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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第三の部 学校生活が開始したお話
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第十八話 学校長に呼び出されました──解説されるそうです

 ジーニアス魔法学校の生徒は、その大半が貴族であり幼い頃から礼儀作法を教え込まれている。だとしてもやはり多感なお年頃。話し合いだけでは解決しない問題も出てくる。


 事実、アルフィが言っていたように生徒たちの争いに巻き込まれる形で学校の備品に被害が出る事もある。見習いとは言え魔法使い同士が矛を交えるのだ。その被害はとても無視できる範囲ではない。修復のための予算は潤沢だろうが無尽蔵ではないし、人手だって限られている。そのために、基本的には・・・・・生徒同士の魔法を使っての私闘は禁じられている。違反した者には厳重な注意と処罰が下される。


 だが、いくら罰が待ち受けていたとしても全ての生徒が自重できるかと問われてそれは無理だ。そもそもそれで我慢できる程度なら問題そのものが発生していない。もちろん、学校側もそれは承知している。


 そこで登場するのが『決闘』の仕組み。


 申請を出せば教師の監督の元に決闘を行うことが認められるのだ。必要なのは決闘を監督をしてくれる教師と、決闘を行う生徒両者の同意。これさえ揃えば行事等の特別な日程さえなければいつでも決闘を行うことが出来るのだ。


 ──そんなわけで、俺と青髪ラトスはすぐさま決闘の申請を教師に出した。


 授業の兼ね合いもあるので、決闘が行われるのは放課後になった。例年でも決闘そのものは珍しくはないが、新年が始まって一ヶ月も経たずに『決闘』を行うのは殆どないという。最初の一ヶ月はほかの生徒の様子を見て、それが過ぎた頃に『決闘』が活発になってくるらしい。


「君はつくづく騒がしい生徒ですね」

「ちょっと待とうぜ。俺って挑んだ側じゃなくて挑まれた側ですよ? なんで俺の責任みたいになってんの?」


 昼休みに学校長に呼び出された俺は、購買で昼食を購入して彼の部屋を訪れていた。


「私が先日の水浸し事件を知らないとでも? 責任の一端は間違いなく君にあるでしょう」

「正当防衛を主張します」

 

 むしろ、俺は専守防衛しかしてませんけど。


「……まぁいいでしょう。それよりも放課後に行われる決闘ですが、監督は私になりましたから、よろしくお願いします」

「へ? 俺はゼスト──先生に申請したんですが……」


 朝の授業が始まるなり青髪ラトスとともにゼストの元に赴き、決闘の申請を出した。彼はもの凄く嫌そうな顔をしつつも了承し、なんだかんだで監督を引き受けてくれたはずなのだが。


「私が無理を言って交代してもらったのですよ。安心してください。リース君が老師の直弟子であろうとも依怙贔屓するつもりはありませんので」

「そいつは俺の方からお願いしたいくらいだ」

 

 ただ、学園長がこんな事を言うためだけにわざわざ呼び出したのではないのは、俺にだって分かる。


「さて、本題はここからです。すでにゼスト先生から言われていると思いますが、測定の際に使用した魔法は使わないでください」

「言われなくても人間相手に使うつもりはない。というか、決闘って形になるとなおさら『フルプレッシャー・カノン』は使えないし」


 充填中に守ってくれる前衛なかまがいるならともかく、一対一の闘いではまず使う好機チャンスは無い。


「それを聞いて安心しました、決闘で使う会場を覆う結界と、測定場の結界はほぼ強度が同じです。もし仮に『あの魔法』を使われた場合、周囲の被害を抑えられる保証がありませんので」

 

 それともう一つ、と学校長が指を立てた。


「今回の決闘には、少々異例ですがアルフィ君に解説についてもらうことになりました」

「アルフィに?」

「既に彼には了承を得ています。本来なら解説が付くとしても学校教師の誰かしらになるのでしょうが……」


 何となく学校長の言葉の続きが予想できた。


「君の魔法は私の目から見ても特異が過ぎています。生徒の大半は実際に目にしたとしても理解が追いつかないでしょう」


 そもそも防御魔法を『攻撃』に使うという発想そのものがないだろうな。だって『防御』って名前が付いてるし。


「ですので、君と交流が深いアルフィ君に、君の使う魔法の解説をしてもらおうと思いまして。如何でしょうか?」


 俺が扱う防御魔法には『アルフィから教わった知識』が活用されている。確かに、アルフィなら俺の魔法を説明する役にうってつけだ。


「了解です。存分に解説させてやってください」

「ありがとう。聞きたかったのは以上の二つです。そちらから何か質問はありますか?」

「あー、相手が貴族っぽいんですが、どのくらいの怪我までならさせていいですかね?」

「そこは安心していいですよ。今回の決闘で使用する会場は特別製ですから」

「特別製?」


 つまり、ほかの会場とは何かが違うというのだろう。


「それが何かは決闘が始まる際に教えてあげましょう。とにかく、君は相手の事を気にせずに全力で戦ってください、それが私の最後のお願いですから」



 

 ──昼休みが終わる頃、リースは午後の授業に間に合うように学校長の部屋を退出した。


 一人になってしばらくして、学校長は机の引き出しから書類を取り出した。今年度新入生の中でも動向に注意が必要と判断された生徒たちの一覧表だった。


 その中には、数時間後に決闘を行う二名の生徒──リース・ローヴィスとラトス・ガノアルクも記載されている。他にも、アルフィ・ライトハートやカディナ・アルファイアの名もあった。


「やれやれ、早速問題が起こったようですね」


 この名簿に記載されるのは、際立った能力の持ち主であったり、素行的に問題を秘めていたりと理由は様々だ。つまり、ここに記載されているラトスにも何かしらの事情があるという意味でもあった。


「ガノアルク家に事情があるのも承知しています。ラトス君が今回リース君に決闘を申し入れたのもそのあたりが原因でしょう」


 学校長は既に、ラトスをジーニアス魔法学校へと送り出すのに当たり、ガノアルク家が秘匿している事実を把握していた。だが、組織の長として、特定の生徒に肩入れをするわけにはいかない。問題を抱えている生徒はラトスだけではないからだ。


「……この決闘がラトス君にどのような影響を与えるのか、私にも分かりません。ですが、叶うならばあの子にとって良いモノであると願うしかありませんね」

 

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