだった。

 

 門もやはり相応に大きく、敷地の外周を囲う防壁も立派だ。どちらも素材には魔法的な措置が施されていた。手間を考えると、門と防壁だけでどれだけの経費がかかってしまうのだろうか、と庶民的な感想を抱いた。

 


 基本的に、魔法の才は血筋に宿ることが多い。詳しい説明は今は省くが、魔法の才能を持った者同士の間に産まれた子供は、優秀な魔法使いになる確率が非常に高いのだ。もちろん何事にも例外はある。優秀な魔法使いの子供が平凡な魔力しか持たなかったり、逆に凡才の両親から希有な才能を有した子供が産まれたりと。アルフィが後者の極端な例だな。


 魔法使い達はその能力を後生に残すために優秀な才能の持ち主同士での婚姻を繰り返してきており、また国の方でもそのことを推奨している。魔法使いの力は国にとっては欠かせない強大な『力』だからだ。国は力の代名詞である魔法使いを貴族として認め、権力を与える事で彼らに国への忠誠を誓わせたのだ。


 要約すれば、一般庶民と比べて、貴族に宿る魔法の才能は代々からの積み重ねによって高い潜在能力を秘めているのだ。才能と一言で表せても、その純度にはピンからキリまであるがな。


 そして、姿格好からして旅装束を纏った村人以上でも以下でもない俺は、伝手もなく魔法学校に入ることはできない。よくて尾登おのぼり、悪くて不審者扱いで門番に拘束されかねない。


 けれどもこんな言葉がある。


 ──伝手と権力は使いよう……である。


「すまないね。急な来客だったため、もてなしの用意ができていないのだよ。簡単なお茶と菓子で我慢してくれ」

「あ、この菓子おいしいっすね(もさもさ)。持って帰っていいですか(ぽりぽり)?」

「……ああ、問題ないよ」


 俺の目の前で頬の筋肉をひきつらせているのは、このジーニアス魔法学校の長ーーつまりは校長ーーであり、国内でも間違いなく三指に入るであろう実力を持つ魔法使いだ。


 見た目だけで言えば爽やか系のイケメン。魔法学校の校長だと言うだけあって、当初はデカい三角帽子をかぶったよぼよぼの爺を想像していたのだが。ただ、彼が見た目通りの年齢でないことは、すぐさま分かった。なぜなら彼の両の耳は通常の人間に比べて横に長く伸びていたからだ。


 エルフーーと呼ばれる人種だ。俺達人族と比べて倍近い寿命を持つ長命種族の代表格。一定の肉体年齢を超えると老化の速度が極端に遅くなり、寿命を越えるまで長く若い姿を保つことで知られている。しかも、その殆どが男女ともに容姿が優れており、イケメン美女の揃い踏みだ。だが、美しい容姿を保ち続ける特性から、大昔では奴隷としての需要が高く、高値の取引額を目当てに愛玩動物として乱獲されたという過去がある。現在ではどこの国も犯罪や借金を理由に落ちた奴隷以外の取引は禁じられている。


「……それで、君が門番に見せたという手紙を、私にも見せて貰えないか?」

「(もぐもぐ……ぐびッ)ああ。婆さんからはあんたに直接手渡すように言われてる。見せれば話が通るだろうからって」


 口の中の菓子を茶で流し込んでから、俺は婆さんからもらった『手助けの品』の一つーー模様が入った封筒入りの手紙を取り出し、校長に手渡した。


 裏には凝った模様の封蝋がされている。なんでも婆さんが個人的に使用している模様らしく、手紙にこの封蝋がなされているとその手紙の差出人が婆さんであると証明してくれるらしい。


 門の側には警備のための屯所が併設されており、門の前には屈強な番人が待ち構えていた。門前まで来たとき、ザ・庶民の格好をしている俺をみる門番の目はまさしく不審者を見るようなそれだった。だが手紙の裏に成されている封蝋を見せるとおもしろいように顔色を変えたのだ。そこから門番の一人が慌てて建物の中へと引っ込み、教員らしき人間を連れてくると、その人物も手紙の封蝋を見て愕然とした。それから教師に用件を伝えると、ここ校長室に案内されたのである。


「うん、間違いなく『老師せんせい』の封蝋だ。まさか彼女のほうから便りがくるとは思っていなかったよ」


 懐かしいモノを見る目で封蝋を眺める校長。彼は少しそのままで微笑み、封を切り中の手紙を取り出した。


 校長はそのまましばらくは黙って手紙の内容に目を通していったが、徐々にその眉間に皺が刻まれていく。怒っているというよりかは、悩ましすぎてどのように反応すればいいのか迷ってしまっている、といった具合だ。


 ……婆さん、あんた手紙になんて書いたんだよ。


 極上の笑顔で「儂に任せておけ!」と宣言していたが、校長の反応を見ると不安になってきた。


 つーか、長命族から『老師せんせい』て呼ばれているのか。確実に『百歳』を越えているのは知っているが、婆さんの実年齢を聞いたことがない。果たして何歳なのだろうか。


「……君は、この手紙の内容を知っているのかい?」


 俺は首を横に振ると、校長はそれまで読んでいた手紙を此方に差し出してきた。俺にも読めということか。そのまま手紙を受け取ると、俺もその紙面に目を通した。



『全略ーー』



 全部略してどうするよ。


 

『ーー冗談じゃ。


 久しぶりじゃなディアス。元気にしとったか? まぁ、儂がちょびっとだけ目を掛けてやった程度の才能はあったし、まだまだくたばってはいないじゃろう。学校の校長になった程度で天狗になっていれば、主が儂の元で鼻垂れていたころの恥ずかしい出来事を暴露してやるからせいぜい精進する事じゃ』



 ……最初から飛ばしてるな婆さん。


 というか、国内トップの魔法使いを相手に『ちょびっと』ってすごい事言って(書いて)いるなおい。ディアスというのは校長の名前だ。恥ずかしい出来事は気になる。今度婆さんに教えてもらおう。



『さて、無駄話はさておこうか。


 実はお主にちょっとしたお願いがあるのじゃ。まぁ、主に拒否権はないがの。じゃが無理難題を押しつける気はない。


 おそらく、主の目の前にはこの手紙を預けた小僧がおるじゃろう。


 実はその小僧、儂の弟子でな。まぁ、弟子と呼ぶにはあまり敬われてる気がせんが、少なくとも儂が直々に『もの』を教えている奴じゃ。


 願いというのはあれじゃ。主の学校にそいつを入れてやってくれ。

 

 ああ、別に校長の権力を利用して強引に入学を手引きなどとは望んでおらん。小僧ーーリースというのだが、そやつも望んではおらんじゃろうて。

 

 なのでお主に頼みたいのは二つじゃ。

 

 まず、そやつに入学試験を受けさせてやってくれ。

 

 そして、その試験の結果を、純粋に評価してやってくれ。

 

 先に断っておくが、リースが扱える魔法は無属性の防御魔法のみじゃが、舐めてかかるとお主でも痛い目を見る程度には鍛えておるからの。試験官にもきつく言いつけておくことをお勧めする。

 

 ではな。せいぜい長生きしろよ小僧。

 

 追伸ーーkoyaljy%&9kaua』


 最後の最後に付け加えられていた『追伸』の文は残念ながら読むことができなかった。多分、今は廃れてしまった古代の文字だろう。校長宛なので彼には読むことはできるだろうが、俺はまだ婆さんからは習っていない。機会があれば教わるとしよう。

 

 俺は手紙を畳むと校長に返した。


「……先に確認しておきたいことがいくつかある」


 深く息を吐き出してから、校長が口を開いた。


「まず、君は老師の弟子ということで間違いないかな?」

「婆さんから色々と教わっているという点で見れば、弟子ですかね」


 尊敬はしているが、あの『のじゃロリ』を師匠と呼ぶには少し躊躇われた。師弟の関係にしては普段のつきあい方はかなり軽いしな。


「……あの老師の教えを授かった者は数少ない。かくいう私もそのうちの一人だ。だが、彼女が『弟子』と明確に言い表した人物は、私の知る限りでただの一人もいなかった。……君を除いてね」


 婆さんも前に言っていたな。弟子は基本的にとらない主義だと。


「もしかすれば四属性などという希有な才能を持っているかと思えば、君は属性を持たない防御魔法の使い手だと言うじゃないか」


 ごめんなさい。知り合いに四属性それがいるけど、婆さんが「つまらん」って言い捨ててました。


 校長の表情は険しい。最初に見せた悩ましい感情とはまた別の、強い感情を内包しているように見えた。


「……これは教育者としては失格なのだろうがね。私は今、君に対して紛れもない『嫉妬』を抱いているよ。あのお方から直々に弟子と呼ばれる存在になるには、一国の王・・・になるよりも遙かに困難であろうからね」

「(ずずず……)茶が美味ぇ……」


 ん? 


「……ああ、そりゃぁ大変だな。(ぼりぼりがつがつ)あ、この菓子も美味い。後で売ってる店教えてくれ。婆さんの土産に買って帰るから」

「いや、君のことだからね? 店は教えてあげるけど……」


 お茶と菓子に舌鼓を打っていると、校長はがっくりと肩を落とした。正直、婆さんの弟子という立場に嫉妬されても困る。どうせなら可愛い彼女を作ったことでの嫉妬がほしい。


「とりあえず、事実の一端が見えた気がする。そのマイペースっぷりは間違いなく老師の弟子だ」

「……////(てれッ)」

「褒めて無いからねッ!?」


 俺と会話する人間はだいたい同じような反応を返すのはなぜだろう。

来週はちょっとした戦闘回になる予定です。

舐めプレイにするか、瞬殺にするか非常に迷っています。


こっちも連載中なんでよろしく↓

『カンナのカンナ 〜間違いで召喚された俺のシナリオブレイカーな英雄伝説〜』

http://ncode.syosetu.com/n3877cq/

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