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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第四の部 学園生活満喫中のお話
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第三十七話 哀れな子羊です──人の名前はちゃんと呼びましょう

総合評価が40000ptを突破しました。

これも読者の皆様の応援あってのことです。

本当にありがとうございます。

 話題の店はその噂に違わず、出されたケーキは非常に美味かった。素晴らしい味を堪能した俺たちは満足感を得ながら町を歩いていた。


 店を出る際に、背後で聞き覚えのある誰かしらの声が聞こえたように思えたが……おそらくは気のせいであろう。


 町に来た用件は済んでしまったが、これで帰るのも勿体ないので、そのまま町中をぶらつくことにした。他の三人も特に予定が無かったので俺と一緒だ。


「美味しかったけど……ワンホールケーキを食べるのはちょっと食べ過ぎだったんじゃ無いのかな? 見ていて少し胸焼けしたよ」

「俺はおまえらインドア派と違って、食べ物の消化率が違うんだよ」


 カットサイズのケーキでは無く、ワンホールケーキを平らげた俺に、ラトスが畏怖の視線を向けてくる。


 俺は普通の魔法使いインドアと違って派手に動き回る分、体力エネルギーの消費が激しい。


 失われた体力を回復させるために必要なのは休息と食べ物だ。そして、食べ物を素早く体力に変換するために俺の胃腸は普通の魔法使いに比べて高い消化効率を持っている


 おかげで、好きな食べ物を好きなだけ食べられるという恩恵が授けられたのだ。


「あの消化力……羨ましい」

「止めとけ。リースはああ見えて肉体作りに関しては非常に真面目だ。余分に食った分はちゃんと躰を動かして消費してる。女子があの大食いを真似すると確実に後悔することになるぞ」


 ミュリエルが食欲道に落ちそうになるのをアルフィが止める


 ろくに躯を動かさず、魔法を覚えることばかりに精を出している魔法使いが俺と食事量を摂取すると、悲惨な目に遭う……胴回りとかな。 


 俺は毎晩、寝る前には筋トレをおこなってから寝ている。余分に摂取した食べ物カロリーは、筋トレのメニューに少し割り増しすれば問題ない。


「君と〝真面目〟って言葉の組み合わせは違和感しか無いね。普段はちゃらんぽらんな癖して」

「そのちゃらんぽらんな野郎に負けくさった奴はどこのガノアルクさんだったかな」

「くっ、挑戦の禁止期間が過ぎたら覚えてろよ……」


 ラトスは悔しげに呻いた。


 決闘に一度敗北したものは一定の期間、決闘を行う為の挑戦権を失う。その他に、一度決闘を行ったもの同士も再度決闘を行うことを禁止されている。


 勝てない相手に無謀に挑むのを防ぎ、かつ決闘を行えない期間を利用して実力を高めるように促すための決まりだ。だが、挑戦権が無いだけで、他の者に挑まれた場合は別。この場合は両者の同意さえあれば決闘を行うことが出来る。


「……ラトス、前から疑問に思ってたんだが聞いていいか?」

「なんだいライトハート、改まって」

「どうしてノーブルクラスに入れなかったんだ? お前の実力なら入学の時点でノーブルクラス入りも不思議じゃ無いだろ」


 アルフィの口にした疑問にラトスが顔を顰めた。


 俺もアルフィはすでに何度か決闘を挑まれており、その全てに勝利している。中にはノーブルクラスの生徒もおりやはり他クラスの生徒に比べてかなり実力があった。


 実際にラトスと闘った俺もアルフィと同意見だった。ラトスの実力はノーブルクラスの一部生徒を確実に上回っていると俺は考えている。それにラトスは勤勉だ。筆記テストの方も成績が振るわなかったとは考えにくい。


 あまり触れて欲しくない話題だったのだろう。けれど、ラトスは溜息を吐いてから口を開いた。


「……言い訳にしか聞こえないだろうけど、入学試験の実技を行うとき、あまり調子が良くなかったんだ」


 ラトスの視線はアルフィに向けられていたが、己の胸元を指先で引っ掻いていた。


 無意識での行動だろうが、俺はその仕草で実技試験中に何が起こったのかに見当が付いてしまった。


 実技試験は教師との模擬戦。実際に担当の教師が相手をすることで受験生の魔法使いとしての技量を推し量る。


 ……その最中にあの破城槌はじょうついおっぱいを押さえ込んでいるサラシ・・・が緩んでしまったのだろう。


 で、簡易鎧コルセットがあるとはいえこぼれ出しそうになったたわわ・・・に動揺して、普段通りの力が発揮できなかったと。


「筆記の方は点数を稼げたけれど、実技が足を引っ張っちゃって、ノーブルクラスに入るためには成績がりなかったんだよ」

「ふーん」

「ローヴィス、何か言いたそうだね?」

「いんや、別に」


 俺がラトスの性別を知っていることを、ラトス本人は知らない。事情を察してもそれに気づいた素振りを見せるわけにもいかなかった。気のない返事を返しながらそっぽを向いた。


 視線を動かしたところで奇しくもミュリエルと目が合う。


 相変わらず、考えの読めない感情の少ない瞳だ。


「……もしや、恋の予感?」

「ねぇよ」


 本当に考えが読めないな、この女。


 ジーニアス魔法学校に在籍しているなら、ミュリエルもそれなりにいいとこ・・・・のお嬢様なのであろう。


 考えてみると、出会ってからミュリエルの身の上話は一度も聞かされてなかったな。


 もし本当に恋人関係になるとしても、少しくらい相手がどのような人間であるかを知るのは悪いことじゃないはずだ。


 しかし、俺がそれを口にする前に──。


「おい貴様! こんなところにいたのか!」


 人の多い通りの中は活気に満ちていたが、その中でもひときわ大きな声がどこからか発せられた。声が聞こえてきた方を向けば、ジーニアス魔法学校の制服を着た男子生徒がこちら側を指さしていた。


「「「「…………?」」」」


 俺たち四人は一斉・・背後・・を振り返るが、残念ながら俺たちの後ろに彼らが指さしているであろう人物はいなかった。


 なんだか関わり合いのなるのは面倒くさそうなので、俺たちは男子生徒がいる方向とは逆の、そのまま来た道を戻ろうと踵を返した。


「おい、無視するな! 貴様だよ!」


 なんだか背中に声がぶつけられるが、名前を呼ばれているわけでも無いのでお目当ては俺では無いだろう。


 俺は『キサマ』という妙な名前では無い。


「ね、ねぇいいのかな? なんか勢いで後ろ向いちゃったけど」

「ここにリースに毒された哀れな子羊が……」

「心の底から悲しそうに言わないでくれないかライトハート! それを言うなら君もウッドロウも哀れな子羊だからね!!」

「…………?」

「あ、違った。この子ウッドロウは素でやってる」


 おい、黙ってろよ。怪しい人に近づいちゃいけませんって習わなかったのか。相手がたとえ同じ学校の生徒でも、ここは他人のふりしてやり過ごす場面だ。


 それによく見ると、同じノーブルクラスの生徒。しかも、あの男子は人の胸ぐらを掴んでハァハァする特殊な性癖の持ち主。近づくとハァハァされるぞ。


「貴様と言っているのが分からないのか! この無属性野郎!!」

「──っ、マジかよおい……ッッ!?」


 俺は振り向きざまに投影を行い、他の三人を守護カバーする規模の防壁シールドを展開した。


 ──バガンッ!


 防壁シールドに地属性初級魔法『岩弾ロック・バレット』が衝突し、破砕音が通りに響き渡った。


 魔法を放ったのは、先ほどから『キサマキサマ』と馬鹿みたいに繰り返している男子だった。


ハァハァ男子は十話に出てきたあの男子です。

忘れてる人はちょっと読み返してみましょう。

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大賢者pop
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