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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第三の部 学校生活が開始したお話
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第二十六話 アルフィの出番です──見せつけました

語り部はリースですが主役はアルフィな回。

 ──ラトスと俺の闘いが火付けとなったのか、魔法学校では『決闘』というイベントが徐々に活発化していった。


『みなさんご機嫌よう! 此度こたびの決闘もわたくし、サラドナ・マクシが務めさせていただきます! そして解説にはゼスト先生をお迎えしておりまぁぁぁす!!』

『さっさと終わってくんねぇかな。昨日は徹夜で論文まとめてたから、今日はさっさと帰って眠りてぇんだが』

『やる気の欠片も感じられないコメントをどうもありがとうございます!』


 実況と解説の温度差が酷いな、と観客席に座る俺は思った。


「うるさい声だな。あの時は気にも止めなかったけど、僕たちの時もこんな感じだったのか?」

「こんな感じだったよ。実況がとにかくハイテンションだった」


 魔法学校の校舎内には、規模の大小をあわせると結構な数の『決闘場アリーナ』が存在している。俺たちが使ったのは校内でもっとも大きな会場だ。本年度初であり、学校長が立会人というのが大きな要因だ。壇上の広さも観客席の数も学校の中では随一だという。


 ただ、あの会場──第一決闘場アリーナは頻繁に扱われるものではないらしい。規模が規模だけに管理が大変であり、大きな目玉となる見出しがなければ使用されない。

 

 そんなわけで、普段の決闘に使用されるのはそれよりも小規模な決闘場アリーナとなる。現在俺たち・・がいる第三決闘場アリーナもその一つ。他にいくつかある決闘場アリーナも、他の生徒が使用している。

 

 今、一年生の間では『決闘ブーム』なのだ。

 

 決闘と付くと物騒に聞こえるが、ちょっとした腕試し代わりだろう。教師の監督下であれば全力で魔法を扱える良い機会でもある。


「ゼスト先生は君たちノーブルクラスの担任だったな。あの先生はいつもああなのか?」

「基本的にあれがデフォルトだ。魔法に関しては真面目だから、なんだかんだで解説の仕事もしてくれると思う」

「人は見掛けによらないな」


 ──既にお察しだと思うが、先程から俺と会話をしているのは、隣の席に座るラトスである。


 なにやら決闘をした翌日から何かと絡んでくるようになったのだ。ただ、別に言いがかりを付けてくるとか喧嘩を売ってくるということはなく、学校の廊下ですれ違えば気軽に挨拶をしたり、飯を一緒に食べたりと実に穏やかな絡み方だ。


 以前にちょっとだけ見かけた取り巻きの姿はない。ラトスがすっぱりと付き合いを止めたのだ。ガノアルク家の威光に縋ろうとしていたのは見え見えで、食堂での一件わりこみも実は彼らが勝手に気を回しただけにすぎないのだと。


 俺の対応が余りにも酷すぎた(解せぬ)ために、ラトスが介入しようとしたらいろいろとと引っ込みが付かなくなってしまった、と本人は語っていた。


 それから、授業外の時間に何となく一緒にいることが多くなったのだ。


『ここで、選手登場! 先日の決闘にて解説を請け負ってくれたアルフィ・ライトハートさんです! きゃぁぁぁぁっ、アルフィ選手がんばってくださぁぁぁい! 私はあなたを応援してますよぉぉぉぉぉ!』

『仕事しろ』

『はい、前回に引き続き、今度はゼスト先生から『仕事しろ』発言をいただきました! あ、片っぽうの一年生男子選手も一緒に入場していますが、モブ顔なのでこちらカットします』


 それでいいのか実況。贔屓にも程があるだろう。アルフィと一緒に壇上に上がった対戦相手が実況に向けてめっちゃ叫んでるぞ。


 ……確かに、モブ顔なのは否定できないけど。


「酷い実況だけど、会場は盛り上がってるみたいだね」

「もう面白けりゃぁ何でも良いって空気だな」


 そんなわけで、本日の主役はアルフィだ。


 まだ決闘が開始されたわけでもないのに、いたるところから女子たちの黄色い歓声がわちゃわちゃと聞こえてくる。


 ちっ、これだからイケメンは。


 補足しておくと、決闘の原因はまさしくアルフィがイケメンだからだ。


 平民上がりのくせに並の貴族を遙かに上回る整った顔に、入学試験三位の成績優秀者。それでいて偉ぶった様子もなく人当たりも良いからそりゃぁ女子から人気が出ない方がおかしい。


 同時に、彼の超優良物件ハイスペックぶりに嫉妬を抱かない者がいないはずがない。ノーブルクラスの他の男子生徒とはそれなりに仲良くはやっているが、一定数の反発者は必ず出てくる。今回アルフィに決闘を挑んだモブ顔もその内の一人。ノーブルクラスではないが成績は結構良いらしい。


「一発くらい、あのイケメンの顔面にぶち込めることを祈ろう」

「……君たち、同郷の幼馴染みじゃないのかい?」

「ああ、昔からの大親友だ」


 大親友であるからこそ、奴のイケメンガユルセナイノ──。


 ナゼヤツハアレホドマデニオンナノコニモテルノカ……。


 おっと、危うく暗黒面ダークサイドに墜ちるところだった。


「で、実際のところ、本当にライトハートって四属性を扱えるのかい?」

「なんだ、まだ疑ってたのか。アルフィが四属性持ちなのはもう一年生の間じゃ有名だぞ」

「だって、歴史を紐解いても、四属性を操る魔法使いなんて数えるほどしかいないんだよ? それが同世代にいるなんて……聞いただけでハイそうですか、って簡単に受け入れられるはずない」


 二属性持ちで将来有望。三属性で天才か化け物。四属性となれば歴史の教科書に出てくる英雄と同等に希少な存在。ラトスの言い分も納得できた。


「じゃあ、今回の決闘でしっかりと目に焼き付けとけ。未来の英雄様の闘いぶりってのをさ」

「未来の……英雄……」


 そこまで言ったところで。


『さぁいよいよ決闘の開始です! アルフィ選手はいったいどのような闘いを見せてくれるのでしょうか。そしてどのようにあのモブ顔一年生を料理するのか! では立会人の先生、お願いします!!』


 ──立会人せんせいの合図で決闘が開始された。


『おぉおっと、モブ顔選手! 試合開始と同時に速攻だ! 火属性魔法でアルフィ選手を狙い撃つ! ちょっとぉ! 顔は狙わないで下さいよ顔は! あのイケメンフェイスを焦がしたら重罪ですよ!!』

『清々しいまでの贔屓っぷりだな』


 彼女の次回以降の降板が心配される。


 モブ顔の初手は炎弾フレイムバレット。最初に様子見として投影速度の優れている初級魔法を使うのは魔法使いとしての基本戦術だ。


 ここは同じ初級魔法で相殺し、そこからが本当の闘いが始まる──というのが定石だ。


 だが、アルフィが放ったのは火属性魔法の『炎矢フレイムアロー』。


 モブ顔の炎弾フレイムバレットは灼熱の矢に飲み込まれ、その先にいる魔法使いへと迫った。


 モブ顔は大慌てで炎矢フレイムアローを回避するも、彼のモブな顔は驚愕に彩られていた。


 間違いなく最初に魔法を発動させたのはモブ顔だ。


 一方、アルフィはモブ顔の炎弾フレイムバレットが放たれた後に魔法の投影を開始し、炎弾フレイムバレットよりもワンランク上の火属性魔法である炎矢フレイムアローを放ったのだ。


 モブ顔は次に、アルフィが最初に放ったのと同じ炎矢フレイムアローを投影する。


 投影速度はアルフィよりも劣っており、彼らその隙に炎弾フレイムバレットでも炎矢フレイムアローを投影し終えることもできたはず。


 アルフィはあえて投影が完了するのを待ち、炎矢フレイムアローの完成を確認してから・・・・・・投影を開始。


 そして解き放たれたのは──炎槍フレイムランス。火属性の上級魔法。


 紅蓮の槍が炎矢フレイムアローを飲み込むと、そのままモブ顔の足下に着弾し、炎をまき散らしながら破裂した。貫通力重視の魔法だが、内包した火力は半端ではない。爆発に巻き込まれたモブ顔を吹き飛ばした。


『こいつは凄いな。あの速度で炎槍フレイムランスを投影できる奴なんて、一年生でもそうはいない。上級生でも熟練の奴じゃないと到底追いつけねぇぞ」

『ということはもしや、アルフィ選手はモブ顔選手を上回る火属性魔法の使い手、ということでしょうかゼスト先生』

『投影速度が魔法使いの全てじゃねぇが、少なくとも投影速度は全面的に上回ってるだろうな』


 俺は一連の光景を目にした感想は──。


「あの野郎、かなり手加減してやがる」

「確かに……今の炎槍フレイムランスは当てようと思えば可能だったはず。わざと外したみたいだね」

「そうじゃねぇんだが……あ、それもそうなんだけどな」


 アルフィが本気を出せば、一瞬で決着ケリが付いたはずだ。なのにわざわざ勝負を引き延ばすとなると──。


「…………?」


 壇上にいるアルフィが、不意にこちらへと目を向けた。その視線は、まさしく『俺』を射抜いていた。


 ──なるほど、俺に対する意趣返しか。


 俺の予想はすぐさま現実となった。


 対戦者であるモブ顔は言葉を失っていた。


 何せ、アルフィの周囲に炎弾フレイムバレット水弾アクアバレット風弾エアバレット。そして地属性初級魔法の岩弾ロック・バレットが浮かび上がっていたからだ。


『な、なななななななんとぉぉぉぉぉぉぉ!! アルフィ選手の周囲に、四つの属性を宿した魔法が出現しました! 私は生まれて初めて見ますが、実際に目にしても信じられない気持ちです! イケメンで四属性持ちとか優良物件すぎるでしょうがぁぁぁぁぁぁ!! 結婚して!!」


 狂った実況内容はともかくとして、一人の魔法使いが四つの属性を操る姿はほとんどの生徒にとっては初めて見る光景だろう。例外は、アルフィと同じノーブルクラスの生徒だけだ。


 俺は確信した。


 アルフィは、己が四属性魔法使いであることをこの決闘場アリーナにいる全ての人間に見せつけているのだ。


 俺が第一決闘場アリーナでラトスと闘ったとき、防御魔法の力を観客に見せつけたように。


 四属性を前に、モブ顔はなけなしの気力を振り絞って新たに魔法を投影し始める。あれで戦意喪失をしない時点でなかなかの胆力だ。


 だが次の瞬間に、四つの初級魔法はその全てが中級魔法・・・・へと変異した。


 入学試験の実技でヒュリアが行った『魔法の書き換え』だ。


 あの時よりも数は少ないとはいえ、別々の属性魔法を同時に書き換えるのは異常としか言い表せないだろう。


 アルフィの『書き換え』は何度も・・・見てきたが、たまにあいつの頭の中身がどうなっているのかが知りたくなる。


 ガキの頃から、アルフィあいつは常に周りの人間に比べて一歩も二歩も先を歩いている印象があった。魔法を大人に教わったとしても、すぐさまそれを吸収し教えた者よりも上手に扱っていた。


 実を言えば、俺が防壁シールドに使っている『ハニカム構造』はアルフィからもたらされたものだ。本当に、ああいった知識をどこで仕入れてくるのかが不思議だ。前に聞いた事があったが、はぐらかされたきり教えてくれなかった。


 四属性の中級魔法を向けられ、今度こそモブ顔は〝折れた〟。投影の最中だった魔法陣が形を失い、茫然としながら彼は膝を突く。


 蓋を開ければ、圧倒的で短時間の結末。


 この時点で、アルフィの勝利が確定したのであった。

アルフィがこれまでただの解説キャラだったので、ちゃんとしたバトルシーンも用意。実のところ、リースもアルフィもまだまだ多くの手札を用意しております。今後に徐々にそれらを本文で公開していきたいと思います。

 


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[良い点] 仲いいね、君たち。
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