表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
179/227

第百八十四話 早かったようですが


 アルフィは急に棒立ちになると、溜息を漏らしながら頭を掻く。


 今はまだ試合の最中であり、あからさまに隙を晒す行為。本来であれば即座に攻撃を加えるところであったが、彼女(ラピス)を思い留まらせていたのは、胸中に生じた予感。


 まさしく、リースと決闘した時に抱いた恐怖と──高揚が混じり合った感情が込み上げる。


「先に言っておきたい。あいつのセリフじゃないが、別に舐めてたわけじゃない。元々、リースを除いてカディナに並ぶくらいに難しい相手だと思ってた。実際のその通りだったし」

「お褒めに預かり光栄だね」

「だからまぁ……ここから先(・・・・)を試合で使うのは俺も初めてなんだ。アイツと違って出し惜しみしてたとかじゃなくて」


 言い訳にも聞こえるそれは、己に対してではなくラピスに向けたものであった。


「持ってたわけだ、君も奥の手(・・・)を」

「確かに対アイツ(リース)用に作ったんものだが、よくよく考えればあれにぶっつけ本番で試すのは怖すぎる。それに、このまま続けてるとmもし勝てても決勝戦前に体力と気力が尽きそうなんでな」 


 未来の英雄ともされる天才(アルフィ)に、奥の手(それ)を使うに足る相手と認められたのだと。リースに本気を出させずに終わったあの時(ラトス)とはもう違うのであると。不覚にも嬉しく思ってしまった。


 アルフィはゆっくりと両手をかざすと、深く息をする。


「悪いがラピス、俺の本番(・・)に付き合ってもらうぞ──励起召喚(エクステンション)


 カッと目を見開くと、アルフィの胸元から魔光が溢れ出す。それに伴い、彼の周囲にそれぞれ火の玉、緑風、土塊が浮かび上がった。


「…………?」


 見た目上は初級魔法程度のものであるが、一つ一つに込められている魔力が尋常ではない。だというのに、どことなく不安定であり魔力と実体が乱れぼやけている。


 訝しげに眉を顰めるラピスを、アルフィの鋭い眼光が()め付ける。


「こっからは待ったなしだ。一気に行かせてもらう!」


 手を払うと、宙に浮かぶ属性らから魔法が解き放たれる。それそのものはアルフィが試合中に使っていた中級魔法となんら大差ない。ラピスは魔力の流れを感じた時点で水流走アクアドライブを投影し回避する。


 だが、回避した先にはすでに、アルフィが投影した風属性の魔法が迫っていた。


「────ッッ!?」


 寸前のところで身を逸らして躱すが、バランスを崩して転倒。そこへ追い打ちをかける土属性魔法が襲いかかる。


 ラピスは付近にあった複数の水溜まりから水鞭アクア・ウィップを投影すると己の体を掴ませ、強引に引っ張りその場から退避し魔法から逃れた。


「器用な真似をするなおい!?」


 割と本気で驚き汗を流すアルフィ。


 ラピスはこの瞬間を好機と定めた。自身(ラピス)の予想外の動きに、注意が正面(こちら)に集中している。


 地面に叩きつけられる痛みに顔を引き攣らせながらも、ラピスは仕込んでいた水溜まりをつなげて大きな魔法陣を投影する。


水連射アクアガトリング重機関砲(ブラスト)!」

「んなっ!?」


 ラピスの奥の手。遠隔投影による高威力魔法。得意魔法の一つである水連射アクアガトリングを更に発展させ、連射速度をそのままに一発一発の威力を向上させた魔法だ。投影に時間は掛かるが、一度発動してまえば大量の弾幕を張ることができる。


 さらに、時間差で同じ魔法をもう一つ投影。これまでの低威力の魔法ではなく、直撃すれば戦闘不能になるほどの魔法が、続け様に別方向から襲いかかってくる。


 どれほどアルフィが手数を増やそうとも、一度に対応しきれない数で攻めれば後手に回らざるを得ない。アルフィが防御に回った瞬間、決闘場アリーナに散らばった魔力残滓(みずたまり)を総動員して、一気にケリをつける。


 ──けれども、アルフィの背後で投影された魔法陣は、圧倒的な数を誇る水の弾丸を解き放つ前に、土魔法に撃ち抜かれて霧散した。


「──────?」


 続けて別の位置で投影された魔法陣も同じく、発動するまもなく破壊される。


「嘘だろ──っ!?」


 上級魔法の投影最中にあったラピスは、驚愕するしかなかった。


 あまりにも、アルフィの反応が早すぎる(・・・・)


 ラピスも、何も考えずに札を切ったのではない。体感ではあるものの、彼女のなりにアルフィの戦いぶりを観察していた。どの好機(タイミング)であれば隙を付けるかを狙っていた。


 現に、アルフィは背後でラピスの魔法に気がつき慌てたそぶりを見せていた。あの瞬間であれば、少なくとも魔法の発動までは行けたはずなのだ。

「今のは本気で危なかったぞ、ラピス!」

「しまっ!?」


 動揺も重なって投影の中断が間に合わず、ラピスはアルフィの放った炎槍(フレイムランス)をモロに受けてしまう。体を貫通するような激しい衝撃が襲い掛かり吹き飛ばされた。



アルフィの新技は名前変更するかもしれん

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜』
アマゾンでも販売中。単行本版と電子書籍版の双方があります
大賢者pop
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 自動迎撃、まではいってないかな? それに近いものを感じるけど
[気になる点] 今回の話ではないですが、リースって通常時でカノンの連射とか出来ない感じ何ですかね? 威力は中級レベル
[一言] 不安定なまま滞留させることで、 魔力の消費が多い代わりに即座に発動させられるとかかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ